四角に収まりすぎだ〜イングヴェイ・マルムスティーン『セヴンス・サイン』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第185回)〜残念なジャケット〜:四角に収まりすぎだ
最終水曜日。ということで残念警察、出動します。今月残念スピード違反を起こした犯人は……また君か、イングヴェイ。まったく何度目だ。
イングヴェイ・マルムスティーン『セヴンス・サイン』(1994年)
というわけでご紹介するのは王者イングヴェイ・マルムスティーンの7作目のスタジオアルバム『セヴンス・サイン』。超絶的な速弾きとクラシック音楽の影響を受けたプレイスタイルで、今や様式美メタルの定番となったネオクラシカルメタルと呼ばれるジャンルを生み出した革命児であり、友達にしたくないミュージシャンNo.1でもあるイングヴェイ。世界は完全に自分を中心に回っていると思い込み、バンドメンバーを空き缶のように使い捨ててきたイングヴェイが、前作『ファイアー・アンド・アイス』でのメンバーをキーボードのマッツ・オラウソン以外全員ビン・カン用ゴミ箱に捨て、今回新たに目をつけたのがドラムのマイク・テラーナとボーカルのマイク・ヴェセーラである。ベースはイングヴェイ自身が担当。
イングヴェイははっきり言ってミュージシャンを見る目があると思う。それは歴代のメンバーを見てもわかるとおりだが、本作においてもバンドメンバーは皆実にいい仕事をしている。特にマイク・ヴェセーラのボーカルは声質的に好みは分かれそうだが、気に入ればこのうえなく癖になるタイプで、伸びやかで張りがあり、力強い。イングヴェイの個性とも十分に張り合えてると思う。もちろん数えきれないほどの追従者がいながら結局誰にも似ていないイングヴェイのギタープレイも健在だ。どこを切り取ってもイングヴェイらしいネオクラシカルメタルアルバムでありながら適度にポップさもあり、本作をイングヴェイの最高傑作と見る人が多いのも頷ける名盤である。バラード『BROTHERS』なんかはギターインスト曲の歴史に残るべき名曲だと思う。
しかし相変わらずジャケットのひどさに関しては服役もんである。もともと尋常ならざるナルシストで自分の顔にも自信があるようだが、近づきすぎだ。本人は鼻まわりの三角に対して文句を言っているようだが、問題はそこじゃない。全体の四角に収まりすぎなのが問題だ。どうにも毎回イングヴェイのアルバムというのは非公式で発売された企画ものみたいなジャケットばかりでありがたい。これからも最終水曜日にお世話になります。
ちなみに本作で素晴らしき仕事っぷりを見せた実力者マイク・ヴェセーラは次作『マグナム・オーパス』にも参加するが、その後イングヴェイ曰く「俺の妻と寝た」とかで例のごとく空き缶のように捨てられる。
これぞ様式美。