ある意味で問題となった有名ジャケット~レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリン Ⅳ』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第143回:ある意味で問題となった有名ジャケット
今週はロックの定番中の定番、レッド・ツェッペリンの定番中の定番『天国への階段』を収録した定番中の定番『レッド・ツェッペリン Ⅳ』を。
レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリン Ⅳ』(1971年)
定番中の定番、ということで僕もクラシックロックに興味をもち始めてからかなり初期の頃に聴かせていただいたアルバムなのだが、実のところそこまでどっぷり入り込めないアルバムであった。なんだか全体的にもったりしてるし、暗いし、変な音楽だと思った。正直聴いている最中は「早く終わらんかな~」とすら思ったほどである。まあ今になって振り返るとそれがまさにツェッペリンの持ち味なのだが。
でそれ以降時たま棚から引っ張り出してはBGM的に部屋でかけたりはしているが、当時より印象はよくなったものの、改めてがっつり腰を据えて聴きこもうとまでは思えていない状態である。このツェッペリンならではの濃厚なもったり感(画家でいうとゴッホを彷彿とさせる)は、現代の人(特にメロディを好む日本人)の感覚からするといきなり馴染むのは難しいタイプなのではないかと思う。しかしこのアルバムは彼らのアルバムのなかでも最高の売上(全世界で3,700万枚を超える)を記録し、まさにロックの定番中の定番といわれるほどのモンスターアルバムなのである。
作風は前作『レッド・ツェッペリン Ⅲ』(これは大好き!)のアコースティック路線を経由したからこその、アコースティックサウンドとエレクトリックサウンドの両立を目指した作風となっている。なかでも『天国への階段』は彼らの魅力のすべてが凝縮された名曲として、今やロックというカテゴリーのなかにおいても最高傑作のひとつとして数えられている定番中の定番曲である。ちなみに『限りなき戦い』ではこの連載でも過去に紹介している女性ボーカリスト、サンディ・デニーが参加している。
ジャケットがこれまたある意味で問題となったデザインで、ミレー風の素朴な農村風景と老人が描かれているが、肝心のバンド名もタイトルも一切表記されていない。これに関してはレコード会社とさんざんモメたらしいが、ジミー・ペイジによると「所詮バンド名なんて何の意味がある? レッド・ツェッペリンって何? 大事なのは僕等の音楽なんだ」ということらしい。「レッド・ツェッペリンって何?」って本人が言うとなんかおもしろいからやめていただきたい。
まあしかし実際それで売れたわけだし、だからこそ現代においても語り継がれるエピソードのひとつとなってはいるわけだから、この作戦は成功だったのだろう。タイトル云々以前に単純にデザインとしても彼らの音楽性にも合っているしいいジャケットだとは思うが。
とりあえず僕が言えることはクラシックロック入門者はまず抑えとかなきゃと早い段階で手を出すのはお勧めしない。「定番中の定番」などと連呼するような怪しいレビューに惑わされることのないよう。