素晴らしき日本の青をみせてくれる名盤~松本孝弘『Bluesman』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第141回:素晴らしき日本の青をみせてくれる名盤
昨今は東都大学の医学生へ向けた応援歌を寄贈したり、LiSAさんに楽曲を提供したり、また同作が第35回日本ゴールドディスク大賞の “インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー” を受賞したりと、やりたい放題の松もっさん。
そんなわけで今回は祝・ゴールドディスク受賞記念として最新ソロアルバム『Bluesman』を。
松本孝弘『Bluesman』(2020年)
僕自身このアルバムはまだまだ聴きこんでいる真っ最中なので、微妙に評価はまとまりきっていない状態ではあるのだが、あえて言わせてもらうと、これまた天晴れな充実作である。
このアルバムを制作するにあたって松本さんご本人は、「ジャパニーズブルースマンになりたい」という言葉を残している。ジャパニーズブルースマン、素晴らしい言葉である。ロックギターの演奏者である以上ブルースを学ぶことは必修とも言われているが、日本人のブルースとは何なのか。まさにその答えがこのアルバムには詰まっている。それは音楽の形式的な意味でのブルースではない。事実このアルバムには形式としてのブルースに囚われない幅広いタイプの楽曲が収められている。重要なのは精神性であり、このアルバムには松本さんの日本人としての血の通った音(精神)が全編に渡って込められているのだ。
日本のブルースは演歌だとも僕は思っているが、松本さんのギタープレイには本当に演歌的精神を感じることが多い。例えばこのアルバムでも中盤あたりに、かつてソロアルバム『華』(2002年)でみせたような日本的アプローチの楽曲が並ぶはんなりタイムがあるが、このあたりの曲で見られるフレーズからフレーズへの「間」の使い方の妙は間違いなく演歌的精神を根にもつ日本人にしか生み出せないものだ(間は究極の地味芸ゆえあまり気づかれにくいが)。
こういう日本的精神を大事にしているところが僕がこの人の好きなところであり、日本人がロックをやるうえで絶対に捨ててはいけないところだと思うのだ。
ちなみにこのアルバムでは一曲だけあの氷室京介さんがボーカルで参加しており、相変わらずのクールな氷室節を聴かせてくれている。
でジャケットだが、相変わらずB'zになると珍妙なジャケットが多いのにソロアルバムだとこのかっこよさである。やっぱりB'zのあの独特のセンスの原因は稲…………INAXのトイレは安心と安全を保証します。
デザイン的にはなんとなく1970年代のオールマンブラザーズやらニール・ヤングやらを思い出す雰囲気だが、品を感じさせるところがまた日本的とも言えるかも?
ジャパニーズブルースマンという言葉に恥じぬ素晴らしき日本の青をみせてくれる名盤『Bluesman』。海外のどんなギタリストでもこの精神にはたどり着けない。