【掟ポルシェの食尽族】第14回:ウニのオスメスの見分け方&震えるほど美味しい寿司屋

連載・コラム

[2020/8/31 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第14回:ウニのオスメスの見分け方&震えるほど美味しい寿司屋


子どもの頃に覚えたウニのオスメスの見分け方

 ドーモッ! 特技はウニのオスメスを見分けること! 一部の棘皮動物大好きっ子掟ポルシェです! ひよこのオスメスを見分けることはやったことありませんし難しいらしいんでできませんが、ガチでウニのオスメスは見分けがつきます。いつもの適当な与太と違ってこれはマジで。「なんでそんなことができるのか」って? では、ご説明させていただきます!

<【掟ポルシェの食尽族】第13回:狂ったようにドハマりした『ラーメン凪』の魅力>

 生まれが北海道留萌市という日本海に面した海沿いの町でして、数の子の生産シェアの95%を占める水産加工業で有名です。そんなわけで子どもの頃から娯楽といえば海水浴ですよ。もちろんその頃海水浴といえば普通に泳いで楽しむ、というものでは当然なく、海に潜って魚介類を獲って食うことを意味します。まぁ軽く違法っちゃ違法なんですが、昭和50年代の田舎の岩浜で近所の子どもが海に潜って獲った自分が食べる程度の海産物は見過ごされるものでしたんで普通に話しますけども(大人が近所のスナックとかに買い取ってもらおうとキロ単位で密漁してんのが見つかった場合は容赦なく逮捕)。泳いだあとにお腹が空いたら海岸で焚き火を起こし、子どもでも獲れる浅瀬の岩の下にいるウニだのムール貝(北海道で言うところのヒル貝)だのをむしり取ってきて、その場で焼いて食べます。昭和の子どもはゲームセンターに入ることは禁じられていましたが、海で焚き火するのは娯楽としてやって全然OKでしたんで、親が使ってるマッチだのライターだのを家から持ってきて拾った新聞紙とかその辺に落ちてるトロ箱(魚を入れて売る用の木箱)の残骸とかを燃やして、火が大きくなったらその上にウニ&ムール貝を乗っけて焼きます。トロ箱の釘がパーン!と弾けるのをわーっ!とか言いながら避けて、寒い北海道の海での海水浴で冷え切った体をあっためながら焚き火にあたっていると、真紫だった唇の色が和らいで段々と生気が戻ってきます(詳細を書いてるうちに脳内にスタンドバイミーが流れ出し、勝手にエモくなっていることを御了承ください)。

 この場合、獲ってくるウニはバフンウニ。北海道では“ガンゼ”といいます。水深2~3m程度の浅瀬でも、潜れば岩の下のほうに隠れて貼り付いてるガンゼを簡単に捕獲出来ます。棘の長いムラサキウニ(北海道留萌地方では“ノナ”と呼ぶ)も海中にたくさんいるんですが、身が大きいがバフンウニに比べて甘みが少ないという理由で誰も見向きもせず基本スルーでした(ここんところ後述します)。
 で、貝はまんま焼いても焼ければ勝手に開いて食べられますが、ウニはそういうわけにはいきません。多少の調理が必要になります。殻に入った状態のウニを調理して食べたことがある人は、魚の鱗を落としてさばいて食べたことがある人よりは少ないかと思いますので、一応調理工程を詳述しますと、まずあの痛い棘を取ります。その辺に落ちてる軍手(昔は冗談じゃなくよく落ちてた)をハメて、ウニを手に持ってデカイ石の岩肌に擦りつけて棘をこそぎ落とします(焼いて落とす方法もあります)。そして殻を口のあるほうから割ってウニの内臓を掃除していきます。通常私たちが「ウニ」として食べているのは生殖巣の部分に当たります。ウニは雌雄異体でメスとオスの個体があるので、卵巣または精巣(さりげないレディファースト)を食べることになるわけですね。ですので、生殖巣以外の内臓や食べた海藻の残骸等を取り除いていきます。

 実はウニのオスメスは簡単に見分けがつきます。メスは身がオレンジ色がかっていて、オスは薄い黄色です。魚屋やスーパーで売られている折り詰めに入ったウニにもオレンジと黄色いのが混在していますよね。あれは精巣と卵巣が両方入ってるオスメスバラエティセットってことです(※産卵期前はどちらも同じ色らしい)。そして生の状態だと、オスは精巣なので精子のようなやや白っぽいネバネバの液体に包まれています。一般的にオスのほうが味が濃厚だと言われますが、実際食べた感じではオレンジ色のメスのほうが甘みが強く自分の周囲では好まれていました(調理のため殻を割った瞬間オスだと「オンタだ(北海道弁)」と多少ガッカリされる)。やはり自分も性別オスなので、多少なりとも精子っぽい風味を感じてしまうオスの身にはちょっと抵抗がありますね(笑)。共食いは嫌! 痴女のみなさんにはもちろんオスがオススメ!
 殻に身だけが残ったウニをまんま焚き火の上に乗っけて焼きます。当然生でも食えるので多少火が通ったら食べます。実はですね、子どもの頃、ウニが全然好きじゃありませんでした。ここまで書いといてなんでだよ!と思われるでしょうが、海水で洗っただけのウニは海の水の塩分が多すぎで生臭く、水で洗って折り詰めされた製品のウニと違ってそんなに甘みを感じないんですよ。ウニって美味しいなと思うようになったのは、自分で獲って食わなくなってから。ちゃんと水で洗ってるやつとか蒸しウニとかを食べてようやく「え! ウニってこんな甘くて美味しかったの!?」とびっくりしたというか。子どもが海水で雑な処理して海辺で食う生ウニって、しょっぱくて生臭くてそんなにいいもんじゃないんですよね。実際焼き過ぎて焦したりしてよく捨ててました! もったいないおばけのみなさんすみません!

 子どもの頃、寿司といえば家でやる手巻き寿司。これが何より好物でした。そんなときもウニは食べません。そりゃなんつったって買えば高いからそんなおいそれと食卓に並ぶものではありませんでしたし、海で獲ったウニを食べて美味しいと思ったことが一度もなかったので、あっても手を付けませんでした。初めて寿司屋で寿司を食べたのは記憶にある範囲では中3のとき。祖母さんの葬式の帰りだったように思います。回転寿司なんかもまだない時代、「寿司屋で食べるお寿司ってこんなに美味しいんだ」と驚いたことを覚えていますが、そのときもウニは苦手なんでと手堅くハマチかなんか食ってました。ずいぶんもったいないことをしたなぁと。
 そして月日は経ち、ウニの美味しさに気づいてからは、寿司屋でも好んで食べるように。ただ、子どもの頃散々自分で獲って食べてウニの状態の良し悪しだけはわかっているため、回転寿司のミョウバンまみれの苦いウニ軍艦などは見るたびに心の中で中指を立てます。半分キュウリ乗せてごまかしたつもりのびんぼうウニ軍艦、ファックオフ!

ガックンガックン震えるくらい美味しい寿司屋

 2000年代初頭、JポップDJチーム『申し訳ないと』の一員として全国のクラブをまわっていました。この申し訳ないと、主催のミッツィー申し訳さんが食の奇人であり、食に対して異常なまでのこだわりを持つ故に、地方へ行くとその土地の美味いものを食うためどうかしているレベルのリサーチと至高の晩飯&究極の打ち上げをセッティング。おかげで我々DJ陣はこれまでの人生で食ったことのない美味いものに巡り合うことができました。美味いものを食べたいという強い気持ち・強い愛。その嗅覚はパッキパキに研ぎ澄まされており、時に神がかっています。一度大阪の繁華街で食べるものに困ったとき、ミッツィーさんは「この辺がなんかあやしい」となんの情報もないまま勘だけで路地裏に突き進んで行き、料理研究家がやっている開店したばかりの隠れ家割烹を探し当てたことがあり、そのときは超能力あんじゃねえかなこの人と思わされたほどです(しかも1階満員なのに2階大広間がガラ空きで当日いきなりで貸切にできたり、メニューが松茸とハモの土瓶蒸しとか高級&時価のものばかりのところ、勢いで頼んだら結局いろいろ飲んで食ってひとり頭6,000円程度しかかかってなくてコストパフォーマンスの良さにびっくりしたりも)。
 で、申し訳ないと全国DJ&美味い飯ツアーで地方に行く際、「飲んで食って1万円程度の寿司屋」をリサーチし、よく行っておりました。2万3万出して美味いものが食えるのは当たり前だしつまらない。おまかせで1万円程度ってラインが地方DJメシツアーのキーポイントでした。自分の経済状態的に1万円の鮨ってのは決して安いものではありませんが、せっかく地方に来たんだから、多少奮発して美味しいものを食べたい。それで出せる金額が1万円。思い出に与える金額としては決して高くはないのです!

 そんなある日、宮城・仙台でDJイベントがあったとき、なかなか良さそうな店がミッツィーさんの美味い飯センサーに引っかかりました。それが『鮨 江なみ』です。2000年代中盤、まだ開店当初だったかと思いますが、すでに予約必至の人気店でした。清潔感と高級感の同居する店内、ネタが氷で冷やす木製冷蔵庫に入ってるのを見ただけでもうイキそう。2017年にはミシュランひとつ星を獲得したのも納得の正統派江戸前鮨屋です。
 確か当時おまかせが1万円丁度、美味しすぎてガックンガックン震えるつまみと握りのコースの序盤にそれは現れました。

 ガゼウニ!!!!!!!

ガゼウニ

 見てみ、このハンパない身の詰まり方!! 殻を割ってウニを食べたことがある人ならこれが如何にとんでもないことかわかるかと存じます。「大きい身を取って小さい殻に戻してるんじゃないの?」と思われる方もいるでしょうが、なんとこれ、殻に貼り付いているんですね。ウニの内臓の掃除具合にも戦慄&畏怖。江戸前の仕事はこんなところにも発揮されるものなのか! 江なみ、恐るべし!
 熱狂的ウニファンの皆様、もうおわかりですね。この棘の長さと身の色は、ムラサキウニのそれ。ガゼウニといえば長崎県壱岐等の南方ではバフンウニのことを指しますが、三陸地方ではキタムラサキウニのことを言います。確か提供時「ウニです」としか説明がなかったこちら、おそらくキタムラサキウニで間違いないでしょう。
 見た目のショックで2秒ほど死にましたが、いただいてみることに。「子どもの頃海に潜っても、甘くて美味しいバフンウニのほうを獲って甘みの少ないムラサキウニのほうはスルーしていた」と先述したように、多少の(なぜムラサキウニ?)感がありながら食べてみると、こっっれがまああああぁ旨いのなんの(泣)。甘みの質が上品で、味に清涼感すら感じます。ふんわりとしたウニの甘さに初夏をいただいてる感。天国に一番近い味。
 三陸地方ではこの季節、この殻付きのガゼウニを提供しているお店がほかにもありますが、こんなに身が詰まっているのは見たことがありません。それというのも、江なみの大将は魚屋からウニを買い付けてくる際、特別にウニの殻を割ってもらって中を確認し、身が詰まったものだけを買うことが許されてるからなんだそう。仕入れ先の魚屋から特別扱いを受けるのもなんとなく頷けます。すごい綺麗で美味しいものしか出てこないんだもん鮨 江なみ。大体の目安ですが、鮨 江なみでは旬に当たる6月から8月くらいまで、この殻付きの状態のとんでもないウニが食べられるようです(今年はもう遅いかな……この時期取り上げてすみません)。
 え? 鮨 江なみで出されたガゼウニがオスメスどっちだったかって? ……美味しすぎてどちらかわからなかったです……いや、あの、自分専門はバフンウニなんで(以上、雑な特技の話でした)。

ウニの「ニ」~!
2020年夏の著者近影!

掟ポルシェ 通販サイト開店!

『掟ポルシェ泥棒市場』https://okite.theshop.jp/

掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。