当時のドキドキの給料事情っ！～m.c.A・T『なんて言うんですか、こんな音楽感』第18回

ボンバヘッ！でお馴染みのヒット曲『Bomb A Head!』のほか、DA PUMPの育ての親としても知られるm.c.A・T。日本屈指のプロデューサーの自伝的連載がスタートだぜっ！

　みんな、気をつけて暮らしていますか〜。って去年も言ってたはず。こちら（人間ね）ががんばって対処法を考えてもあちら（コロナね）も変化して向かってくる。ワクチンができていずれ特効薬もできるはず。コロナ以前の考え方ではなく、「今〜これからをどう行動していくのか」を考えて暮らしていくことがヒントだと思います。って去年も言ってたような。強くなったコロナは半端ない感染力だそうです。今以上にご注意を。もしかかってしまったようならすぐに対処を。自分の一番の防衛軍は自分だったりしますから。

家庭教師バイトの思い出……そして事務所契約！

　さて、プロ音楽家としての厳しき洗礼を受けたものの、ありがたく応援してくださる仲間も増えてめげることなく邁進していくA・T青年の続きのお話。当時は順調にというか、必死に、それでも楽しく毎日、曲作りに集中していた。まだ作家としては全然これからの自分だったけど、バイトが家庭教師のみという、生活は厳しいものの音楽に集中もできた幸せな時期でもあった。

　塾の塾長さんから紹介された家庭教師はなかなかにおもしろかった。教え子は中3の男子だったけれど、自由に生きていたのでしょう、彼の自由な世界のなかには「勉強」が必須なものではなかったようで。それで中3になって本人も親御さんもちょっと焦り始めた模様で、俺が呼ばれたわけ。俺の部屋からそのお宅までは直線距離では近かったものの、電車乗り継ぎとなるとかなり遠回りになり、電車賃もままならないので徒歩が多かったのだが、見かねた親御さんが使ってない原チャリを貸してくれたり、毎回夕食を一緒にとらせてくださったり、とても恵まれた境遇だった。そして、彼なりに、俺なりにがんばった結果、当初「入れるところがない」レベルだった彼も無事に合格。「高校生活、有意義にね！」なんつってお別れした。

　まぁ、突然「先生！　助けてください！」と彼から電話がかかってきたこともあったけど（笑）。なんせやんちゃな子だったもんで。1年の付き合いで相当な信用は得たということだったのかな。詳しくは書けないけど、親に言えない相談に乗ったことも（笑）。このコラムは正直に書いているせいか、「書けないこと」が多いな……（笑）。あ、いたずらのちょっと発展したくらいのもので犯罪とかの類ではありませんよ！　ご安心を。

　彼が合格した結果、バイトがなくなってしまったけど、実は同時進行で事務所さんと契約を交わした。これで音楽だけに没頭できるし、生活も楽になる！な〜んて思っていたけど、外側（素人として）から見ていた業界というのは現実とは違うもので、そんなに甘いものではなかった。当時、契約時には「契約金」がガッポリもらえるという噂がまことしやかにありワックワクしていた。しかし、その「契約金」というシステムは、超大物アーティストがメーカーを移籍する場合だったり、すでにデビュー前からものすごい実績がある場合など、かなり稀有なケースだったようで。まぁ、上京したての俺ごときにそんなシステムが当てはまるわけもなく「拾っていただきありがとうございます！　がんばります！」ですよね。当然です。

　事務所さんによってはデビュー前のアーティストさんに給料やボーナスを与えてくれるところもあるけれど、俺のところは違った。まぁ、ほとんどの事務所さんがそうだと思う。需要と供給の理論だと当たり前。しかし、デビュー前といえど生活や音楽活動にお金は必要だ。毎月、俺は家庭教師のバイトのおよそ半分くらいの、いわゆる「専属料」のようなお手当てをいただいたけど全然暮らしていけなかった。そこでディレクターさんが会社にかけあってくださってギリ生活を保てる金額をいただけることに！　ありがたい！　まぁ、専属料に上乗せされた金額は「アドバンス」といって、いずれデビューして（デビュー前でも作家として、音楽家として）入った収入から返済していくというシステムだったから、毎月「返せるのだろうか……」とドキドキはしてましたけども（笑）。

　なんか今回はとりとめのない内容になりましたね〜。音楽的でなくて申し訳ないっ！　えっ？　アドバンスは返済したのかって？　はい！　6年後にはしっかりと返済したとさ（笑）。（つづく）