二丁目の魁カミングアウトは「ゲイでもアイドルになれる!」を全力で証明する……Zepp公演直前の4人に直撃!

特集・インタビュー

[2019/7/11 12:00]

私たちは4人ともそれぞれ違った色の孤独を持っていた

――人生が変わった?

ぺいにゃむにゃむ:私はずっとやりたいこともなくて、毎日がルーティンでしかなかったんです。そんなとき、二丁ハロを見て衝撃を受けました。ゲイアイドルに出会った運命を感じていたら、ちょうどオーディションの発表があって……。

ミキティー本物:落とすつもりだったけどね(笑)。全然ダメだったけど、「方向転換したら一気に輝くかも」って信じてみたら、今それが当たった感じです。

――今の“ミキぺい”のバディ感からは信じられませんね……!

ミキティー本物:今でこそ「二丁魁の太陽」みたいに言われてますけど、全然真逆の人間だったから! 自分だけ目立てばいいっていうタイプだったので、他のアイドルのライブに行って、「あなたは同じことをしちゃっているよ」と悪い例を見せたりしたんですよ(笑)。協調性とか、ソロとグループの違いを教えるのが本当に大変でした。

ぺいにゃむにゃむ:一人っ子で、「私が通る道がランウェイ」みたいに生きてきたから(笑)。友達にも「本当に二丁魁入ってから変わったよね」と言われます。ミキティーに感謝!

ミキティー本物:基本的に3人とも加入当時はダメ人間だった(笑)。

――きまるさんは、ミキさんの言葉で印象に残ったものはありますか?

きまるモッコリ:注意されるときに「あなたのためだから」って言われたのが、ずっと胸に残っています。私、人に怒られるのがすごく苦手で、ずっと逃げてきたんですよ。でも「あなたのため」って言われて初めて人と向き合えた。人のことも受け入れられるようになりました。

ミキティー本物:第一印象は、“その場しのぎ”でした。初めて私たちのライブを見に来たのに楽屋で寝ていたのを注意したら、「ごめんなさーい」って謝ったときの感じとか、振り付けについて叱ったら、その場でちょっと練習するふりだけ見せる感じとか、本当に「その瞬間だけなんとかなればいい」っていうタイプ。彼は過去の大切さを知らない人だと感じたので、過去の積み重ねで今があるってことを教えるために、私が今まで育って経験したこととかを話しました。それからは、ひとつひとつの物事にちゃんと向き合う人になったんじゃないかな。加入当初、過去に一度だけ「二丁魁を辞めたい」と言われたときも「私はその言葉でひどく傷ついた」と真剣に伝えたので、彼は今でもその言葉を後悔しています。でも「私を傷つけたことを一生背負って活動してね」と伝えたことで、また生まれ変わった印象です。

――なぜグループを辞めようとしたんですか?

きまるモッコリ:アイドルはずっと夢でしたが、やっぱり私の根っこは面倒くさがり屋で、すぐ逃げたくなっちゃう性格なんです……。だから、「辞めようかな」とぽろっと言ってしまいました。でもミキちゃんとお話するなかで、みんなの本気でアイドルになりたい気持ちを改めて感じて、「これだけ人生を賭けている人たちの一員に私もなりたい」って思えた。それが一番の変わるきっかけでした。

――白鳥さんは?

白鳥白鳥:私はきまるさんと真逆かも。もともと友人も多くなくて、生きることイコール戦いっていう孤独なファイターみたいに育ってきたんですよ(笑)。だからミキさんに「今のあなたにはこれだけ味方がいるってことを忘れないで」って言われて泣いてしまった。そういう人はこれまでの人生にもいたかもしれないのに、私が寄せ付けていなかったのかもしれないと気づけたんです。今はいい意味で、自分自身をまわりに委ねることができています。

――白鳥さんはオーディションに何度落としても、言われたことをちゃんと直して再挑戦してくるから合格になったんですよね。

ミキティー本物:彼は、外から見える部分はキレイだけど中身は空っぽというか、何かもっと黒いものを感じたんです。不合格にした理由としては、ここふたり(きまると白鳥)は同じオーディションを受けに来たんですけど、きまると同期にしたくなかったんですよね。白鳥のほうが年上だから、ここで上下みたいになっちゃうと、きまるも成長しないし、白鳥の悪い部分も増しちゃうと思ったから不合格にした。落としたときに、「あなたのここが嫌だ」ということを一気に伝えたんです。人間の中身って表面にも出てくるものだから、内面からどこまで変わっていけるのかを半年かけてチェックしました。

――そうだったんですね。

でも「私がなりたいのは、アイドルじゃなくて二丁魁の白鳥白鳥。ミキさんがそう言うのなら、それが私のなりたいものです」という言葉を聞いたとき、まだ100%信用できていたわけじゃなかったけど、この人と一緒にやりたいなって感じた。私も含めてメンバーたちのめちゃくちゃいい刺激になる予感がありました。……でもこのメンバーのなかでは、私生活でもパフォーマンス面でも一番注意しているかも。

白鳥白鳥:ふふふ(笑)。

――客席からは一番の優等生に見えるので意外です。

白鳥白鳥:優等生を演じているというより、「“白鳥白鳥”だったら、こういうときどうするか?」と普段から考えるようにしています。私は今後もいろいろ変化していくと思いますが、すべて白鳥白鳥で在り続けるための変化なんです。

――逆にミキさんが、このメンバーに出会って変わったことはありますか?

ミキティー本物:この人たちに会ってから、失敗や後悔を恐れなくなったと思う。私自身が一番仮面をかぶっていたんでしょうね。もっとよく見せなきゃ、歌えなきゃ、踊れなきゃ、いい歌詞作らなきゃって……。「ありのままのミキティーでいいんだよ」って言ってくれたのは、この3人が初めてでした。だから、くよくよ考え込まず、この3人には迷いなく言葉をかけられます。私、普通に話し合いで泣かせたりするもんね(笑)?

ぺい、きまる、白鳥:苦笑いでうなずく。

ミキティー本物:私たちは4人ともそれぞれ違った色の孤独を持っていました。だからこそ、このメンバーがそろったとき、「これが愛ってものじゃないか」と感じられる居場所を見つけた感覚になれたのかもしれません。

ゲイアイドルとは、私たちが先駆けて作るもの

――二丁魁には、「人前でお酒を飲んではいけない」や「SNSでこんな話をしてはいけない」といったルールがいろいろ存在すると聞きました。それもミキさんが決めているんですか?

ミキティー本物:それは私が押し付けたんじゃなくて、全員で「アイドルである以上、こういうことはしたくないよね」と話し合って意見が一致した結果です。

ぺいにゃむにゃむ:だからあまり我慢している感じはしないよね。

――4人の理想とするアイドル像が合致していることが強みなのかもしれませんね。

ミキティー本物:ゲイアイドルは前例がないものなので、私たちが先駆けて作っていくしかありません。なので、私たちは基準になって恥ずかしくない存在でいようと心がけています。「CDを1万枚売りたいのではなく、1万人の人に聴いてほしい」という考えのもと、CDに特典をつけないのも同じことです。もしも大手事務所がゲイアイドルを売り出すとなったら、今の私たちよりお金をかけた活動ができるでしょう。でも二丁魁は、「元祖のゲイアイドルは特典とかつけずにZeppまで行ったんだよ」って語り継がれる存在になりたいですから。どの国に行っても、これがゲイアイドルだと胸を張れる活動がしたいと思っています。

――初めて二丁魁のライブに行ったとき、ほかのアイドル現場に比べて女性ファンがかなり多いのに驚きました。

ミキティー本物:今はワンマンだと男女3対7くらいかな? 「男は行かないほうがいいかな」みたいなツイートを見かけることもありますが、私たちはゲイアイドルだし、あまり他人の性別を意識していません。客席にも私たちのような人がいるかもしれないし、見た目だけで男性が多い、女性が多いという判断はしませんね。

――たしかに……。あと、「昔は客席から中指を立てられたこともあった」というエピソードを知ったときショックを受けました。ゲイアイドルと聞いて、勝手にバラエティ的なものを想像される苦労もあったのではないでしょうか?

ミキティー本物:中指を立ててくる人や、会場を出ていく人はいましたけど、それに対して、「ふざけんな」って気持ちはないんですよね。女性アイドルが中心のイベントで、容姿が男性である私たちがステージに上がるのを嫌がる人が出てくるのは仕方ない。逆に申し訳ないという気持ちでした。でも今は対バンでもフェスでも、男性客がたくさん来てフロアがパンパンになります。昔はチェキ会でも、「お前ちょっと行ってこいよ」みたいな人とか、おもしろいチェキが撮れると思って来る人がいたんですが、今は「曲が大好き」と言ってくれる人ばかりで……!

白鳥白鳥:本当に、愛が伝わる人たちばかりなんですよ。

ぺいにゃむにゃむ:目を見ればわかるよね。「ちゃんと好きになってくれたんだ」って。

ミキティー本物:最初は「おもしろいのかな?」って冷やかしっぽい感じで来たのに、実際見てみたら、ちゃんとやってるじゃん! いいじゃん! みたいなね。

ぺいにゃむにゃむ:ライブ中にその変化が見えたとき、めちゃくちゃうれしいよね!

一同:わかる!

二丁目の魁カミングアウト

「ゲイでもアイドルになれる!」をコンセプトにしており『TIF』や『@JAM』『夏の魔物』といった大型イベントにも出演。リーダーのミキティー本物はオリジナル楽曲の作詞すべてを担当しているほか、振付師として、私立恵比寿中学、Maison book girl、フィロソフィーのダンス、BiS、LADYBABY、ゆるめるモ!といったアイドルグループへの振り付け提供も行う。

ライブ情報

2019年7月14日、魁バンドによる生演奏&二丁魁名物ノンストップメドレーによる全楽曲披露ワンマンライブ『ゲイでもアイドルになれる! in Zepp Tokyo』(https://www.gayidol.jp/pages/67851/zepptokyo20190714)をZepp Tokyoにて開催決定!

取材・文 / アイドルライター原田イチボ@HEW