「被害者となったライブハウス」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2020/3/13 17:00]

それを借金をして設営し、決して多くはない日々の売上からスタッフの人件費、機材メンテ代、家賃(これがまた高い)などを支払いながら、借金も毎月支払わなければならない。こんなリスクの高いビジネス、俺だったら絶対に手を出さない。

ハイリスク・ローリターン、これがライブハウスだ。

そこに加えて今はライブも軒並み中止、ドライにキャンセル料をバンドからバンバン取れればいいが、そこまでできないライブ経営者たちも多いはず。となるとですよ、借金は返せない、でも支払いは来るから重ねて借金はしちゃうみたいに雪ダルマ方式で負債が膨らみ、最後は……。

ごめん、自分で書いててなんか怖くなっちゃったよ。今回のイベント自粛、金銭的な一番の被害者って会場側だと思うんだよな。もちろんケースバイケースだし、ツアー中のアーティストや事務所もそれだけキャンセル数が多くなるからその被害額は深刻だけど、単発でのライブが中止になったバンドはその日だけの被害額で済む。でも会場側はそれが毎日に近い形で続くわけだから。

個人資本のハコは本当にヤバい。なので政府は、冗談抜きでまず彼らに経済支援の手を差し伸べるべきだ。ライブハウスだけじゃない。小劇場やレンタルスペースなど、類似形態のハコや業種はたくさんあるはず。突然の「イベント自粛要請」を戸惑いながら受け入れ、苦しみながらも真面目に自粛している彼らが自己破産、そして自死という最悪の結果に結びつかぬよう、援助の手を差し出してやってほしい。

コロナウイルスへの初期対応に失敗した政府が名誉を挽回したいならば、ここは惜しまずにお金を出す場面だ。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。