m.c.A・T『なんて言うんですか、こんな音楽感』第9回~YMO好きな俺には鼻血ブーだったオーディション

連載・コラム

[2020/3/30 12:00]

ボンバヘッ!でお馴染みのヒット曲『Bomb A Head!』のほか、DA PUMPの育ての親としても知られるm.c.A・T。日本屈指のプロデューサーの自伝的連載がスタートだぜっ!


勝っちゃんの友人のおかげでオーディションを受けることにっ!

 さて、東京で一から出直しの状況になったA・T青年。しかし、前向き過ぎる若気の至りパワーにより、落ち込むどころかある意味で覚醒したようなオプチミストとなり、「なんとかならないわけがない!」と張り切るのでした。

 まず、何を張り切ったかと言うと、デモテープをレコード会社に送ること。「なんで東京まで来て郵送なんじゃい!」と思いながらも、多数あった曲のなかから10曲を選曲してメーカー10社に郵送した。「なんで郵送!?」というのは、北海道と東京なら距離があるのでわかるけど、同じ東京にいながらなぜ郵送するのかという田舎者ならではの「!?」。どうして直接メーカーさんに行かないのかと思ったけど、東京のアマチュアの方も同じくデモテープは郵送するのが当たり前だと後に知ることに。

 「早く連絡が来ないかな」と待っていたが、勝っちゃん(中川勝彦)曰く「そんなに早くは来ないと思うよ」とのこと。そんななか、彼は俺が会っていて損はないだろうという業界の友人にたくさん会わせてくれた。いろいろアドバイスいただいたり、ご馳走になったり、本当に感謝しています。

 そして、会わせていただいた彼の友人のひとりがとても自分の音を気に入ってくださって、自分がデモテープを送ったメーカーさん以外のディレクターさんにも俺の曲を薦めてくださったことで、とあるオーディションを受けることになった。実はその勝っちゃんの友人は、昔からYMOのみなさんやスタッフさんと大変仲が良い方で、その話だけでもYMO好きな俺には鼻血ブー的な興奮だった。それに加えて、デモテープを聴いていただき、オーディションのお誘いまでいただけるなんて……。調子に乗ってしまわぬように(勝っちゃんの事務所の件のように)気をつけながら、でも気持ちは前のめりでオーディションに臨むことになった。(次ページへ)