オリンピックにみるマネジメントの妙・のぶみ氏と小山田圭吾氏の違い~タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
現在このコラムは「スネイル、ダウンタウンに会いに行く」というHEY!×3出演時のことを書いているが、たまには時事ネタも話題にしたいので今回は一旦休憩。諸問題に揺れながら始まった東京オリンピックについて触れたい。
まさに七転八倒しながら、それでも東京オリンピックは開幕した。「やると決まったもんはやらなアカンやろ」となぜか関西弁でゴリ押しされているような錯覚に陥りながら迎える世界規模のスポーツ祭典。「やって大丈夫なのだろうか……」という漠然とした不安を持ちながら迎えるオリンピックは初めてという人も多いのではないだろうか。「やめたほうがいいんじゃないか?」とどこかで思いながらも「でも結局やるんだろうな」という諦めと呆れ、その空気感のまま迎えたのが今回のオリンピック、TOKYO2020という気がしている。
とにかく今回の東京オリンピックはケチがつきまくった。
まずは「東京の殺人的な猛暑の中、アスリートたちが競技を行えるのか?」「競技施設の不備から、熱中症で倒れる観客が続出するだろう」から始まり、延期の理由にもなった新型コロナの世界的な流行。今年に入れば大会組織委員会の森喜朗会長(当時)が女性蔑視発言により辞任。その後はクリエイティブディレクターだった佐々木宏氏が、開会式でタレントの渡辺直美さんにブタの耳をつけて「オリンピッグ」とやる、まさかのオヤジギャグ演出構想が発覚し辞任。
そして記憶に新しい、コーネリアス小山田圭吾氏の開会式音楽担当辞任からの絵本作家のぶみ氏辞任、そして元ラーメンズ小林賢太郎氏の解任へと立て続くドタバタ劇だ。
特に小山田圭吾氏の辞任につながる一連の騒動は、社会的にもかなりのインパクトがあった。もともと渋谷系の音楽アーティストとしてブレイクし、近年はヒットの印象はないもののそのイメージのよさはキープ。しかし虫も殺さぬようなルックスからは想像できないほど醜悪なイジメを、しかも障害を持った同級生に行ったとされ、それを紙面で楽しそうに語っていたという「そ、そんな人間ってホントにいるんですか……?」と素で聞きたくなる経歴の持ち主、それが現在の一般的な印象だろう。
「ただし」である。そのイジメの内容が完全なる真実なのか、その確認をしたという報道はされていない。そもそも問題の発端となった『いじめ紀行』なる企画インタビューはそれなりの長尺でもあり、それを確認せずに発言している人のほうが多い印象だ。俺も実際に確認できたのは話題になってから数日経ってからだったのだが、それを全文読んでみると最初と異なる感触をもった。
「あれ……? イジメてることはイジメてるんだけど、傍観者としてのイジメ場面まで世間では小山田氏の責任になってる部分があるじゃん」
これは自分自身、恣意的に切り取られた情報のみを参考にして小山田氏への悪印象をもった可能性が高く、世間一般のみなさんにしてもそういう方は多かったのかもしれない。ただ、小山田圭吾氏がマズかったのは、問題が取りざたされて「解任、もしくは辞任しろ」という声が高まった後に起こした、彼のリアクションだ。
「謝罪」の表明はしたが「辞任」については触れずじまい、即ち「イジメの件は申し訳なかったと思うけど、この仕事は引き続き行う」という表明に受け取れる内容だったのだ。この謝罪文を読んだとき、思わず「ウソだろ……」と言葉が出た。これは小山田圭吾氏本人への言葉でもあるし、それを許した小山田氏サイドのスタッフへの言葉だ。
なぜこんな中途半端な、というより火に油を注ぐようなことで決着をつけられると思ったのか。乱暴な方法ではあるが、あの謝罪文を発表するくらいであれば「このままシカトしてなあなあで収束、日本ならワンチャンあるでしょ」を実行したほうが、まだ切り抜けられた可能性があったかもしれない。
彼、そして周囲にいるスタッフはどこで見誤ってしまったのか。「悪いことはした。しかしこの職責はまっとうしていく」と事あるごとに言い放ってきた日本の政治家たちの二番煎じを演じるような形になり、そして大失敗してしまった。
一方、今回の相次ぐ辞任・解任劇である意味お見事だったのが「絵本作家・のぶみ氏」だ。
俺に言わせりゃ小山田圭吾氏より彼のほうがよっぽどヤバい。イジメのようなわかりやすい絶対悪ではなく、「そのヤバさがわからない人にはよくわからない」ゆえ、彼とそのマネジメントが「世間にゴチャゴチャ言われようが開会式だけ乗り切ろう」と思えば、乗り切れる可能性もあったはずだ。
しかし「開会セレモニー制作の中にのぶみの名前がある……!」と気づかれるや否や、その火が大きくなる前に抗うことなくスッと姿を消した。「ここで開会式制作のポジションに固執したりしたら、自分のしていることを分析されて袋叩きにあう」と判断したのであろうか。結果、痛手という痛手も受けずにこの事態を切り抜けたというか「すり抜けていった」。
現状の世論のままであれば、小山田圭吾氏は今後の活動に大きなハンデを背負ってしまったが、絵本作家のぶみ氏に至ってはそのダメージもあまりないだろう。
世間にそのヤバさが広まる前に、彼は黙って舞台を降りていった。まるで「チャンスはまた来る」と言わんばかりに。
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ラジオ日本『竹村哲のアキラめないで!』
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