『BRADIOのファンキーハンター』【日本屈指の振付師&ディスコフリーク・パパイヤ鈴木編:第6回】
人気上昇中の若手ファンキーロックバンドBRADIOが、より“Funky!!”なバンドを目指すべくファンキーなヒト・コト・モノに出会いに行く連載!
パパイヤ鈴木さんに会いたい!
今回の『BRADIOのファンキーハンター』はついに日本人編だ。“ファンキーパーティーピーポー”を掲げるBRADIOがまず会っておかないといけないのは……ファンキー&ソウルフルな出で立ち、そして多彩な振付&ダンスで活躍するパパイヤ鈴木だろう! パパイヤ鈴木と言えばソウル/ディスコミュージックに造詣が深いことでも知られ、BRADIOの真行寺貴秋(ボーカル)は同氏が推薦するダンスミュージックを漁って研究してきたそう。ということで今回はパパイヤ鈴木と真行寺の対談をお届け! 真行寺の人生を変えた“ファンキー講座”となったようだ。
ダンスは洋服と一緒で“オーダーメイド”
パパイヤ鈴木(以下、パ):僕、昭和41年生まれで今年50歳になったんですけど、同い年のミュージシャンって濃いやつが多くて。トータス(松本)とか田島貴男とかスガシカオとか……濃いんですよ。で、BRADIOの音楽を聴いたら、これは久しぶりに濃いなと。
真行寺貴秋(以下、真):マジっすか!
パ:うん。味、濃いなって(笑)。
真:嬉しいです! 最近のバンドのなかでは僕らみたいな土臭いバンドって珍しいみたいで。そこを逆手に取ってやろうっていう気持ちもあります。
パ:メンバーみんな曲作るの?
真:僕らはセッションしながら作ってます。
パ:バンドってそういうところがいいですよね。
真:パパイヤさんはどういう風に振付をするんです?
パ:デスクワーク(笑)。会議から始まるの。どういう曲を使おうかとか会議で話し合って。それでスタジオに入ったときには8割くらいは終わってる感じ。
真:どんなところを心がけて作っていくんですか?
パ:ダンスって洋服と一緒でオーダーメイドだと思ってるんですよ。その人にいちばん似合うものを考える。その振付が僕には似合わなくても、その人に似合っていればまったく問題ないんです。ときどき僕も一緒に踊るようなケースもあるから、そういうときは自分にも合うように考え直さないといけない。そういうものなんですよ。
真:オーダーメイド……。いい話、聞いちゃったなぁ。以前、パパイヤさんが「ダンスって恥ずかしい」って言ってるインタビューを読んだんですけど、それって本当ですか?
パ:ははは! ダンスってね、“俺かっこいいだろ”っていう前提でやらないといけないから……。
真:たしかに。
パ:あと、音楽は鼻唄でなんとなくメロディとか歌詞とかを考えたりもできるけど、ダンサーって動き出した瞬間からもう踊らないといけない。すぐに結果を出さないといけないんですよね。その恥ずかしさがもう。
真:今でも?
パ:ありますね。あと“ちょっと踊ってもらえますか?”みたいなのも恥ずかしい。“え!? どうやって登場してくればいいの?”みたいなね。そういうのってミュージシャンはないですか?
真:めっちゃわかります。僕もリハーサルとかって恥ずかしいです。本番じゃないとちゃんとできなかったり。
パ:やっぱりありますよね(笑)。芸人さんとかの“ちょっとネタやってください”も大変だろうなぁ。
ピッチがズレてるけど人間性でどうにかしちゃってるみたいな音楽が好き
真:そうですよね(笑)。でもいまだにダンスが恥ずかしいっていうのも驚きました。ぜひ聞きたいことがあるんですけど、パパイヤさんが今オススメするファンクナンバーってありますか?
パ:MANDRILLっていうバンドの『ディスコリプソー』っていう曲がいいんじゃないかな。ラテンソウルっていう感じの曲。親父がラテンミュージシャンだったから僕も体にラテンが入ってるみたいで、こういう曲が好きなんですよね。(曲を流す)
真:うぉー! ヤバイ。
パ:古くて野生的な音ですよね。食ってるものが違うんじゃないかなっていうくらいの(笑)。こういう風にちょっとピッチがズレてるけど人間性でどうにかしちゃってるみたいな、ボロボロなんだけどみんなで「ウェーイ!!」って演奏して音源にしちゃったみたいな、こういう泥臭い音楽好きだぁ。ダンスももともと神々に向けたもので宗教的な意味があるんですけどね、この人たちの音楽はそういう雰囲気も感じるんだよなぁ。
真:ご本人からオススメを教えてもらえて嬉しいです! 昔、パパイヤさんが本でオススメしてた曲を探して聴いたりしてたので。
パ:ははは! 僕、昔はマニピュレーターをやってたんだけど、これはそのときに一緒にお仕事をしてたS-KENさんに教えてもらった曲なんですよね。初めて聴いたときもかっこいいって思ったけど、今も変わらないですね。かっこいい。
真:なかなかこういう話が聞ける人がいないので嬉しいです。
パ:あ!レタスってバンド知ってる? レタスもめちゃめちゃかっこいいよ。(曲を流す)
真:これも……ヤバい。
パ:ちょっと未来的な音でカッコいいよね。
真:かなり好きですねぇ。
パ:こういうのが美容院でかかってたらアフロもいい感じに仕上がりそうだよね(笑)。“今日は(パーマの)かかりがいいな!”みたいな。
真:(笑)。ちょうどアフロについての話も聞きたいと思ってて!
パ:僕はもう諦めた髪型だから(笑)。でもその髪型、憧れるなぁ。
真:僕も本場の人のかっこよさに憧れて、それだけの理由でやってる感じではあるんですけど。
パ:すごくいいと思いますよ。
真:やっぱり歌をうたうのが恥ずかしいときもあるんですけど、この髪型からパワーをもらってるっていうか……そういうのが降りてくる髪型なのかなと思ってるんです。
アフロの揺れを見せびらかすダンスの流行
パ:ちなみにアフロが許されたのって1970年代ですよね。だから1970年代には頭を揺らす踊りが多いんですよ。頭をゆっさゆっさして“俺のアフロすげえだろ?”って見せびらかすみたいな。
真:へぇ……!
パ:ダンスって意外と“形”から生まれてきてるんですよね。“この髪型だからこの踊り”とか“この服だから”とか。
真:まったく知りませんでした。
パ:ダンスにも“学科”みたいなところがあってね、ダンサーがダボダボの服を着てる理由だったり、パンツの片足をめくってる理由だったり、そういう部分を勉強してないと踊りに深みが出ないんですよね。それは僕が師匠に言われてたことでもあるんだけど。
真:ちなみに今着ているのは新しい衣装なんですけど、これにはどんな踊りが合いますか?
パ:1970年代っぽいかな。その時代だとやっぱりウォーターゲート。当時、ウォーターゲート事件(1972年にアメリカで起きた政治スキャンダル)っていうのがあって、みんなが逃げ惑う様子を表現してるダンスなんですよ。
真:教えてもらってもいいですか!?
パ:もちろん!
パ:アフロを揺らすようにやるといいと思いますよ。
真:うわぁ。ムズい……。
パ:ソウルのステップって全部名前がついててね。ラコステっていうワニっぽいステップとか、ペンギンだったり、ホースだったり、いろいろ名前が付いてるんですよ。ホースはモーニング娘。が『恋愛レボリューション21』でやってたやつ。
真:うおお! あれってホースっていうんですか!?
パ:そうそう。
真:今日、めちゃめちゃ収穫あるわぁ。
パ:バンドだったら、アースの人たちがフリークっていう動きをやってるよね。肩を揺らすやつ。
真:ラリー・グラハムもやってたやつだ!
パ:そうそう!
真:僕らもライブで何回か取り入れてみたんですけど雰囲気が出なくて……。結局ツーステップになったり。
ミュージシャンは音楽がいちばん、動きは二の次でいい
パ:日本人のアーティストのよくないところがね、全部やろうとしちゃうところ。外国人って“ここだけ!”って感じでピンポイントに踊ったりするから、イメージがそこに集中して印象に残るんですよ。でも日本人って、“AメロでこれをやったらBはどうしよう?”“サビは!?”ってすぐになっちゃう。みんな“穴埋め作業”になっちゃうんですよね。僕の考えでは、ミュージシャンは音楽をいちばんに考えて、動きは二の次でいいと思う。それでここ一番で動きを合わすのがかっこいいと思います。
真:なるほど。
パ:振付師なのにこんなこと言うのもなんですけど、極論、踊りはなくてもいい。音楽がいちばんだもん。
真:本当に勉強になります。ありがとうございます! 最後に聞きたいんですけど、パパイヤさんとってファンキーとは何ですか?
パ:ファンキーは照れ隠しかな。ダンスは自分の気持ちを相手に伝えるためのコミュニケーションツールっていつも言ってるんですけど、それを直球でやるのは恥ずかしいからちょっとファンキーにしちゃう。ステージに立つときも恥ずかしいからちょっとシャツの襟を出しちゃうみたいな(笑)。
真:ちょっとわかる気がします! 僕らもファンキーってよく言っているんですけど、ハローみたいな感じで浸透していったらいいなと思ってるんです。
パ:いいね! 「今日もファンキー?」みたいなね。
真:そうですそうです!
パ:真行寺くん、今日はファンキーですか?
真:もちろん、ファンキーです!
パ:最高ですね! 俺もファンキーです!
パパイヤ鈴木プロフィール
1966年、東京都出身。ダンサー、振付師、タレント、俳優として活躍。振付師の活動と平行して結成したダンスグループ“パパイヤ鈴木とおやじダンサーズ”が話題を呼び、メディアにも多数登場。現在もドラマや映画、バラエティへの出演を続けながら、振付師として多忙な日々を送る。ダンサーとして活躍する以前はマニピュレーターとしてミュージックシーンに携わり、コンピレーションアルバムの監修も手が掛けるダンスミュージッククマニアとしても知られている。