8センチシングルの形をうまく生かしたジャケットのひとつだ〜L⇔R『BYE』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2021/9/22 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第163回:8センチシングルの形をうまく生かしたジャケットのひとつだ


今回ご紹介するのはこちら。

L⇔R『BYE』(1995年)

<あの海外セレブの背後に偶然ロバートが写り込む奇跡>

L⇔Rは以前にも一度この連載で取り上げているが、なにげに僕の闇にまみれた青春時代に通ってきたバンドのなかでもかなり上位に好きなバンドである。

そして今回取り上げるシングル曲『BYE』だが、僕自身音楽に興味を持ち始めてかなり初期の頃(おそらく人生で5、6枚目くらい)に買ったCDで、当時、相当お気に入りで聴き込んでいた記憶がある。

そもそもL⇔Rといえば、『BYE』と同年の『KNOCKIN' ON YOUR DOOR』がメガヒットしブレイクしたわけだが、『KNOCKIN' ON~』があれだけヒット(オリコン1位。ミリオンヒット)したにも関わらず、それに続くシングルである『BYE』は意外にもオリコン6位止まり。『KNOCKIN' ON~』のヒットは確かにドラマ効果もあっただろうが、それをきっかけにポップさもありながら1960年代風のクラシカルでクールなセンスをも持ち合わせたL⇔Rの音楽性がもっと注目されてもよかったはずである。

彼らの音楽は決して一発屋的な表面上のインパクトのみで終わるものではない。しっかり入り込み、聴き込める音楽である。ましてや『BYE』は彼らも意識してか『KNOCKIN' ON~』と同タイプの楽曲で、短いイントロからいきなりサビで始まる構成まで同じ作りにしている。音楽界のシステム的には『KNOCKIN' ON~』の余韻でこちらもヒットするパターンのはずなのに、この失速ぶりはもはや怪奇である。怪奇といえば『BYE』のすぐあとに出たシングル『DAY BY DAY』が、当時よく観ていたテレビ番組『木曜の怪談』のエンディングテーマで、こちらもまた大好きな曲だったのを覚えている。しかし『DAY BY DAY』も結局オリコン15位止まり。個人的にはどちらも明らかに『KNOCKIN' ON~』と同等かそれ以上の名曲だと思うのだが……。いまだにそのあたりに関しては怪奇である。銀狼怪奇ファイルである。

そんな光一くんも首をかしげる謎曲『BYE』なわけだが、上で書いたとおり『KNOCKIN' ON~』と同タイプの曲ではあるものの決して二番煎じ的なレベルに留まってはいない。成績はともかく間違いなくクオリティはミリオン級の名曲である。それとカップリングの『CHINESE SURFIN'』のガチャガチャ感はいかにも1960年代風の雰囲気が漂っているが、メロディラインはどこか昭和の日本的な感じもあって面白い曲だ。

そして今や懐かしき8センチシングルである。1980年代後半から2000年代頭あたりまでのたった十数年の間だけ存在していたものだが、その持ちやすさ、形としてのバランスの良さ、そして部屋に置いていてもかさばらない便利さが魅力であった。『BYE』は8センチシングル特有の長方形をうまく生かしたジャケットのひとつだと思う。どことなくモンドリアンの絵画を彷彿とさせるが、バンドロゴとタイトル、そしてメンバーの写真の配置バランスがシンプルな色合いのなか気持ちよく収まっている。以前も書いたがこのあたりのセンスもやはり良いバンドなのである。

月並みな表現だが、20年以上前でもまったく古臭さは感じない。むしろ今の感覚でも彼らのセンスはシャレオツだしナウいと思う。当時この名曲を通り過ぎてしまった人も、彼らを知らぬ若い世代の人にもぜひ聴いてほしい。

「L⇔Rを聴いている」ってファッション的にもかっこいいと思うよ?

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。