m.c.A・T『なんて言うんですか、こんな音楽感』第9回~YMO好きな俺には鼻血ブーだったオーディション

連載・コラム

[2020/3/30 12:00]

審査委員長は高橋ユキヒロさん! 高野寛くんと一緒に合格したぜっ!

 そのオーディションはちょっと変わっていて、合格になったメンバーで“究極のバンド”を作るという企画で、全国からボーカル、ギター、ベースなどを募り、決勝戦で合格者を選んでバンドを作るというものだった。テープ審査で俺も決勝戦に進出できることになったのだが、なんと審査委員長は高橋ユキヒロさん! その時点で鼻血ブーagain! もちろんユキヒロさんにも俺の曲を聴いていただいたうえでのオーディション参加なので、「聴いていただけて、パフォーマンスもさせていただけるとはっ!」と、かなり前のめりだった(笑)。

 披露する曲選びにはかなり慎重になった。ボーカル部門での参加を重視して、北海道時代に受けたコンテストでも評判の良かった、ちょっとプリンスっぽいけど明るめのダンスチューンを選んだ。当時から一番自分らしい曲だと思っていたけど、歌っている自分が楽しかったんだろうなぁ。実際楽しかったんだけど、完成度はどうでしたかね(笑)? 当日は勝っちゃんたちの応援もあり、緊張はしていたけど「まずはここで一発見せつけよう!」の気持ちだけで乗り切った。うまくいったような気もするけど、実際のところ必死だったようで……あまり覚えていない。

 参加している方の情報も知らなかったから楽屋で初めてお会いする方ばっかりだったけど、みんな話すと良い人ばかりだった。まぁ年齢は自分が一番上だったと思う(笑)。なかでも一番会話したのは、その後ソロデビューしてヒットして、最近ではYMOにギターとして参加している高野寛くん。多分俺より5歳くらい若かったと思うんだけど、いやぁ〜めちゃ音楽感がしっかりしてて「あ、すごい!」と思った。全国区のオーディションに出る人だからすごいというのではなく、高野くん自身がすごいと感心した。

 オーディションの結果、合格したのは3人で、ボーカルが俺、ギターが高野くん、ベースは最年少くらいの子だった。無事に合格できたけれど、自分だけYMOのアカデミックな感じとはかなり違って、叫んだり踊ったりのファンク・ダンス系だったから正直なところ不安はあった。結局バンドが結成されることはなかったけど、このオーディションを受けて良かった。『ミュージック・マガジン』にもこのオーディションの記事が小っちゃくだけど掲載されて、コメントもいただけたし。上京した当初で一番嬉しかった出来事かなと思う。本当に感謝。しばらく高野くんに会ってないな〜。会いたくなったな。

 さて、今回ピックアップする機材はローランドのMC-500。自分が東京に来て初めて手に入れたシーケンサー。最初使い方がわからず、同じ機材を使ってた高野くんに家に来てもらって指導してもらった(笑)。よくできた機材で、こいつとたくさん曲を作ったな。見た目はレジみたいだけど(笑)。

MC-500

m.c.A・T

1993年に『BOMB A HEAD!』でデビュー。ライブ活動と並行してプロデューサーとしても活躍し、DA PUMPのプロデュースを手がけて一世を風靡する。現在もさまざまアーティストへの楽曲提供/プロデュースワークを行う傍ら、ライブ活動を展開している。