彼らのアルバムのなかでは手に取りやすいジャケットだ〜ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン『スクリーム・エイム・ファイア』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第166回:彼らのアルバムのなかでは手に取りやすいジャケットだ
今回ご紹介するのはこちら。
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン『スクリーム・エイム・ファイア』(2008年)
2000年代以降の新世代メタルバンドの筆頭的存在のひとつ。僕も37歳にしてもはや最近の若手有望株をチェックしきれなくなってきているのだが、数年前サマソニ (『耳マン』でもレポートを書かせていただいた)で彼らを観るため予習として購入した『グラヴィティ』が非常に素晴らしい内容だったので(ファンの間では賛否両論だったようだが)好きになったバンドである。とは言ってもまだ持ってるのは『グラヴィティ』と本作のみだけど。
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン(BFMV)はウェールズ出身のヘヴィメタルバンドで、スラッシーなギターリフにデスボイスとクリーンボイスを使い分けるボーカルスタイルが特徴の、いわゆる“メタルコア”と呼ばれるジャンルのバンドである。ジャンルそのものもそうだが、ボーカルがギターも兼任している編成のバンドというのもメタル界においては近代的なスタイルだ。
『スクリーム・エイム・ファイア』はBFMVのセカンドアルバムで、既に大ヒットを記録していたデビューアルバム『ザ・ポイズン』を上回るヒット作となった。ボーカル、マット・タックのクリーンボイスはいわゆるメタルボーカリストらしいチンパンジー御用達のハイトーンシャウト系ではなく、この頃はややパンキッシュで青臭い雰囲気が漂っている。若さゆえもあるだろうが、この時期彼は喉に大きな問題を抱えていて、声の出し方においてもいろいろと考えなければならなかったようだ。とはいえ美しいメロディやドラマチックな展開はフックが効いており、意外に音も正統派ヘヴィメタルのそれに近いものがあるので、古き良き時代のメタルを愛するリスナーにもアピールしうる魅力があると思う。
ジャケットはカラスまみれの廃墟のようなゴシック風の建物を中央に据えた、かなりダークな雰囲気のデザインとなっている。どことなく終末感漂う世界観も感じさせるBFMVの音楽性にはよく合っているし、これでも彼らのアルバムの中では手に取りやすい方のジャケットでもあると思う。
彼らはまだまだ第一線で活躍しているバンドなので、今後の進化が楽しみなところだ。ところでマイ・ブラッディ・ヴァレンタインという別バンドもいるのでごっちゃにならないようご注意。酒井美紀か坂井真紀か水野美紀か水野真紀かみたいなあれ。