「うっせぇわを歌う子どもたちを叱ってはいけない」~タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2021/3/22 11:56]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


みなさんこんにちは。相も変わらずやってもないのにSNAIL RAMP、タケムラアキラです。

今のタイミングでこれに触れるのにちょっとした乗り遅れた感は否めませんが、大人気の『うっせぇわ』。今や小学生たちも「♪うっせぇうっせぇうっせぇわ♪」と歌い、お母さんたちに「やめなさい!」と一喝される、そんな場面もちょいちょい見るこの浸透ぶり。

お恥ずかしながら、俺も自分の小学校低学年の子どもたちから教わったくらいの後乗り組ではありますが、子どもたちの歌うそれではなく、YouTubeでのオリジナルを聴いたときはホント衝撃でした。

何よりまず歌い手であるAdoさんの、まさにエネルギーの塊といったあの歌。彼女の歌を「パワフル」と評するのは簡単だし、強く大きく歌うパートをパワフルに歌うことはそこそこ歌ってきた経験がある人には難しくないだろう。

しかしAdoさんの「自分が声を張りやすいキーより低く、かつ弱く歌いながらも躍動感を出す」ってのがあの高いレベルでできるボーカリストは、この日本にはどのくらいいるんだろうか。

この曲ではほかにも幾多のテクニックが次々と顔をのぞかせていくのだが、彼女がすごいのはテクニックをそれと感じさせず、流れのなかでスムーズに発揮していくところ。その様子はまるで都バスの運転手だ。

運転を職業とするドライバーも車種によりいろいろで、例えば大型のトレーラーを器用にコントロールしていく様は「すごいなぁ」とわかりやすい。しかし一転、都バスの運転手はどうだろうか。いつもの見慣れた街中を比較的ゆっくりのスピードで走り、信号や停留所のたびに停車する。彼らに対し「すごいなぁ」という人はほとんどいないのだが、実は彼らのスキルはめちゃくちゃ高度で緻密だ。

「こんなところ走るの?」っていう細い商店街を抜けたり曲がったり、車体とくっつようにしてすり抜けていく。自転車やバイク、そして車内に絶えず気を配りながら運賃の徴収まで行う。ほかにもさまざまなタスクをこなしながら「次の停留所に時間どおりに着く」ということをやってのける。

こうなるともう離れ業をやっているレベルなのだが、それは微塵にも感じさせない。それと同じことを『うっせぇわ』の歌い手Adoさんはやっている。普通の女子高生として生活を送りながら。

この『うっせぇわ』について「子どもが歌うのがイヤで、そのたびにやめさせている」という話もよく聞く。親にしてみたら「うっせぇ」というワードがどうも気に喰わないし、自分が言われているような気もして居心地が悪いのだろう。現にうちのかみさんも子どもたちが歌いだすと「やめなさい!」となることは多い。

しかし俺にしてみたら真逆で、どんどん歌うべきでありむしろ積極的に歌わせるべきだと思っている。このコラム前半でも述べたように、この歌は非常に高い歌唱レベルで成り立っている曲であり、それを歌う=マネをすることはその歌唱を何の違和感もなく自然に学んでいくことになる。「え! これを無料でいいんですか(涙)?」というくらいの素晴らしい教材なのだ。

そして、子どもたちがこの曲を聴く、歌うべきだと思う点はまだある。『うっせぇわ』をそうとる人は多くないのかもしれないが、この曲はPUNK ROCKでもあり、「自分が言いたいことを言ってもいいのだ」ということに子どもたちが初めて接するのがこの曲なのではなかろうか。我が子の将来を考えるとき、自分の気持ちを抑えつけて言えずに潰れてしまうより言ってもらいたいし、仮に言えなかったとしても、その気持ちを『うっせぇわ』のように何かの作品にぶつけていく素地ができるかもしれない。

『うっせぇわ』を聴き、歌うことにはプラスの要素しか感じないので、自分の子どもたちにはどんどん聴いて歌ってほしいと思っている俺です。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。