「キックボクシングジムがついにオープン!(前編)」~タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
プロキックボクシング選手を引退して早5年。このタイミングでようやく自分のキックボクシングジムをオープンさせた。東京都江戸川区は瑞江というエリア、都営新宿線の瑞江駅から徒歩1分のビル4Fにようやく自分のジムを持ったのだ。
29歳にしてド素人でキックのジムに入り、31歳でプロデビュー。文字どおりの死に物狂いでがんばり、43歳でNKBウェルター級王者になり44歳で引退。そのあとは何も考えずに現役時の所属ジムで指導をしていたが、4年~5年ほど前から「自分のジムを持ちたい」と思うようにもなり、物件はずうっと探していた。
2018年にはある駅前の優良物件に出会い、ここでやろうと決意。内装業者や看板業者の見積もりも終わり、あとは契約をするだけと安心していた。しかし契約の2日前になって「やっぱり貸さない」と物件の老オーナーから急に告げられたのだ。このときは本当に途方に暮れた。業者さんにも工事を頼んでしまっていたので、とにかく事情を話して平謝り。みなさんいい人で「そりゃ大変な目に遭っちゃったねぇ」と理解してくれたが、今思い返してもあの老オーナーには釈然としない気持ちが沸き起こる。
その後もいくつかいい物件はあり「借りたい」となるのだが、格闘技のジムはどうしても「うるさいんじゃない?」「振動が出たら迷惑だ」「近所で騒音問題になってしまう」などと敬遠されがち。そして実際にそういった理由で断られた物件がいくつもあった。「こんなんじゃジムをやるのに何年も掛かっちゃうじゃん!」と嘆いたが、実際に4年もかかってしまった。
また、同業者からの嫌がらせにあったこともあった。今や都内のジムは過密状態でもあり、ひとつの駅に複数の格闘技ジムが乱立しているのも珍しくはない。とはいえ最低限の距離感は保つし、あのときも最寄り駅が同じというわけではなかった。しかし先方にとっては「俺のエリアに入ってきやがって!」と感じたのだろう。「てめえケンカ売ってんのか」「お前のジムのすぐ向かいに別のジム出してやるからな」とこちらを脅しつつ、当該物件を取り扱う不動産業者と繋がっていたのもあり、こちらが物件を借りることができないようになってしまった。その執念たるやだが、とにかく今回のジム立ち上げに至るまでにはさまざまな紆余曲折があり、ようやく漕ぎつけたのが今回なのだ。
しかし物件を借り、工事が始まってからも一筋縄ではいかなかった。
リングを設置しようとしたら四方の隅に立てる鉄柱「コーナーポスト」が床の仕様の関係で立たないかもしれないと言われてしまった。しかし、1本50kgはあると思われる鉄製のコーナーポストは特注で、出来上がった状態でジムに届いてしまっている。「立たない」と言われても返品もできないし、「何とか設置できる手段を考えてください」と工事業者さんに頼んだが、手段を試行錯誤する数日間は中途半端のまま工事が止まることとなった。
やきもきする数日間を過ごしたあと、最終的には何とか立ったからよかったものの、あれが立たないまんまだったらと考えるとゾッとする。使い道のない50kg~60kgのぶっとい鉄柱が4本、家に転がっている状況ってのは誰にとっても悪夢以外の何物でもないだろう。
そのほかにも大小さまざまな問題が度重なりながらも、ようやく工事は終了。次はジムの床にマットを敷かなければいけないが、これがまた大変だったのだ。(つづく)