ジャケットがアルバムのダークな空気感をよく表している〜バッド・ムーン・ライジング『ブラッド』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第135回:ジャケットがアルバムのダークな空気感をよく表している
連載第100回記念セコセコショッピング企画(https://33man.jp/article/column38/009021.html)で購入したCDもいよいよ残り少なくなってきた。というわけで今週はセコセコショッピングで購入した中でもおそらく知名度はかなり低いほうのバンド、バッド・ムーン・ライジングの登場だ。こんな後半に知名度の低いバンドを持ってきちゃうおれまじヒゲメガネ。
バッド・ムーン・ライジング『ブラッド』(1993年)
個人的にハードロック/ヘヴィメタル好きとして名前はなんとなく聞いたことのあるバンドだったが、もともとはライオン(こちらもまた名前のみ知っていた)というバンドのメンバーだったボーカルのカル・スワンと、ギターのダグ・アルドリッチがライオン解散後に結成したバンドである。バンド名はおそらくサザンロックバンド、CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の同名曲から取ったものと思われる。現在は既に解散しており、カル・スワンは引退、ダグ・アルドリッチはディオやホワイトスネイクといった大物バンドに抜擢されるなどの活躍をみせている。
『ブラッド』は彼らのセカンドアルバム。ライオン時代は正統派のブリティッシュハードロックをやっていたようだが、ここでの音楽性はかなりディープな内容で、はっきり言って暗いしとっつきにくいタイプのアルバムだ。まあ1990年代はグランジのブームにより多くのハードロック/ヘヴィメタルバンドが重く暗いグランジの音楽性に寄せた流れがあったので、彼らもサウンドそのものにはグランジの影響はみられないものの、そのシリアスな雰囲気は間接的な影響を受けてのものかもしれない。それゆえに全体的にスロー~ミドルテンポの曲が多く、正直言って聴き疲れする内容ではあった。ただ数少ないアップテンポなロックンロールタイプの曲では非常に切れのいいグルーヴ感を生み出していて、そこにしっかり彼らならではの個性が感じられたので、そのあたりからカルとダグは良いコンビだったのだなと思う。
ジャケットはディスクユニオンで見たときに、シンプルにめんこいおなご(知念里奈似)と奥深そうな雰囲気に惹かれて買ったものだが、色調といい荊の冠の存在といい実際に聴いてみるとアルバムのダークな空気感をよく表していることがわかる。なんとなくだが何も情報を知らずに見たらグランジのアルバムっぽい印象を受けそうな気がするのはやはり間接的な影響を受けているからなのか考えすぎなのか。
というわけで知念里奈の『ブラッド』は個人的に手放しに絶賛、お勧めできる内容ではなかったが、この独特のグルーヴ感は何気に今後もちょくちょく取り出して聴きたくはなるタイプかもしれない。