無理やり解釈するとしたら……〜ルネッサンス『四季』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第164回)〜残念なジャケット〜:無理やり解釈するとしたら……
季節もそろそろ秋に突入しようとしている。こんな季節の変わり目にゃだせえジャケットがよく似合う。そしてこんな季節の変わり目によく似合うだせえジャケットのアルバムといえばルネッサンスの『四季』だろう。
ルネッサンス『四季』(1978年)
この連載でも何度か登場しているイギリスのシンフォニックファンタジックメルヘンチッククラシカルプログレッシブフォークロックバンドだが、1970年代のバンドとしては個人的にも何本かの指に入るほど好きなバンドでもある。やはりイギリスの深淵な森の奥深くに連れて行ってくれる彼らの音世界は何者にも代えがたい魅力があるし、前にも書いた気がするがボーカル、アニー・ハズラムの歌声はまさに妖精の歌声。同じイギリスの妖精さんであるケイト・ブッシュとはまたタイプは違うが、僕はアニーこそ1970年代最高の女性ボーカリストだと思っている(数年前に来日公演で観たときも変わらぬ妖精の歌声を聴かせてくれた)。
『四季』はルネッサンスの8枚目のスタジオアルバム。前作までのプログレバンド然とした大作志向から一転、わりとコンパクトにまとまった曲が多く幾分聴きやすくなった印象を受ける。まあ実際1978年といえばパンクブーム全盛の時代。そんな時代に複雑で高度なテクニックを擁するプログレを求める層はだんだん減っていくわけで、その対策というのもあったかもしれない。アメリカ市場を意識してあえてポップな作風にしたとも言われているが、だからと言って彼らの個性が希薄になったわけではなく、相変わらずのファンタジーな世界観でイマジネーションをビシビシ刺激してくれる。はっきり言って全曲名曲だが、優しい陽の光を浴びているようなフォークロック調の『北の輝き』、そして圧巻の展開を見せる10分越えの大作『ソング・フォー・オール・シーズンズ』あたりは彼らの代表曲に数えられるべき曲だろう。
肝心のジャケットだが、手がけたのは当時のロックアーティスト御用達の売れっ子アートグループ、ヒプノシス。超有名どころのアーティストのジャケットを多数手がけ、この連載でも過去にいくつかヒプノシスデザインのジャケットを紹介させていただいている。どこか生気を感じさせないアニーをど真ん中に据え、のどかな自然の風景とモノクロの世界とを分ける謎の境界線、そして画面全体にちりばめられたカラフルな線。
全然意味がわからねえ。
無理やり解釈するとしたら『四季』というだけあって明るい背景は夏、上部の哀愁を感じるモノクロの風景は秋、生命力を感じず服装も厚着なアニーは冬、カラフルな線は春の陽を表現しているのだろうか。
まあ、だからとてだ。だからとてこれはいまいちだ。ポップな作風になったからジャケットデザインもそれに合わせてモダンな雰囲気にしたのだろうか。しかし僕の印象では音楽的にもここまでモダンにはなっていない。どうにもジャケットデザインだけ先を行き過ぎてしまっているように思えるのだ。やはり以前に紹介した『お伽噺』のようなジャケットこそルネッサンスの音楽性にぴったりマッチしていると思う。
まあヒプノシスの皆さんも忙しいなかアルバムの世界観とどう調和させるか(あるいはあえて乱すか)を考えるのは大変だっただろうが。
とりあえず何が言いたいかというと、ストップ・温暖化。