「スネイル、ダウンタウンに会いに行く⑤~SNAIL RAMPの作り方・54」~タケムラ アキラ『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマンであり、キックボクシングで日本チャンピオンにまで上り詰めたタケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
紆余曲折あったTOKYO2020、オリンピックも終わりましたね。各国アスリートたちの活躍は本当に素晴らしく、日本選手団のメダルラッシュには嬉しい驚きがありました。
コロナ禍の憂鬱さも一時は忘れてしまうほどのお祭り騒ぎはよかったのですが、その裏でコロナの陽性者数は激増。東京都では1日5千人を超えてしまった日もあり、今や症状が出てもよほどのことがない限り入院させてももらえない。
菅首相や小池都知事は「自宅を病床に」と、平たく言えば国民、都民を見捨てるとしか取れない宣言もしなすった。コロナ感染者急増による医療ひっ迫はこの1年半ずうっと言われていたのに、彼らはリーダーとしてどんな対策をしてきたのでしょうかね。
先の戦争でも日本の指導者たちが民草をまったく顧みない事例がいくつもありましたが、この令和においてもそれが堂々と宣言されるとはさすがにびっくりしましたし、あのふたりに愛想を尽かした人も多かったのではないでしょうか。
まあボヤキはこのへんにして、SNAIL RAMPがHEY!×3に初出演したときの話の続編です。
HEY!×3のライブ収録を終えたSNAIL RAMP。残るはトーク収録なのだがその前にはやることがある。このHEY!×3シリーズを読んでくれている人も忘れちゃっていると思うが、この日は渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブもあるのだ。
ということで俺たちはスタジオライブの収録が終わったところで砧のTMCスタジオを抜け出し、そのまま電車に飛び乗り渋谷へと急いだ。この日は朝からどんよりと重たく曇った日であったが、このときはギリギリ雨にも降られずCLUB QUATTROに着いた。
そしてチャキチャキとリハを終え、「じゃあ砧に戻って、HEY!×3のトークを撮るか」とCLUB QUATTROを出るとそのときはもう雨が降っていた。しかも本降りだ。「えっ、雨じゃん!」となったがタクシー移動などしていたらトーク収録に遅れてしまう。このまま行こうぜ!と傘もささずに、渋谷駅まで10分くらいの道のりを早足で移動した。
そして砧のTMCに着き用意された控室に入ると、一息つく間もなく「ではオープニングから撮りますので準備をお願いします」と番組スタッフさんが声をかけにきた。
「控室前の通路に並んでいただいたらご案内しますので、よろしくお願いします」
その言葉に促されて俺たちが通路に出ると、この日の収録に出る共演者がワラワラと並んでいる。もちろん出演者だけでなく、それぞれにマネージャーやメイクさん、レコード会社のスタッフさんたちが1アーティストにつきそれなりの人数でついているので、控室前はかなりの混雑ぶりだった。
ちなみにこの日の出演は4アーティスト。
浜崎あゆみ
鈴木あみ
モーニング娘。
そして俺たちSNAIL RAMPだった。
この並びを見た昭和~平成初期生まれのみなさんは、「なんでそこにSNAIL RAMPが入ってんだよ!」と全員思ったであろう。わかる、俺もそう思ったしマジでどう振舞っていいのかサッパリわからないくらいのビッグネームばかりだった。
この頃の上記3アーティストはマジもんのトップスターで、CDセールス100万枚とか達成してしまう人たちであり、その人たちと縦列で通路に並びスタッフに引率されるのを待っているこの状況が、なんとも不思議でもあった。
正直、「え、ちょっと待ち時間長くない? 引率のスタッフさん来ていないのかな?」と思う控室前通路での待機時間だったが、控室から出てきていない浜崎あゆみ(呼び捨て)をひたすら待つ時間だった。さすが大スター。しかし、そんな待ち時間があっても、アミーゴやモー娘は文句ひとつ言わずただ待っていて「人間ができてる……」と感心した。
ようやく全員が揃うと「ではスタジオに移動しまーす」というスタッフの声に引率され、大名行列のごとく歩き出す。お姫様が山盛りの大名行列だったが、俺たちは完全に足軽だった。
やがて一行は「前室」と呼ばれる、収録スタジオ直前にあるスペースに通される。一行にはちょっと窮屈なスペースではあったが、そこで音声さんがピンマイクをつけてくれたり「オープニングの入場順はこうです」といった説明がなされた。
前室にイスはひとつしかなかったために全員、アミーゴもモー娘。のみんなも立って収録スタートを待っていたが、一番最後に入ってきた浜崎あゆみ(呼び捨て)はひとりそこにどっかりと腰を下ろしていた。さすが大スター(2回目)。
そして、いよいよ収録時間が近づき「出演のみなさんは入場順に並んでください」と番組スタッフさんから促され、皆がゾロゾロと並んだ。そのときだ。俺のすぐ前だか横だかにいたモー娘。の飯田圭織さんが俺のほうをチラッと見た。そして一度は視線を外したのだが、再度振り返りこう言った。
「あの……それで出るの?」(つづく)
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