ジャケットに関しては薄っぺれえのである~ゴットハード『ヒューマン・ズー』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2021/4/28 17:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


番外編〜残念なジャケット〜(第142回):ジャケットに関しては薄っぺれえのである


毎月恒例のこの番外編回。ここで取り上げるアーティストもだいぶ偏ってきてしまった。だってイングヴェイもパープルもストーンズもその辺のセンスが安定していらっしゃるのだもの。

僕のモストフェイバリットバンド、ゴットハードも。

とはいえゴットハードに関しては亡くなった初代ボーカリスト、スティーヴ・リー時代に限る。彼の時代のジャケットセンスたるやなかなかのもので、そのあたりにスティーヴのセンスが反映されていたのかどうかは定かではないが、この番外編の餌食となるに足る変なジャケットが多いのは事実である。

そんなわけで今週はゴットハードの7枚目のアルバム『ヒューマン・ズー』を。

ゴットハード『ヒューマン・ズー』(2003年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

スティーヴ時代中期に当たるこのアルバムは、初期のゴリゴリハードロック路線からアコースティックライブアルバム『D frosted』(1997年)を経由したがゆえの、剛柔両面を兼ね備えたバランスのいい作品となっている。しかもこの時代は特に一度聴いただけで好きになれるタイプの楽曲が多く、かくいう僕も彼らのことを知らない時代にCDショップでただなんとなく視聴してみたらズッキュン首ったけ参っちまったという、記念すべきゴットハードとの出会いのアルバムなので、興味がある方はとりあえずこのアルバム、この時期から入ってみても全然いいと思う。

しかし毎度毎度言っていることだが、これほどキャッチーでクオリティの高い楽曲にこれほど圧倒的な実力を持つボーカルがいて、なぜ日本は、世界はゴットハードに気づかなかったのだろうか。ライブのレベルの高さもそうだが、質のみを見れば世界的に売れる要素しかないバンドなのである(現在の音楽性はだいぶ渋めだが)。やっぱり1990年代という時代、スイスのバンドという偏見なんでしょうかリットー大王様。

まあいい(©R藤本)。そんな最高のハードロックアルバム『ヒューマン・ズー』なわけだが、ジャケットに関しては薄っぺれえのである。いや、厳密にいえばそこに込められたメッセージ性を考えれば全然薄っぺらくはねえのだが。

そのメッセージとは、アルバム『ホームラン』(2001年)収録のバラード『Heaven』のPV撮影で訪れたタイのバンコクで、貧民の住む地域を舟で抜けたときに彼らが見た光景に由来する。その地域の人たちの貧しい暮らしを目の当たりにして色々思うところがあったというゴットハードのメンバーだが、逆に地元民もゴットハードに対してまるで別の惑星から来た生き物を見るかのような目線で見ていたという。その経験から貧富の差、人種の違いなどについて考えるようになり、やがて世界全体がまるで動物園のように思えてしまい、『ヒューマン・ズー』というタイトル、そしてこのジャケットデザインに結びついたというわけである。

そんな深い意味が込められたジャケットなのだが、やはりどうにも僕はこのチープなCGデザインが気に入らない。以前同時期のライブアルバムのジャケットに関しても同じことを書いた気がするが、手描きであれば意図していたメッセージももっと温度をともなって届いたのではないかと思う。まったく、いつの時代もこんぴゅーたーってやつは使い方が難しいものだ。

まあいい(©R藤本)。とにかくジャケットはこんなんだが、音楽の質はまったく非の打ちどころがない名盤である。絶対に日本人も好きなタイプの音楽なので、ちょいと試食からでもいいので彼らの音楽に触れてみてほしい。

僕にとっては彼らこそ『トップ・オブ・ザ・ワールド』。貴様らがナンバーワンだ(©R藤本)。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。