レコード会社決定&コンペでモチベーション上がりまくりっ!~m.c.A・T『なんて言うんですか、こんな音楽感』第16回

連載・コラム

[2021/4/15 12:00]

ボンバヘッ!でお馴染みのヒット曲『Bomb A Head!』のほか、DA PUMPの育ての親としても知られるm.c.A・T。日本屈指のプロデューサーの自伝的連載がスタートだぜっ!


 2021年も春を迎えまして、ご卒業された方々、ご入学された方々、入社された方々、おめでとうございます。しかしながら、昨年に引き続きいろんなセレモニーが中止になったりで、2019年まで日本の「普通」にあった通例がことごとく開催されなくなりましたね。大変残念なことであります。

 ですが、人間には知恵・知識に加え経験があります。新たなセレモニーの形が今後の「通例」になることも考えられますし、今回のウイルスが特効薬等のおかげで恐るるに足らない疾病になり、これまでの「通例」が復活するかもしれません。いずれにせよ、ここでがんばった人々は今後の歴史にも「新型コロナウイルスと戦った時期の人々」として残るわけであります! 乗り越えたあとには必ず成長した明日があるはずですので、しっかり胸張って毎日を過ごしていただきたいと思います!

 毎回冒頭には、最近感じたことや考えていることを書き出していますが、なんか今回は朝礼で校長先生が言いそう、もしくは講演会で先生が言いそうな感じですね(笑)。ただね、本気でそう思ってます。卒業式で3年間したためた告白をしたかった方もいるだろうし、恩師に感謝の気持ちを伝えたかった方もいるでしょう。でも、新しい考え方に変えてみれば、その思いはいつか伝えられるときに何倍もしっかりと伝えることができかもしれない。「新しいこと」を怖がらず、がんばりましょう〜! では今回はこの辺で!……ってなるわけはありません(笑)。では、前回からの続き〜。

初めてのCMコンペだぜっ!

 無事に(と言ってもまだまだこの先大変なのだけれど)レコード会社「K」社の事務所に仮契約までこぎつけたA・T青年。これといって大きく変わったわけではなかったが、何しろモチベーションが上がる上がるっ! 北海道時代から夜のバイトをかけもち、明け方4時くらいに帰宅、仮眠して夕方まで曲作ってまたバイト、みたいな繰り返しだったが、ますますやる気満々だった。

 この頃、塾の講師のバイトが受かった。埼玉県の蕨市で夏季講習を担当していたのだが、当時住んでいた中野区からの通勤は時間がかかるし、予習もしなくちゃならなかったので多少音楽にかける時間が減ってしまっていた。そんなある日、特に言動には出てなかったとは思うのだけれど、塾長に呼び出された。そして「どうでしょう? 講師をやっていると音楽も大変でしょう? 知人の息子さんを合格させてくれませんか。家庭教師いかがですか?」と提案された。面接で「音楽やっております」と言ったのがよかったのか、ありがたい提案だった。家庭教師なら経験もあるし、週3回で、偶然にも自宅からもそう遠くなかった。伺ったお宅にもよくしていただいて本当に助かった。息子さんはなかなか大変だったけど(笑)無事合格してくれたし、バイトにはとても恵まれた。

 家庭教師のおかげで音楽の時間をとれるようになり、引き続き毎日毎日、曲作り。そして出来が良いものは事務所にもっていって聴いてもらったりしていた。そんなときに初めてCMのコンペのお話をいただいた! ヒュ〜! いや、コンペの段階だし喜んでる場合じゃないのだが、何せ結構大きな仕事っぽかったからまたまたやる気満々! ちなみにコンペというのは「コンペティション(Competition)」の略。たくさんの曲を集めて一番合っていそうな曲を選ぶ、まぁ競争ってこと。

 テーマが「ダンスミュージックでディスコの匂いもするキャッチーな曲」っていうことで、まぁまた得意分野なのでモチベーションも上がった。また、歌う方がこりゃまた有名なバンドで、今回は今までと違うアプローチがしたいということでコンペにしたらしい、というおまけ付き! カッチョいいの作って受かったら新人作曲家としてはちょっといい感じかも!みたいな欲も出てがんばった。

 このときは制作期間がかなり短かったので、自分用に作っていて気に入っていた曲のひとつを作り直したんだったと思う。そして、曲を提出してしばらくすると事務所に連絡が入った。どこからかというと、CM音楽制作会社さんから。CMひとつにもたくさんの会社が関わっていて、音楽はCM音楽会社さんが担当しているわけ。そして、どんな知らせかというと「最終の4曲に残っていますよ! バンドの方からはかなり好評のようです!」と! こりゃまた調子に乗りそうな、いや乗っちゃう勢いの流れでしょう。CM音楽製作会社の担当の方も自分を応援してくれていたのでとても嬉しかったのを覚えている。

 ……このあと、芸能界というかプロの世界の厳しい洗礼を受けることになることも知らずに……。(つづく)

m.c.A・T

1993年に『BOMB A HEAD!』でデビュー。ライブ活動と並行してプロデューサーとしても活躍し、DA PUMPのプロデュースを手がけて一世を風靡する。現在もさまざまアーティストへの楽曲提供/プロデュースワークを行う傍ら、ライブ活動を展開している。