石野卓球、戸川純、人間椅子が繰り広げる怪奇のステージ……日野日出志の画業55周年記念イベント『日野フェス』レポート!

特集・インタビュー

[2022/10/3 17:00]

唯一無二のホラー漫画家・日野日出志の画業55周年記念イベントをレポート!

ホラー漫画家・日野日出志の画業55周年を記念したライブイベント『日野フェス』が、9月27日に東京・渋谷Spotify O-EASTで開催されました。1967年にデビューした日野は、怪奇と叙情が同居した作風で唯一無二の世界観を確立し、長年にわたってカリスマ的な人気を誇っています。同イベントの奇画(企画)は日野プロダクションの寺井広樹氏が担当し、日野のファンであるDJで電気グルーヴの石野卓球、女優・歌手の戸川純、3ピースロックバンド人間椅子の豪華な3組が出演。個性豊かすぎる彼・彼女らが一体どんなステージを繰り広げるのかが気になりすぎた『耳マン』編集部は、現場に潜入。2022年のフェスでもっとも熱い(!?)イベントの模様をレポートします! (※ライブ写真掲載は人間椅子のみとなりますが、文章で会場のバイブスを味わっていただけたら幸いです)♡

出演キャンセルになった日野本人からのコメント

満員の客席のなか、MCを務めるミュージカル女優で“ダジャレタレント”のかとう唯が、日野のイラストが描かれたTシャツをキュートに着こなして登場。彼女は諸事情で出演がキャンセルになった日野のコメントを読み上げます。「みなさん、本日は私の画業55周年にお集まりいただきましてありがとうございます。諸事情で参加できず、お詫びの言葉もありません。5年後の60周年には、次回こそ『日野フェス』のステージに立ちたいと思います。みなさん今日は楽しんでください!」といった日野のコメントに盛大な拍手が巻き起こったのち、かとうが「日野先生の画業55周年ということなので、ゴー!ゴー!とイベントを盛り上げていきたいと思います!」と高らかに宣言し、意外とさわやかに(!?)イベントがスタート。

“不気味”な選曲で独特の世界へ誘う人間椅子

トップバッターは人間椅子。『比岸御詠歌』をSEに登場し、1曲目『無情のスキャット』で和嶋慎治(ギター/ボーカル)の切ないリフが響き渡ると、それに応えるように鈴木研一(ベース/ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム/ボーカル)の演奏が加わり、ヘヴィなサウンドで独特の世界へ誘います。立て続けに『芳一受難』で盛り上げると、鈴木が「今日はこのあとも不気味な曲が続きますので、楽しんで帰ってください」と素敵な予告をします。

人間椅子。左から鈴木研一(ベース/ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム/ボーカル)、和嶋慎治(ギター/ボーカル)

江戸川乱歩の小説からとったバンド名から始まり、怪奇小説や幻想小説を楽曲のモチーフにすることが多い彼ら。漫画で楽曲のモチーフになっているのは唯一、日野日出志の作品だといいます。そんな日野作品をモチーフにした、プログレッシブで摩訶不思議な楽曲『幻色の孤島』が披露されると、レアな選曲にオーディエンスも驚きを隠せない様子。緊張感のある演奏が終わると、大の日野ファンであるナカジマが「みんな楽しんでるか〜! 次は俺が歌うコーナーがやって来たぜ!」と熱く叫び、日野の漫画からタイトルをとった楽曲『地獄小僧』でパワフルかつエネルギッシュなドラム&ボーカルを繰り出します。和嶋と鈴木のコーラスワークも光る同曲で盛り上げたのち、『膿物語』『人面瘡』と、激しいロックナンバーを連発。ラストには定番曲の『針の山』を披露し、大興奮のステージを終えました。

人間椅子 セットリスト

SE.『比岸御詠歌』
1.『無情のスキャット』
2.『芳一受難』
3.『幻色の孤島』
4.『地獄小僧』
5.『膿物語』
6.『人面瘡』
7.『針の山』

会場をダンスフロアに変えた石野卓球による圧巻のプレイ

2番手の石野卓球がハイテンションで登場すると、ヘヴィな空気がガラリと変わり、たちまちダンスフロアに。巧みなビートに乗せられてオーディエンスが気持ち良さそうに踊るなか、卓球は音に合わせて会場をリールで釣り上げるアクションや、スイミングをするアクションをしたりと、アッパーに盛り上げます。リップス『ファンキータウン』や、マーク・ナイト&アーマンド・ヴァン・ヘルデン『The Music Began to Play』、ベン・キム『Somebody To Love』などのキラーチューンを盛り込んで、フロアを最大限に沸かせたまま、彼はムーンウォーク(!?)でステージを後にします。キレのある圧巻のプレイ&パフォーマンスでした!!

人間椅子・ナカジマノブの日野日出志愛が炸裂♡

ライブの合間には、かとう&ナカジマによる、日野にまつわるトークステージが展開されました。日野を愛してやまないナカジマは、「日野先生のことだったらなんでも答えられる。今日はみんなにお見せできるのが嬉しくてたまらない!」と言いながら、持参した私物の“日野日出志お宝グッズ”を披露。絵本『ようかい でるでるばあ!!』の最終の色校正紙、漫画『恐怖のモンスター』カバー細部の原画、日野が描いたナカジマの似顔絵など貴重なラインナップを紹介しました。これらのレアグッズは、街でナカジマに会ったときに「抱いて!」の合言葉を言ったら、じっくりと見せてもらえるとのことです♡

また、ナカジマは「30年来のファンである日野先生と初めて対面したとき、膝をついて泣き崩れたら、『落ち着いて』と言われた(後日、先生はその出来事をまったく覚えていなかった)」「先生に『抱いてください』と言ったら、真顔で『それだけは勘弁』と言われた」「(前述の)似顔絵を描いてもらったとき、先生が目から最初に描き始めたので、なぜかを聞いたら『ナカジマくんは、目が狂ってるから!』と言われた」「先生がパッケージイラストを担当したお菓子『まずい棒』のキャラクター“スーパーまずえもん”のモデルになった」「先生とお酒を飲んだ際ふたりきりになった瞬間があって、初恋の話を聞いた」「先生の作品は1作につき3冊(枕元に置く用、人に貸す用、保管用)を購入する」など、数々のマル秘エピソードを展開。ナカジマのあまりのマニアックさに会場は爆笑の渦に包まれ、非常に和やかなムードになりました。

バラエティ豊かな楽曲&色とりどりの歌声で圧倒する戸川純

ラストは戸川純のステージ。メンバーは戸川純(ボーカル)、ヤマジカズヒデ(ギター)、中原信雄(ベース)、矢壁アツノブ(ドラム)、山口慎一(キーボード)、ライオン・メリイ(キーボード)の6人。SEはなく、『ヴィールス』『バーバラ・セクサロイド』を続けて演奏すると、会場は電流が走ったようにヒートアップ! 2曲を終えると、戸川は子どもの頃に日野の『地獄の子守唄』を立ち読み(!)したとき、家に帰るまで怖くて仕方なかったという思い出のエピソードを披露しました。さらに、彼女の少女のような甘い声が印象的なナンバー『シャルロット・セクサロイドの憂鬱』や、『諦念プシガンガ』『蛹化の女』といった人気曲で伸びのある歌声を響かせ、会場全体を圧倒します。一体感のある演奏が映える『赤い戦車』では、力強く拳を突き上げるファンの姿も印象的でした。続いて戸川曰く「日野フェスにすごく似合ってるんじゃないかなって曲」という『肉屋のように』で、重厚感のあるおどろおどろしいサウンドを鳴らし、ラストの『電車でGO!』でオーディエンスのボルテージは最高潮に。鳴り止まない拍手のなか、アンコールでは『蛹化の女』をパンキッシュにアレンジした『パンク蛹化の女』を披露! 戸川のすべてを振り絞るように歌う姿は生命力にあふれ、観るものの心を掴んで離さかったことでしょう。

戸川純 セットリスト

1.『ヴィールス』
2.『バーバラ・セクサロイド』
3.『シャルロット・セクサロイドの憂鬱』
4.『諦念プシガンガ』
5.『蛹化の女』
6.『肉屋のように』
7.『電車でGO!』
アンコール 『パンク蛹化の女』

三者三様のステージがいっぺんに観られたことはとっても怪奇な出来事で、日野日出志作品の読後感にも似た強烈さを感じる一夜となりました。また5年後に、画業60周年記念イベントが開催され、ご本人が登場されることを心待ちにしたいと思います!

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耳マン編集部