「鬼のジムと訓」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?
今年こそは花粉症デビューを果たしてしまうのではないか、そんな恐怖の毎日を過ごしていますSNAIL RAMP タケムラです。『炎上くらいしてみたい』第3回は「訓」について。
若いキッズは「くん?」となるんですかね。「訓」とは「教え」や「言い聞かせ、わからせる」といった意味があり、あいだみつをのお堅い版と言ったら「ちげぇよ!」と、みつをが怒りに任せて筆を全力でへし折るレベル感ですが、まあそんなもんです。
キックボクサーの現役時代に俺が出稽古で大変お世話になった「渡邉ジム」。そこの会長である渡邉会長は俺の大師匠でもあるんだけど、会長はとても厳しくて有名でさ。71歳になった今でもミットを持ち、現役キックボクサーたちをシゴく「鬼の渡邉ジム」と言われる程なんだ。
その渡邉ジムには会長自らが創案した「訓」が掲げてあり、それを押し付けられることは決してないものの、そこに通う者たちは事あるごとにそれを読み、心に刻み込んでいくわけです。読んでその場で響く言葉もあれば、時が経ち状況が変わって響き始める言葉もある。どう感じるかは人それぞれだが、いずれにせよ大師匠・渡邉会長の人生で培われてきた言葉なのです。
ではその「訓」を見てみましょう。
読んでいただけたでしょうか。これを読み、どんな感銘を受けたかは人それぞれだと思います。俺がこれを初めて読んだときの感想……
↓
「長い」
いや、だってさ、こういうのって普通10項目とかで終わんじゃん! 短いのなんて3カ条とかあるしさ。それがさ、渡邉ジムの訓は18項目。しかもここまで多くしたなら、なぜいっそのこと20項目にしなかったのか。
とはいえ、やはりガッチリと響く言葉もあるわけです。誰1人として欲していないのは原稿を書いている今の時点で重々承知しているが、あえて叫ぼう。
「タケムラの好きな訓 TOP3~!」
まずは第3位
「初々しいベテランのいるジムは強い」
お次は第2位
「一度位死ぬ気でやってみろ」
そして栄光の第1位!
「教える事は体を張ることだ」
もうね、これは渡邉会長がまさにそうなんですよ。70歳過ぎた人が現役格闘技選手のミットを持つってだけでもどエラいことなのに、時には自分の身体を直接打たせるんだぜ?ボディにパンチを入れさせ、ローキックを脚に蹴らせるんだぜ? そうやって文字通り身を削って教えてくれるわけです。だからこそ選手達は苦しいときも自分を奮いたたせ、その恩に報いようがんばるわけ。
ただですね、素晴らしいと思えるそんな訓にも「あれ?」と思う項目もある。気づいている人もいるだろう。そう、
「語尾のハッキリしない奴にロクな奴はいない」
だ。
それまで13項目の含蓄ある言葉が並び、それが読む人の迷いを打ち消し、背中をドンッと押してくれる。「次はなんだろう」と思ったところへ、これ。「語尾のハッキリしない奴にロクな奴はいない」。なんか急に決めつけにきてます。なんか急に小さな世界の話しになりました。というかですね、渡邉会長自身とても個性的な喋り方をするんですよ。会長との会話に慣れていない人だと、あまり聞き取れない位の喋り方。「語尾どころか、頭っからハッキリしてないです……」そう思った練習生もいてもおかしくはない。
俺もいつかジムを開くときがくるかもしれない。そうなった時はやはり「訓」を示そう。大師匠・渡邉会長の「訓」もいいが、ここはやはりオリジナル。ジムを開く予定はまるでない。しかし今コラムの最後に「俺の訓」だけはまず掲げておこう。
では諸君、また次号で。
1.満足した人間に成長はない
1.スポーツは身体でやるな、頭でやれ
1.今を生きれば未来が拓く
1.鏡に向かうシャドーボクシングで、髪型直すなフォームを直せ
1.試合前の減量でもないのにウインドブレーカーのフードを被ってストイック気取るな
1.トマトジュースは禁止(匂いが苦手)
1.流行りのギャグをやって許されるのは10歳まで
1.貧弱な入れ墨をこれ見よがしにされても
1.W浅野は永遠
1.アイスバケツチャレンジは今誰のとこですか?
【著者紹介】
タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。