竹下幸之介(DDTプロレスリング)の『ニシナリライオット』第30回:「初めて女子とデートした日」

連載・コラム

[2020/4/24 12:00]

DDTプロレスリングの未来を担う若き逸材・竹下幸之介。そんな彼が自身の昔のブログを読み返しながらつづる、地元・西成のお話!


1ヵ月ぶりの更新になる。諸事情で前回分が更新できなかったが、そちらの記事はまたそのうち掲載されると思うので、楽しみにしていてください。(渾身の記事でした)

この1ヵ月で、世界は大きく変わった。誰もコロナのニュースが出始めた頃には、ここまで大きく長い影響が起こることは予期していなかったと思います。我々プロレスラーも試合がなく、ただただ自宅謹慎。緊急事態宣言で、ジムも開いていないときた。仕方なく家にトレーニング器具を導入し、マンションの下の階の人の迷惑にならないよう、そっとキッチンマットにダンベルを下ろす。(トレーニングできるくらいのスペースがダイニングしかない)

このご時世でもこうして連載があるのだから、私がアウトプットする場所はここしかない!と、毎日意気込んでいると更新日が明日に迫ってしまった。(締め切りは何日も前)

西成の家族には自身の近況報告と、安否確認を兼ねて昨日電話した。とりあえず、元気そう。そもそも西成は自宅の概念が難しく、ホームレスの人に自宅謹慎をしてくれと言うのもおかしな話。人生がすでに緊急事態宣言を出しているこの地域の人にとって、今のこの世界はどう映っているのだろうか。Dead or Aliveの境地を何度もくぐり抜けてきた、西成の人々からすると、この状況すらも成るようにしか成らないのだろう。

弟がもうすぐ20歳の誕生日だからTHE NORTH FACEのリュックサックが欲しいというメッセージを残し電話は切れた。人生一度きりの20歳の誕生日なので、一緒に酒でも飲みたいと思っていたのだが、今は帰省することも難しいだろう。

次会うときは、少しは今よりもいい状況に乾杯しようと心に決めて、リュックサックをポチるのだった。


2007年08月04日

378話『蹴る×2 ジャイ蹴る』

今日は西成の友達を紹介しますヾ(^▽^)ノ

“黄金の肋骨”
ともちゃん

ともちゃんの肋骨がスゴい!!
僕が何回もボディプレスやアトミコをやっても効きません(≧∀≦)
でもとくに鍛えたりはしてないみたいですヽ(´ー`)ノ
能ある鷹は爪を隠すとはこのことです(笑)
まあ肋骨がスゴいことでどんなメリットがあるんかわかりません(≧∀≦)

“といちのダイ”
ダイセイ

このお方こそ未来の首相ですヽ(´ー`)ノ
ダイセイに駄菓子屋で100円を借りると10日後にはお菓子を一個あげないといけません(~▽~@)
‘宮村政権’で日本を!!いや!!世界を立て直して西成を首都にして(☆▽☆ )

“走れ‼︎レインボーロード”
前田

マリオカートとスマブラが得意(~▽~@)
ダイセイとケンカしていつも泣いてます‼︎
前田のお母さんはかわいいと評判です(笑)

“西成のビリージョエル”
佐田さん

幼くしてピアノをマスター(☆▽☆ )
ピアノの他に書道もを特技(´ー`)
普段はしゃべらない(~▽~@)

“色黒”
こげこげ

とにかく黒い‼︎
お母さんも黒くてこわそう(´ー`)
野球が特技(☆▽☆ )

”みんなのアイドル”
プリティー

学校のアイドルで僕とこげこげは気になってる(笑)
でもダイセイと付き合ってる
ダイセイとこげこげと僕は壮絶な三角関係である
人はこの三角関係を“バミューダトライアングル”と呼ぶ(≧∀≦)


写真は首相にはならず、走り屋の道を選んだダイセイ。

ここに出てくるプリティーのことは以前の記事でも紹介した。EXILEが好きで、ECCジュニアに通っていて、倖田來未みたいな声と喋り方の女の子。

書いててふと、思い出したのが自分が初めて女子とデートした日のことだった。

できる限りのおしゃれ(ショーン・マイケルズのTシャツにジーンズ)をして、なんばの高島屋の前で待ち合わせをした。まずはご飯を食べようということになり、竹下少年にとってオシャレで最高にイケてる店「SUBWAY」をチョイス。注文の際に女の子が味付けを「わさびドレッシング」で注文するので、まだ当時は寿司もサビ抜きで注文していた竹下少年にとっては、すごく大人っぽく見えた。

もう俺にできることは、この子を笑わせることしかない!と、得意の『竹本先生が教壇から転けたすべらない話』を披露。もうまもなくオチに到達するという場面で、ローストビーフサンドイッチをひと口。

「くうう~~~っっ!! 辛!!!!!!! きたーーー!!!!」

と、叫ぶのだ。一番いいオチの部分をその店内にこだまする絶叫でかき消され、私は唖然とした。さらに追い討ちをかけるかのごとく

「で、なんて~??」

もう一度、話せと言ってくる。ここで退がってはいけない。真剣は柄(つか)で斬れという。素人同士が刀で斬り合いをすると、みな腰がひけて、刃が人間に届かないそうだ。人を斬るには刃で斬ろうとしてはダメで、柄で斬るくらいで、はじめて人間に刃が届くという。柄で斬る、つまり踏み込むということだ……! 真剣勝負とは、そういうもの。竹下少年は踏み込んだ。

オチの少し前から丁寧に伏線をのせていき、あとは先生が教壇から転けるだけというタイミングで、計ったかのようにふた口目を食べる。

「くうう~~~っっ!! 辛!!辛い!! ヤバイーーーー!!!」

私はえびアボカドを残したまま、その場をあとにした。帰り道、なぜか悔しくて泣いた。

インスタで知ったのだが、その子も結婚して子どもも誕生していた。器の大きい男性もいたもんだ。もしくは、デートでわさびは食べないほうがいいと学んだか。どちらにせよ、私の初デートの思い出は、ツンと涙が出るものになってしまった。

竹下幸之介

1995年5月29日生まれ、大阪府大阪市出身。身長187センチ、95キロ。現役高校生レスラーとして2012年8月の日本武道館大会でデビュー。高校卒業後、日本体育大学へと進学し、学業とプロレスの両立に励み、2018年3月に無事卒業した。卒論のテーマは『ジャーマン・スープレックス』。2018年4月に入江茂弘に敗れるまで、KO-D無差別級王座11回防衛の最多記録を樹立した。地元西成への愛が深く、2018年大みそかの『年越しプロレス』には、「西成魂」の刺繍が入ったオーダーメイドの特攻服をわざわざ作って参戦。“西成のエリートヤンキー幸之介”として愛されている。