「名古屋の名門・ホテル長楽その3〜SNAIL RAMPの作り方・24」タケムラ アキラ『炎上くらいしてみたい』
寝ようと思って敷布団の上に横になるじゃん? 足元に三つ折りに畳まれている掛け布団の上端を掴んで体に掛けるじゃん? すると膝から下が露出すんだよ。季節は冬。普通に寒いから。つか、なんで大人5人で予約してんのに幼児用布団が1組混じってんだよ。
ちなみにあと1組、どうがんばっても足首が出てしまう布団もあった。完全に児童用だ。大人用3組に子供用2組って、なんで布団がファミリー仕様なんだよ。「バンドはファミリーだ」なんて言ったのはライブ中の勢いだけで、「俺たちはファミリーだ」と言った吉本興業の岡本社長と一緒で、その言葉に特に意味はなかったんだ。ちょっとそれっぽい、カッコいいことを言ってみたかっただけなんだ。マジで勘弁してください。
そしてライブ後、俺たちは順番で欲情、じゃない浴場へ向かった。とてもじゃないが長楽は欲情できるようなホテルではない。浴場とは言っても、家庭風呂をワンサイズ大きくしたような絶妙な広さだった。そしてシャンプーやボディソープといった類のものはなく、「20人くらいが使ったのかな」と思しき使いかけの石鹸が1個、無造作に置かれていた。「あの石鹸を使うくらいなら、体なんか洗わない」と決めた俺は、シャワーだけをサッと浴び浴場を出た。
そこで「そういえば歯ブラシは浴場前の洗面所にあるって、おばちゃん言ってたな」と思い出し、俺は周囲を見渡した。あった! 歯ブラシは小学生の絵の具筆を洗う内部が3つに仕切られた、黄色の小型バケツに無造作に突っ込んであった。「何でこんなバケツに……」とは思ったが、その歯ブラシもまたイカしてた。通常の歯ブラシはブラシ部分が8ミリ×20ミリくらいありそうなモンだが、長楽のそれは2ミリ×40ミリほどある「何を磨くブラシ?」な形状をしているばかりか、個体差ありすぎだろ!ってくらい歯ブラシによってブラシ部分の大きさがマチマチなものばかりであった。また、そのブラシは腰がまるでなく、まるで磨けなかったことは此処に記しておきたい。
名古屋の名門・ホテル長楽は、どうやら現在も営業中のようなのでバンドマンであれば1回は泊まってみることを本気でオススメしたい。ここにはエンターテイメントがある。