男なら一度はやってみたい憧れのシチュエーションである~デラニー&ボニー&フレンズ『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第139回:男なら一度はやってみたい憧れのシチュエーションである
去年の8月に行われた連載100回記念セコセコショッピング企画(https://33man.jp/article/column38/009021.html)。合計17枚のさまざまなジャンルのCDを購入し、この半年少々の間に順次紹介してきたわけだが、いよいよ今回が最後の一枚である。なんだか少し寂しい気もするし、読者のみなさまもきっと今泣いていることだろう。どうか涙を拭いて、有終の美を飾るセコセコショッピングシリーズ最後の回を読んでいただければと思う。
というわけでご紹介するのはこの連載でも一度紹介しているアメリカのサザンロックデュオ、デラニー&ボニーご夫婦のライブ盤だ。
デラニー&ボニー&フレンズ『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』(1970年)
ロック、ブルース、ソウル、挙句の果てにはゴスペルの要素までも取り入れた唯一無二のスタイルで、魂のこもったふたりの歌唱は絶品このうえない。活動期間は短かったがジョージ・ハリスン、デュアン・オールマン、エリック・クラプトンといった大物とも関りが深いロックの歴史上非常に重要な存在で、素晴らしい作品をいくつも残している。
『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』は1969年のライブ音源を収めたアルバム。タイトルのとおりエリック・クラプトンがツアーに参加している。といってもクラプトンがそこまでガンガン前に出てくるわけではなく、基本的にはひとつの大所帯バンドといった感じで、全体のアンサンブルが心地良いライブ盤である。ただロバート・ジョンソンへのリスペクトを込めた『プアー・イライジャ〜トリビュート・トゥ・ジョンソン(メドレー)』におけるクラプトンのゴキゲンなソロは聴きごたえ充分だ。夫婦の歌唱も相変わらず力強く、ボニー・ブラムレットはこの時代の女性ボーカリストとしてはジャニス・ジョプリンにも対抗しうる実力者だと思う。
ジャケットは一見ライブ盤らしからぬ雰囲気だが、男なら一度はやってみたい憧れのシチュエーション「アメリカの荒野で車の窓から足投げ出してひと休み」をやっているので、一枚の写真として最高に格好いい。またどこかユーモラスにも見える感じがいかにもサザンロックのレイジーな雰囲気を醸し出している。
ちなみにクラプトンはこのあと、ライブに参加していたミュージシャンたちとデレク・アンド・ザ・ドミノスを結成し、あの名曲『いとしのレイラ』を生み出すことになるので、そういう意味でもいかにデラニー&ボニーがロック史において重要な存在かわかっていただけると思う。
というわけでセコセコショッピングシリーズ最後の一枚はデラニー&ボニーのゴキゲンなライブ盤で締めさせていただいたが、個人的にシリーズ17枚の中で内容的に最もよかったのは初期の頃に紹介したチェット・アトキンスの『Almost Alone』(あの記事のなかでの予言どおり)、ジャケットのみなら久保田早紀さんの『サウダーデ』だろうか。
これからも素敵な名盤、素敵なジャケットを紹介していこうと思うので、引き続き『音楽“ジャケット”美術館』、お付き合いいただければ幸いである。そして第2回セコセコショッピングもまたいずれ。
セコセコよ永遠なれ。