珍妙な彼らのジャケットのなかでもなかなかにぶっ飛んでいる〜ディープ・パープル『ファイアボール』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編〜残念なジャケット〜(第151回):珍妙な彼らのジャケットのなかでもなかなかにぶっ飛んでいる
今月もやってきました最終水曜日。ということでジャケット警察出動します。検挙はするけど自粛はしなくていいからねアーティストのみなさん。それでは今回は過去に何度か取り上げた元祖ハードロック二大巨頭の一角、ディープ・パープルの『ファイアボール』を。
ディープ・パープル『ファイアボール』(1971年)
一般的に彼らの黄金期とされる時期に発売されたアルバムだが、ハードロックの歴史に大きなインパクトを残した前後のアルバム『イン・ロック』と『マシン・ヘッド』の影に隠れてどうにも印象が薄くなってしまっているアルバムのようだ。しかし個人的にはなぜこのアルバムが『イン・ロック』『マシン・ヘッド』と同レベルで語られていないのかが不思議なくらいに素晴らしい完成度のアルバムだと思う。
楽曲のタイプがバラエティに富んでおり、それを散漫と取る人もいるのかもしれないが、どの曲も非常に質は高く、メンバーそれぞれの個性がぶつかりあって生まれるパープルならではの緊張感のあるグルーヴが存分に発揮されているアルバムだ。なかでもイアン・ギランの張りのあるボーカルとイアン・ペイスの芯をついたドラムが全体を通して良い。
ただパープルのメンバー的にもこのアルバムに対する評価はいまいちのようだ。まあ作り手側と受け取り手の評価が異なるのは死ぬほどよくあること。その辺の事前情報からくるハードルもあるとは思うが。
それにしてもこのジャケット、毎度珍妙なデザインをみせてくれるパープルのジャケットのなかでもなかなかにぶっ飛んでいると思う。文字どおり。ファイアボールだから火の玉になって宇宙のどこかへ飛んでいってるわけだが、ファイアボールだから火の玉になって宇宙のどこかへ飛んでいくなよ。毎回レコーディングが終わったらこうやって帰っていたとかなら仕方ないが、いかに天才音楽家とはいえ帰りはおそらく徒歩とか公共交通機関を使っていたはずだ。それに一緒に帰るほど仲も良くないだろ。
しかしこのジャケット、当時『ベスト・デザイン・ナンバー・ワン・アルバム賞』なる賞を受賞しているようなのだ。いったいどうした1970年代。皆が皆様子がおかしかった1980年代ならいざ知らず、1970年代はもっと大丈夫だったはずだろう。気をしっかり持て1970年代。
というわけでディープ・パープルの『ファイアボール』の罪は交通違反、火の玉無免許運転、スピート違反(たぶん)で検挙します。
アルバムとしては最高なのでぜひ聴いてみてね。