漫画の様式美的なシーンで間違いないだろう。全っ然知らんけど。~ライオット『サンダースティール』~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編~残念なジャケット~(第117回):漫画の様式美的なシーンで間違いないだろう。全っ然知らんけど。
今月は一貫して連載100回記念ディスクユニオンセコセコショッピング企画(https://33man.jp/article/column38/009021.html)にて購入したなかからご紹介しているが、記念すべき番外編第1弾は当初から番外編行きのつもりで買ったライオット『サンダースティール』の登場だ。
ライオット『サンダースティール』(1988年)
今月は一貫して連載100回記念ディスクユニオンセコセコショッピング企画にて購入したなかからご紹介しているが、記念すべき番外編第1弾は当初から番外編行きのつもりで買ったライオット『サンダースティール』の登場だ。
こちらはメタルファンにとってはもはや定番の1枚で、いちメタルファンとして本当はもっと早い段階で持っていなければおちょくられるくらいの有名なアルバムである。なので僕はたぶんおちょくられます。
キャリア的には1970年代から活動を続けている大ベテランで、メンバーの移り変わりも激しければ音楽性の変化も激しいいろいろとせわしないバンドである。その長いキャリアのなかでリリースした数あるアルバムのなかでもこの『サンダースティール』を彼らの最高傑作とみる人は非常に多い。確かにその攻撃性、スピード感、それと同時にあわせもつ抒情性、様式美的要素はヘヴィメタルのあらゆる魅力を詰め込んだ良いとこどり的な内容で、ヘヴィメタルの教科書的作品とも言えるかもしれない。
彼らはアメリカのバンドだが、こういった攻撃的なサウンドのなかに抒情的な美しいメロディを取り入れるあたりはどちらかというとヨーロッパのバンドっぽい雰囲気がある。リーダーでもあったギタリストのマーク・リアリはすでに亡くなってしまったが、ここでは素晴らしいギターソロを全編にわたって聴かせてくれる。
メンバーやら音楽性やらいろいろと変化の激しい彼らだが、ひとつだけ初期の頃からブレていないところがある。毎度毎度ジャケットがやたらダセーのである。時たまいい感じのジャケットもあるのだが(『ブレズレン・オブ・ザ・ロングハウス』とか)、基本ほとんどがダセーのである。そしてもちろん『サンダースティール』もそのひとつだ。
アメコミ風のイラストで正義のヒーロー、キャタピラバズーカマンとガスマスクレーザーウーマンがもともと人間だった自分をこんな体に改造した悪の組織と破壊された故郷の街で全面対決に挑むも、組織のボスが実は自分の父親だったという事実に驚愕。父の目を覚ますためにキャタピラバズーカマンがとった行動は……次週『絆』。君は奇跡を目の当たりにする!
みてえな漫画の様式美的なシーンで間違いないだろう。全っ然知らんけど。とにかく数いるメタルバンドのなかでもまあまあ高レベルで毎回残念なジャケットを提供してくれる彼らに敬意を表しておちょくらせていただいた。
とりあえずヘヴィメタルを好きになったのなら早い段階でこの名盤は買っておこう。
さて、セコセコショッピング企画で購入したアルバムもここまではハズレというハズレもなく順調にきている。果たしてあの企画が真の意味で成功と言えるものになるのか。引き続きお楽しみに。