「スネイル、高速上で事故にあう〜SNAIL RAMPの作り方・31」タケムラ アキラ『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2019/12/26 11:30]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


1997年のSNAIL RAMPはシングル『FLAT FISH COMES!』をリリース、東名阪ツアーをやってから12月はアメリカのパンクバンドTEN FOOT POLEのジャパンツアーのサポートをした。これがまたキツいツアーで、日本全国行くのに8日間で7公演というムチャなスケジュールだった。

メンバー3人のみで回り、免許持ちは俺と石丸のみ。ライブをやって数時間の車移動、というのを数日繰り返していると疲労が溜まりすぎて車内では誰も喋らなくなる。非常に澱(よど)んだ空気感のなか、次のライブ地に向けて移動中の高速で、俺たちはついに事故にあった。事故といっても「遭った」のではなく「会った」のだが、本当にびっくりした。

それは少し山あいを走る高速道路、右カーブを抜けた箇所だった。運転していた俺の目に飛び込んできたのは、一番右端の車線にひっくり返った軽乗用車。ミイラのように無言だった俺たちも、突然のことに「えええ!?」と驚愕。あまりの光景に思わずスピード落としながらその横を通ったのだが、周囲にパトカーもいなければ救急車もいない。

「もしかして事故ったばかりなのか……?」

バックミラーで見ると、通りがかる車は皆スピードを落とすもののそのまま通り過ぎていく。

「これ、助けないとダメでしょ。110番して」

俺は慌てて路肩のスペースを探し、停車。機材車にあった発煙筒を持って、現場に戻った。事故車より随分手前で発煙筒を着火、あとから誰かが持ってきてくれた停車板はもう少し現場に近い箇所に置いた。

そして事故車に駆け寄ると空に向いた車輪がカラカラとまだ回っており、初めて見る光景は非日常のそれだった。人の気配はまるでなかったが、車内で何か音はしている。なんだ?と思い近寄ると車内ではB'zがかなりの音量でかかっていた。不謹慎ではあるが「シュールだな……」と思ったのをよく覚えている。

ひっくり返った車体はグチャッとしていたが、まだエンジンはかかっておりカーステも生きてるようだ。しかし人の気配はしないので「運転者はもう逃げたっぽいな」と思いながら車内を覗き込んだ瞬間、息が止まる感覚を覚えた。

「マジかよ! 人がいる!」(次ページへ)