「ついにメジャー盤のCD制作へ~SNAIL RAMPの作り方・47」~タケムラ アキラ『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2021/2/8 12:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


1998年8月にリリースしたセカンドアルバム『Mr,GOOD MORNING』のツアーを終えた俺たちは次の仕事に取りかからねばならなかった。ライブと並んでの重要な活動である「新曲を作り、レコーディングする」作業。そう作品作りだ(当時の主流はCDでのリリース)。

バンドは相変わらず精力的に活動していたし、前へ進むモチベーションも高かった。しかし、この頃すでに俺はその作業に対しはネガティブな感情をもってもいた。平たく言えば「やりたくないなぁ」だ。

アルバム2枚とシングル1枚を作ったことによりそれまでに持っていた曲のアイデアの大部分を使ってしまったようで、新曲を書こうと思ってもまるで出てこなかった。というかこの作業に向き合おうにも常に身体が疲れていて、その身体では何もヤル気が起きなかった。

そしてこの辺のタイミングでついにメジャーレーベルとの契約が決まった。当初はセカンドアルバムをメジャーレーベルからリリースするつもりだったし、実際に数社から手が挙がったものの、提示された条件は各社微妙な内容。そこでセカンドアルバムはインディーでやり、そこである程度の結果を出してから再度レーベルを選ぶという過程の末での契約だった。

いわゆるメジャーデビューとしての作品制作だったため、これは絶対にコケられない制作でもあった。記憶が定かではないが、この頃のリハスタでの作業は週に2~3日、1回4時間くらいだっただろうか。

しかし、疲れ、イマイチ曲作りへのモチベーションも湧かなかったのは当時のメンバー米田や石丸も同じだったようで、まず3人がスタジオに揃うまでに1時間。そこから、作業に取りかかりたくないという意識がそうさせているダラダラとしたお喋りが始まり、そこでさらに1時間浪費。残り2時間になったところでようやく「……、じゃあやろうか……」と作業に取りかかるような始末だった。

無いアイデアを絞って俺が作った曲もスタジオで試してはみたが、どうもこうもならずで、「これはとりあえず寝かせるわ……」と自ら引っ込めたりもした。幸いにも米田が持ってきてくれてた曲もあったのでそちらをみんなでいじり、曲として完成させた。

SNAIL RAMPのスタンスとして「メジャーでのリリースとなっても、自分たちのサイクルは崩さない」という暗黙の了解があったため、次の作品は4曲入りのマキシシングルと勝手に決めていたし、それに対して事務所もレコード会社も何もお仕着せもしてこない、恵まれた環境であった。

内容も「1曲は既曲のライブバージョンでいいでしょ。1曲はFACTORY(※音楽番組)のオムニバスに入れたのがあるから、あと2曲作ればいいんだな」といった調子で、「売れる、売れない」というレベルではなく「こなす」感があったのは正直否めない。「絶対にコケられない制作」と先に書いたように気合はもちろん入っているものの、「なーんか面倒くせえな」みたいな気持ちとも背中合わせだったのだ。

とにかく2曲、これを作らねば俺たちの未来はない。無理やり自分にそう言い聞かせながら、足りない2曲を完成させた。米田が書いてきた曲をみんなで肉付けし、あーでもないこーでもないと色々と構成を変えつつ、ついにできた2曲。

ここから先は、完全に竹村個人の当時の感想をそのまま書く。

1曲は『OFF WITH YOUR HAT』。牧歌的なオールディーズを現代にリメイクしたような曲で、それまでのSNAIL RAMPにはなかった曲調でありながら「SNAIL RAMPっぽさ」を感じさせる良曲。素直に「いいじゃーん!」と思える曲だった。

そしてもう1曲。制作段階から「何かせわしないというか、忙しい曲だなぁ」と思いつつ、『OFF WITH YOUR HAT』の制作中に比べると「この曲、大丈夫かな……?」と半信半疑で作り続け、完成したあとも「良いのか良くないのかわからないけど、とりあえず完成したからこれでいいっしょ」と「ノルマを果たしたからこれでOK」的な気持ちだったのが、正直な所。

拍子抜けするかもしれないが、これがリリース後にはSNAIL RAMPの代名詞ともなった『MIND YOUR STEP!』。その曲ができた瞬間だった。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。