給料ゼロ! 貯金を崩して生活したアイドル時代~元アイドルインタビュー第2回~

連載・コラム

[2016/5/13 17:00]

毎日のように流れてくる、知らないアイドルの卒業発表ツイート。アイドルを辞めた女の子たちは今どこで何をしているんだろう?

山崎萌子さんは22歳。華やかな雰囲気は、人目に晒されることに慣れているからだろう。役者として舞台に出演したり、ラジオ番組のパーソナリティを務めたり、また他の舞台の裏方を手伝うなどして、立派に芸能の世界だけで生計を立てている。彼女は昨夏の3ヵ月間、アイドルグループの研究生として活動していた。

『給料ゼロのアイドル生活』

山崎萌子さん

演劇一筋の山崎さんがアイドル活動を始めたのは、当時所属していた事務所のスタッフに勧められたからだった。

「舞台だけじゃなくてドラマとか映画とか映像の方もやってみたいなと思っていたんです。そうしたらスタッフの人に、まず名前が売れなきゃいけないと言われて。『グラビアかアイドルだったら、アイドルの方が向いていると思うから、名前を売るためにまずアイドルやってみない?』と誘われたんです」

それでもアイドル生活は想像以上に厳しいものだった。まずはグループの“研究生”という立場から活動をスタートさせたものの、まだ正規メンバーではないために給料はゼロ。貯金を崩してなんとかしのいだ。

「みんな辞める理由が金銭的なものでした。私は貯金があったので生活できていたんですけど、これがずっと続くときついなと……。高校生のメンバーは千葉から都内に通っている子も多かったんで交通費が大変そうでした。それに朝早いライブだと始発でも間に合わないからホテルをとったりしていて、これ以上親に負担かけられないって悩んでいました」

加入から1ヵ月後に正規メンバーに昇格するための人気投票を行う予定だったけれど、結局その間に辞めるメンバーが出て投票は延期。その後も脱退が続き、結局投票を1回もやらないまま研究生チーム自体が解散してしまった。

『ホームレスに応援された路上ライブ』

活動の中で印象深かったイベントのひとつが、加入から1ヵ月ほどで行ったストリートライブ企画だ。告知なしで、駅前で2時間のライブを敢行した。

「本当にきつかったし、泣きそうだった!(笑) 超恥ずかしかったけど、こんな顔しちゃダメだなと思って笑顔で。駅前にホームレスの人がいて、お客さんがいないなか、ずっと手をこう(拳を振り上げる動作)してくれてありがたかったです(笑)。まぁキツすぎたせいでメンバー同士仲が深まったところもあるし、終わってみれば良い経験ですよね」

週1のレッスンと週3のライブに演劇の練習も加わって、当時1週間はあっという間だった。懐も相変わらず寂しく、あらゆる意味でハードな日々のなかで、本当にファンが支えになっていた。もちろんメンバーの金銭面など明かすはずもないけれど、なにか様子がおかしいというのは伝わるものらしい。

「『今日元気ないね』って気遣われたり、『いつも元気もらってるよ』とか言ってもらえると、めっちゃありがとうっていう気持ちになります。ファンの方がいたから3ヵ月がんばれました」

アイドル卒業後も、自分の出演する舞台を観劇しにきてくれるファンがいることがうれしかった。

「応援してくれる人がいないと、芸能活動やってないかもっていうくらい支えられています。嘘っぽく聞こえるかもしれないですけど、私、本当にファンの人が気持ち悪いと思ったことないんですよ。だって世の中には何千人って顔が良い子がいるんですよ? そんななかで私のことを選んでくれて、本当にありがとうございますっていう気持ちです」

『卒業したグループに「良い終わり方をしてほしかった」』

「容姿を売り物にする仕事には興味がもてなくて、もともとアイドルはやりたくないと思っていた」と告白する山崎さん。でもアイドルをまたやらないかと誘われたらどうする?

「うーん……。とりあえず金銭的な問題がなければ(笑)。お誘いがあれば全然考えますね。役者として舞台に立つことはしていましたけど、それでもアイドルのステージは新鮮でした。演劇は役になりきらなきゃいけないけど、アイドルだと素のままでステージに立てるのが楽しかったです。それに芝居だと照明でお客さんの顔が全然見えないこともあるんですよ。でもアイドルのライブだとひとりひとりの顔が見えるから、全員と目を合わせることだってできるんです!」

ところで山崎さんの所属していたグループは、今年に入ってから解散してしまった。

「舞台を見にきてくれたファンの人とちょっと話すんですけど、やっぱりダメかもしれないっていうのはお客さんもわかるものなんですね。『どんどん人数が減ってくし、もう……』っていうことを言われてしまって」

自分が離れたグループが解散するかもしれないというのは、一体どういう気持ちだったんだろう?

「現実になってほしくないとは思いました。Zeppでワンマンするって話もちょっと聞いてたんですけど、結局やらなかったし……。やっぱり良い終わり方を選んでほしいですよね。がっかりするじゃないですか。結局だめだったって」

どんな苦労話でもにこやかに語っていた山崎さんだが、このときばかりは悔しげな表情をのぞかせたのだった。


★山崎萌子さんもパーソナリティを務めるラジオ番組「かっきーゆっきーもえぴーの休日はこれからじお!」は、FMうらやすにて毎週日曜21時30分~22時放送。

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[取材・文 / アイドルライター原田イチボ@HEW]