「“夏フェスで受けた人種差別”の反応を受けて」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2019/8/30 18:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


件のコラム、本当にたくさんの人に読んでいただけたようでビックリしています。ありがとうございます。しかも思ったよりみなさんキチンと読んでくれ、いろいろなことを考えてくれたように思えます。そんななか、目にした反応がいくつかあったので、そこに触れておこうと思います。

まず「それ、差別じゃなくて待遇格差でしょ」論。

当時のSNAIL RAMPもそれなりに場数を踏み、さまざまな経験をしてきました。バンドの格により待遇の違いがあることは当然のように受け入れていますし、どんな状況が待遇格差であることかの判断はつきます。海外バンドには豪華なケータリング、うちらにはペットボトルのお茶のみのような場面も普通に経験しています。

例の1件についてはそういった状況になく「当初日本人OKだったはずが、急遽NG」となり、その理由が「“日本人とは食事エリアを別にしてくれ”と海外バンドのメンバーから言われた」から、そして「それは日本人に対する人種差別ってことですか?」との問いに、黙り込んだ担当者の反応。抗議をする俺に対し、傍にいた(普段から手厳しい)マネージャーも「あんたたちと待遇が違うのは当たり前でしょ」と俺を諌めることもしなかった。

これらを鑑みるに、あれはやはり人種差別的な発想から取られた「日本人立ち入り禁止」だったと認識しています。現に「日本人は」という人種括りでの、立ち入り禁止条件だったわけですから。

そして「どこのフェスだったんだ?」「人種差別的な発言をしたのは、誰なんだ?」という疑問。

「知りたい」という欲求を抱くことは至極もっともだと思うし、逆の立場であれば俺もそう思う。コラム作者が知り合いであるならば「言わないから教えて!」と絶対に秒でLINEしちゃう。

「どこのフェス? そんなフェスには二度と行かない」
「どのバンドだよ? そいつらの音楽は買わないし、もう絶対に聴かない」
「クレーム入れるから教えてほしい」

このような反応は多かった。あのときの俺の怒り、哀しみに共感してくれた人が多かったことには救われる思いです。しかし、俺があのコラムを書いた理由は関係者を糾弾したいからではありません。

「差別は絶対にダメだ」

この1点に尽きます。確かにあのとき海外アーティストの「人種差別」と思しき要求を受け入れてしまったフェス側の初動対応はマズかった。しかし、俺が抗議をした担当者は真摯に話を聞いてくれたし、実際にフェス側はその後「2階食事エリアへの日本人立ち入り禁止」を解きました。

フェス側へのクレームはそのときに俺が十二分にさせてもらいました。そしてフェス側も改めてくれた。これは「どういう形であれ人種差別はいけない」ことをフェス側がキチンと理解してくれた表れだと思っています。ですので、ずいぶんと昔に犯してしまった過ちを今またフェス側に問う必要はないと考えています。(次のページへ)