バンド名とこのジャケットはストレートにかっこいい〜グレイトフル・デッド『アオクソモクソア』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第147回:バンド名とこのジャケットはストレートにかっこいい
今回ご紹介するのはこちら。
グレイトフル・デッド『アオクソモクソア』(1969年)
1960年代末期。世はまさに大サイケデリック時代。多くのバンドがLSDによりトリップした世界をロックで表現するため実験的で前衛的な音を探し求めた。美術界では半世紀ほど前から存在していた「シュールレアリスム」(よく言う「シュール」)という概念にロック界が追いついたとも言えるかもしれない。多分このへんも結局ビートルズのせい。
グレイトフル・デッドの『アオクソモクソア』はそんなサイケデリック時代を代表する名盤として語り継がれているアルバムで、一貫して超現実的な浮遊感のあるサウンドを展開している。これははっきり言ってとっつきにくい。おそらく全体を通してゆったりと意識を浸からせることでこの浮遊感と一体化し心地良くなれるアルバムなのだろうが、何しろフックがなく集中力が途切れやすい。僕みたいなすぐ我に返ってしまうタイプには難しいアルバムと言える(そもそもサイケデリックロック自体がそれほど好みではなかったり)。LSDなんかよりバファリン(プレミアム)のほうがすっきりするし。
まあ彼らの音楽性自体はサイケデリックに偏っているわけではなく、フォークやブルースなどの要素も取り入れつつ時代とともに変化しているようだが。ちなみに日本ではクラシックロック好きでもなければ知らないかもしれないバンドだが、アメリカではいまだに知らない人はいないレベルの知名度らしい。
しかしグレイトフル・デッドというバンド名とこのジャケットはストレートにかっこいい。ジャケットデザインはリック・グリフィンという画家によるもので、当時のロックアーティストのジャケットをよく担当していた。ほぼすべてが左右対称に描かれたデザインで、タイトルの『アオクソモクソア』(AOXOMOXOA)という言葉も左右対称になるように考えられた意味のない回文らしい。一部古代エジプト美術の影響もみられるユニークな絵である。
名盤と言われている事実は間違いないので、わかる人にはわかるアルバムだと思う。個人的にはちょっと難しかったので、せめて優しさを半分入れてほしかった。