頂点を極めた男だからこその余裕~Char『天邪鬼 Amano-Jack』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第145回:頂点を極めた男だからこその余裕
今回ご紹介するのはこちら。
Char『天邪鬼 Amano-Jack』(2005年)
ギターを聴くのが好きでこの国に生きてりゃとりあえず避けては通れないお人。個人的なイメージだが無駄にトガっているわけでもなければやたら硬派でもなければ別に軽いわけでもなければ嫌に気取っているわけでもない。何かちょうどよく自然体で好きなことを常にやっている人といった感じ。それでいて腕前は超一流と来るもんだからかっこよすぎる。
古い作品などはまだ漁れていないのだが、このアルバムはそんなCharさんのイメージがそのまま反映されたような、ファンク、フュージョンの要素も取り入れた上で程よく力の抜けた聴きやすいロックアルバムとなっている。と同時に長く聴きこめる味わい深いアルバムでもあり、別にコンセプトアルバムというわけではないと思うが、おそらくCharさんの幼少期の経験をモチーフにした楽曲が多く、どこか懐かしい景色が思い浮かぶような温もりを感じる作風となっている。童謡の『赤とんぼ』なんかもギターでカバーしており、これがまた本当に癒される。
ギターヒーローのイメージが強いが、このアルバムではギター、ボーカル以外にもドラムやベース、ピアノに至るまでCharさん本人が演奏しており、その腕前がまたお見事で、ギターが前面に出ているというよりはバンド全体のアンサンブルによるグルーヴ感を楽しむタイプのアルバムである。やはりバンドというものは気の合う仲間(自分)とやってこそいい音が出せるということだ。レコーディングもきっとメンバー(自分)と喧嘩などもせず順調に進んだことだろう。というかこの人逆に何ができないのだろうか。
ジャケットはCharさんご本人の幼少期の頃の写真。天邪鬼というタイトルのとおり、生意気そうなガキである。絶対通りすがりの知らないおっさんにいきなりカンチョーとかしていたはずだ。しかしまさにアルバムの中身がこんな感じなので、ご本人的にも本作は思い出のアルバムという扱いなのだろう。アール・ヌーヴォー風の名前のロゴと古い写真のミスマッチがまたよしである。
ちなみにブックレット裏表紙にはお母さまと思われる方とのツーショット写真も載っており、これまたほっこりさせられる。
頂点を極めた男だからこそ過去を振り返る余裕があるというか、それを許される領域にいるということだ。しかしただの企画的な思い出アルバムではなく、いち作品として全く捨て曲なしの名盤でもある。
昔Charさんにカンチョーされたおっさんはそれを自慢するべきだ。