「アンジャッシュ渡部建さんのトイレ不倫」~タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2020/6/16 12:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


芸能界絡みで薬物使用とともに定期的に出てくるこの手の話題。今回はお笑いコンビ・アンジャッシュのひとりである渡部建さんの不倫だった。ベッキーさん言うところのセンテンススプリングがブッ放したこの不倫スキャンダルは、ワイドショーが喜んで飛びつくような内容だった。

もともとモデルとして絶大な人気を誇り、現在は女優という佐々木希さんを妻にもちながらも複数の女性と関係を重ね、その密会場所が「六本木ヒルズの多目的トイレ」だったという証言が表に出てしまい世間は沸き立つ。「SNAIL RAMPのホームは?」と問われれば「下北沢SHELTERです」と答えるがごとく、「渡部さんのホームは?」と問われれば「六本木ヒルズの多目的トイレです」とでも答えたくなるパターンだ。

ここ3ヵ月間ほど日本はコロナ・自粛・コロナ・自粛と、自分の収入そして生命に直結する、かつてなかったほどシビアで暗い話題に占められていたと言っていい状況であり、そこへブッ込まれたのが「超絶レベルの妻をもつ、爽やかイメージで順風満帆なイケてるお笑い芸人」のトイレ不倫報道。世間にとってまったく自分に関係のないエリアでの問題であり、自分の発言に1ミリも責任をもたず好き勝手に言える、コロナで鬱屈されていた自身のストレスを発散するのに格好の話題となり、世間は下衆なPARTY状態になった。

かくいう俺も「世間は」などどその様を呆れたような口ぶりをしているが、こんなコラムを書いている時点で確実にそのPARTYの末席にいる。そしてこのPARTY、そもそも「不倫はいけない」という社会規範があるので問題の主体において意見が分かれることもなかったが、枝葉部分においての問題・意見はそれぞれだった。

目についた実害は、渡部建さんの不倫相手と勘違いされた女性のSNSに突撃する輩が出現したことだろう。おそらく関係ないであろう女性に向かって、罵詈雑言をぶつける事態があちこちで発生した。不倫自体かなりプライベートな問題であるので、基本的には当事者間の問題であろうに、まったく無関係の人間がしゃしゃり出て当事者に対し一方的に喚き散らす。ああいった人たちは、近所の家庭で不倫があったときもそこに突撃していくのだろうか。そうでないなら、自分のなさったその行動をまず省みるべきだ。

<「夏フェスで受けた人種差別」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)>

個人的に気になった部分はと言えば、報道にあった不倫相手の女性の言葉「彼は私のことを“性のはけ口”くらいにしか思っていなかったんでしょうね」だろうか。このニュアンスは難しく、渡部建さんと当該女性の熱量のアンバランスさも関係してくるだろうし、報道側のさじ加減でいかようにも調整できるので、当該女性の真意がどこにあったのか正確なところはわからない。しかし穿った見方をすればそこには女性当人の被害意識も垣間見え、それは俺に「いや、不倫という観点に立てば被害者は妻である佐々木希さんであって、むしろあなたは加害者でしょう」と、ついイジワルな事を口走らせてしまうほどの驚きを与えた。

そして多目的トイレを正に多目的に使用してしまった点について、世間では「渡部が時間や金をケチッたんだろう」という意見が大勢だ。確かにそれもあるだろう。しかし実際のところは、単純に「トイレで致す」が渡部建さんのツボだったんじゃないだろうか。平たく言えば、それが彼のお気に入りのプレイだった。それが結果として「時間・経費の軽減」にも繋がってしまったような気もするのだ。

プレイ面で言えば、不倫相手の女性にしてみてもそうだ。「渡部建とする」よりも「佐々木希の男とする」意識が強かった人もいたかもしれない。単純な背徳感や佐々木希さんに対する個人的な優越感はもちろん、世の女性多くが憧れる佐々木希さんの旦那と自分が致したことが自分の価値の高さを証明し、それが世の女性たちに対して精神的なマウントとなる。そんな精神構造はなかっただろうか。

いろいろと書いてはきたが、いずれにしても一番悪いのは渡部建さんであるし、何より気の毒なのは佐々木希さんだ。浮気をされただけでも一大事なのに、お相手は複数、しかもその内容まで広く世間にバラ撒かれた。一朝一夕でなせることではないが、少しでも早く佐々木希さんに心の平静が戻るよう祈るばかりだ。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。