B'zがサマソニでみせた“完全にB'z”なライブ〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)のサマソニレポート【1日目】

特集・インタビュー

[2019/9/5 12:00]

マリンステージに5億人!? ついにB'zのライブが……!

そして17時40分。ついにマイケル・モンローのライブが始まった。マイケル・モンローはフィンランド出身のロックシンガーで、もともとはハノイ・ロックスというバンドでボーカルを担当していた。ハノイ・ロックスはストレートでゴージャスなロックンロールバンドで、フィンランドのバンドでありながらガンズ・アンド・ローゼズなどアメリカの大物ハードロックバンドにも大きな影響を与えたカリスマ的存在である。

今年57歳になる大ベテランのマイケルだが、年相応の落ち着きは一切感じられない。ルックスもそうだが、動きの切れのよさ、声量、また何度も観客席に下りて客と戯れたりと、まるでまだ20代かとも思うほどの若々しいパフォーマンスで観客を圧倒してくる。さすがに見た目に反して禁煙、禁酒、ノードラッグを貫いているだけある。途中何度かマイクトラブルに見舞われながらも、慌てた様子は一切なく冷静に対処していたあたりはベテランならではの対応力といったところか。

パンクロック的な要素もある勢いのある曲をメインに、ハーモニカや得意のサックスを披露したりと飽きさせない演出も見事で、時間を忘れるほどにのめり込める素晴らしいステージだった。まさに“ロックスター”という言葉がふさわしいカリスマである。あとで聞いたらメイデンはだいぶ前の方に陣取っていたらしく、彼もマイケルのステージを絶賛していた。

さてマイケルの余韻に浸りながら次の目当てであるラウドネスも同じレインボーステージだったので、このまま移動せず待っていようかと思ったのだが、風の噂でどうやらマリンステージがすでにとんでもないことになっているという話を聞いてしまった。THE1975の人気とB'z待ちの人たち、それにプラスしてこの日は台風の影響によりビーチステージが中止になるというハプニングにも見舞われていたため、マリンステージにどんどん人が集まり、すでに5億人はいるという話が出ているのである。

もともとはラウドネスを数曲観てからB'zに行こうかと思っていたのだが、この状況では下手すると入場規制などがかかってB'zはまともに観られなくなってしまうかもしれない。せっかくのチャンスなのでそれだけは避けたい。ということで仕方なくラウドネスは諦め、急いで本日初のマリンステージへ。

空は何だかロマンチック。

そして歩くこと約10分。辿り着きたるは、

日本が誇るモンスターバンド待ち受けるZOZOマリンスタジアム。

こちらはメッセより海が近いせいか、さらに風が強い。もはや普通に立っているだけでこのとおり。

髪の毛がラウドネスしてしまう。

さらに会場内に入ると見渡す限りの人間砂漠。前の方はもはや諦めていたので3階席あたりから入場したのだが、それでも座席は完全に埋まってしまっている。運がよかったのが着いてからちょうど数分後にTHE1975が終わり多少席が空いたので、何とか座ることができた。

時刻は19時過ぎ。空は薄暗く風は強い。しかし人々の目は色めき立っている。そういえばB'zをライブで観るのは実に約10年ぶりだ。あのときも何とか友達が東京ドームのチケットを取ってくれて、これまたかなり後方ではあったが、その迫力は広い会場の隅々まで伝わり、彼らのライブバンドとしての実力に圧倒されたのを覚えている。

そもそもB'zは僕がロック好きになるきっかけにもなったバンドである。それは遡ることもう20年以上前。『LOVE PHANTOM』で僕のロック好きは始まった。あの衝撃から今の今に至るまで消えることなく常に第一線で活躍し続けているというのは本当にすごいことである。ましてメディア露出も少ないのにだ。自分たちに求められていることを理解しつつ表現者としても高い意識を保ち求道を怠らないからこそここまでの存在になれたのだと思う。あのエアロスミスでさえ沈みの時期があったことを考えるとそれがどれだけすごいことか。

なんて感傷に浸っている間に時刻は19時40分を回った。MCのクールな紹介とともにモンスターがその姿を現す。

轟く爆音。空を切り裂くような唯一無二の声。完全にB'zである。キャリア30年を超えていまだに衰えることのない体型、顔、そして声。グイグイと観客を引っ張っていく華やかなフロントマン、稲葉浩志。対照的に決して派手なパフォーマンスを見せることなく、その魂はすべてギターに乗せ歌わせる職人肌の松本孝弘。ボーカリストとギタリストが対照的ながら同等のカリスマ性をもっているという、ストーンズをルーツとするロックバンドのひとつの様式美を彼らは見事に持ち合わせている。

セットリスト的にはここ最近の曲をメインに、『ultra soul』や『裸足の女神』といった誰もが知っている有名曲も織り交ぜての選曲。もしかしたらフェスだけに全編ベストアルバム的な選曲を期待していた人もいたかもしれないが、何しろ百戦錬磨の彼らはどんな曲でも観客の心を放さない技を心得ている。ゆえにおそらく知らない曲であろうが盛り下がっている様子は一切感じられない。何よりB'zの曲は初めて聴く曲でもいいと思える曲が多いのが強みだと思う。

また今回はサポートメンバーも一新されており、相変わらず一流のミュージシャンで固められているなか、ベーシストのインド出身のモヒニ・デイが女性ということもあってすさまじい存在感を放っていた。アップテンポなロックナンバーからしっとりとしたバラードまで、退屈な時間など一切なく終始観客と一体となって駆け抜けた素晴らしいライブであった。

終演後、恒例となっている花火が今年は台風の影響により観られなかったのは残念だが、花火以上に美しい瞬間のような約1時間半をライブで味わえたのでよしとしよう。サマソニ20周年初日のヘッドライナーが彼らで確実に正解だった。

というわけで僕のサマソニ初日は最高の余韻に浸りながら幕を閉じた。帰りに再びメイデンと合流したとき(ラウドネスを最後まで観てB'zは後半から観ていたらしい)、こういったフェスの空気に慣れていない彼は疲弊しきっていた。

2日目(9月6日公開)に続く。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。