ブラックコーヒーを擬声化したような唯一無二の声~オリジナル・ラブ『RAINBOW RACE』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第132回:ブラックコーヒーを擬声化したような唯一無二の声
今週も昨年の100回記念セコセコショッピング企画(https://33man.jp/article/column38/009021.html)にて購入したなかからご紹介(つくづくいい企画だったぜ)。
オリジナル・ラブ『RAINBOW RACE』(1995年)
J-POP界において独特の地位と存在感を確立しているイメージのあるオリジナル・ラブ。正直自ら興味をもとうと思わなければ彼らの音楽に出会う機会はなかなかないかもしれない。
僕が興味をもったのはもう20年以上前だったか、某おっかねえドラマの主題歌で彼ら(といっても現在は田島貴男氏のみだが)の楽曲『STARS』が起用されており、その極上のメロディに感動したのが始まり(まあ実際CDを購入したのはそれからけっこう時が経ってからではあったが)。ただ『STARS』は多分彼らの楽曲のなかではそれほど有名ではなく、おそらく一般的に最も知られているところだと『接吻』になるだろう。
実際、世代的には僕はドンピシャではあるものの、同年代くらいの人にオリジナル・ラブという言葉を出してもあまり通じず、「な~が~くぅ~、あ~ま~いぃ~、く~ち~づぅ~け~をか~わすぅ」(モノマネ込み)という『接吻』のフレーズを歌ってみせて初めて「ああその人か」と伝わることがほとんどである。まあ僕は彼らの音楽を全然深く知っているわけではないが、僕の知る範囲だと若者に対してストレートに響くというよりは、むしろ大人の心に深く沁みわたるタイプの音楽のように思えるので、そもそも爆売れするような方向ではないのかなとも思う。ただ彼らは作品ごとに大きく音楽性を変化させるスタイルのようなので一概に浅い知識で判断はできないところだが。
『RAINBOW RACE』は彼らの5枚目のアルバム。僕が彼らに抱いているAOR的な音楽イメージそのままの、落ち着いた大人の気品を感じさせるアルバムである。おコーヒーなどをいただきながら聴くとより味わい深く聴き込めそうだ。個人的には都会の夜の美しさを絵画のように鮮明に想像させてくれる『流星都市』が特に絶品だと思う。
それにしても田島氏の声は本当に唯一無二で、やや黒っぽさも感じさせる男の色気漂うその声は、まさにブラックコーヒーを擬人化ならぬ擬声化したような雰囲気で、もし自分が歌い手だったらこんな声を持ちたいと思わされる何とも言えない魅力がある。
ジャケットはイギリスの写真家、ノーマン・パーキンソンの作品『Bird Island』。このアルバムのために撮ったのではなく既存の作品を拝借したもの。どこか原始的な雰囲気と同時に強い生命力のようなものも感じさせる美しい写真である。ただこれだけたくさん鳥がいたら僕なら逃げるけどね。うんこ浴びちゃう的な意味で。
おそらく彼らはこれからも日本音楽界のなかで変わらぬ独自の立ち位置のなかでいろいろ変わっていくのだろう。今後、いつかどこかのタイミングでさらなる大ブレイク………するにはあまりにもオリジナルすぎるかも?