「“男の短パン、許せますか?”っていう記事……」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載! この人……ホントにキックボクシングの元日本チャンピオン!?
すっかり暖かくなり、そろそろ短パンを履き出した男性諸君もいると思う。俺は例年5月頭ころから短パン化しだすのが通例だが、ここ5、6年短パン開始の時期とともに行事のようにネット上で出回る記事をご存知だろうか。
そう、
「成人男性の短パン、女子の7割が嫌い」特集だ。
その書き出しはこう。
「気温も上がり、世の男性たちの短パン姿もチラホラと目にするようなった今日この頃。当の本人たちは意気揚々と短パンを履いているが、世の女性たちはその姿に嫌悪感を抱いているのをご存知だろうか?」
どの記事も同じライターが書いてんじゃねえかと思うほど、大抵こんなニュアンスで始まるこの記事。そして次に示されるのは、世の女性たちに「成人男性の短パン姿は許せますか?」という質問をぶつけた結果のグラフ。そのほとんどは円グラフだが、たまに棒グラフを使ってちょっと見づらくしてしまっているライターさんも。
しかも折れ線グラフを使って「成人男性の短パン嫌いの女性は昔からこんなにいた!」みたいに示しながらここ10年くらいの統計推移を表し、「オメー、10年間もそんな統計を追い続けてるわきゃねーだろ」と捏造を笑われるライターもいて、逆に「成人男性の短パン嫌い業界」のひんしゅくを買うパターンもある。
で、その後に「成人男性の短パン姿が許せない理由」の列挙。これもお決まりの回答パターンがある。
1.「すね毛が見苦しい」(24歳OL りさ)
1位の理由は絶対にコレ。「シュウマイの上にはグリーンピースがのっている中華屋のチャーハンの上には、やはりグリーンピースがのってます」と同じくらいのレベルだし、脱毛業界と癒着してんじゃねーか?と疑りたくなるほど。
2.「あんたの足なんか見たくない」(33歳歯科助手 まい)
俺もあなたがマスク外した顔は見たくないですよ。
3.「勝俣か!」(19歳短大生 あおい)
これくらいツッコんでいただければ悪い気はしない。
「許せない理由」の配分としてはこんなところであろうか。さまざまな理由があって結構。世の女性たちが、俺たち成人男性の短パン姿をどんなに罵しろうと一向に構わない。しかし、だ。実のところは「30代半ば~40代のむさ苦しい男性ライターが短パン姿で1本3,000円ほどの原稿料をもらい書いている」、これが一番の問題だ。
短パン派の俺たちと同族である男性ライターが「24歳OL りさ」になりきって書く。このおどろおどろしさといったら、どんなイメージプレイよりファンタスティックだ。
初めてこの手の記事に接したときは「へ? そうなの!?」と受け止めてしまったし、短パン嫌い派の意見に「40代の男が膝上の短パンとかマジあり得ない!(28歳 フリーター)」を見つけたときは「完全に俺のことじゃねーか……」と思ったし「早く就職しろ」とも思った。
しかし、ここ2、3年ほどで各サイトがこぞってこの話題を取り上げ、しかも5月の初夏、7月の梅雨明けシーズンの年2回体制でアップされるようになってからというもの、「皆さん、ネタに困ってるんだね……」と哀れみすら感じるようになってしまった。
今後も出てくるであろう「成人男性の短パン嫌い」特集、今年は豊漁だろうか。どんなアメイジングな理由で俺たちの短パン姿をディスってくれるのか期待しつつ、ネットライター皆さんの生活向上を願いたい。
【著者紹介】
タケムラアキラ(竹村哲)●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。