【掟ポルシェの食尽族】第3回:未来永劫死ぬまで通う飲食店

連載・コラム

[2019/9/3 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第3回:未来永劫死ぬまで通う飲食店


 どーも! マズい飯と面倒くさい女が三度の飯より嫌いな真・フェミニスト(真・FMW的表現で失礼します)の掟ポルシェです! さて、今回も口に合わない食品の・ようなものをうっかり味わった地獄体験を書き殴って手軽に原稿料得ちゃおっかな!と思ったんですが、そろそろ担当編集さんがこめかみに血管を浮かべてピキッ!と怖い顔になってきたんで、恨み言の類をエイヤッと封印し、自分の大好きな料理店について書きくことにします! ネット上の罵詈雑言は控えめに! 民事訴訟、ダメ、ゼッタイ!

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最高に刺激的で大好き!な飲食店

 というわけで、今回は自分が長年に渡り通い続けている「この店なくなったら困る!」というベスト・オブ・口に合う料理をご紹介。
 まず、俺が料理店に求めている基本事項がありまして、それは「自分で作れる程度の味、どうやって作ってるかわかってしまう昔ながらの味にはなんの興味もそそられない」ということです。これは、音楽の趣味嗜好にも同じことが言えるのですが、刺激を感じないことに関心を持たない性質がありまして。「すごく美味しい! でもこんなのいままで食べたことがない! どうやって作ってるかわからない! なんでこんな未知の味を作ろうと思ったか、そこに辿り着く発想自体が素晴らしい!」というものにとてもハマりやすいのです。味わったことのない美味しいもの、自分の舌にジャストな新味覚の料理を食べたら、週に何度も通い詰めます。コロンブスがアメリカ大陸を発見したときみたいなうおおおおおおおお!!!!!!っていう感じ? それを料理に求めているわけです。コロンブスだってアメリカ大陸発見したら「じゃ、発見したんでボク帰りまーす」ってならないですよね? それみたいなもんで、長い年月かけてこの味の新大陸の全貌を知りたい! とアホみたいに日参することになります。店主に「え、昼来て夜も来る普通!? ちょっと来すぎじゃないの!?」と不審に思われてナンボです。

 過去、いろんな料理店に通い詰めてきました。でも、ここだけは未来永劫死ぬまで通う!という店があります。それが、東京は五反田にある『うどん?』というカレー屋です。
 この『カレーの店 うどん?』(以下、『うどん?』)にはおもしろトラップが山ほどあります。もう、足の踏み場もないほど罠・罠・罠だらけでうっとりで、もう最高に刺激的です。これほど自分向けの飲食店はありません。もうたまらない。
 まず、『うどん?』という店名ですが、ここには「うどんがありません」。なんでカレー屋なのに『うどん?』かというと、『うどん?』のマスターが2001年、店を開店するにあたり、当時7歳の甥御さんに「おいちゃん、これからカレーの店やるんだけど、店名何がいいと思う?」と聞いたところ、「うーん、カレーだから、うどん」という、まだ物心つかない子どもならではの使えないアイデアが返ってきました。でも、そこはさすが『うどん?』のマスターです。「じゃあ、うどんで」とそのやっちゃダメな意見を全面採用! わはは、何故!? 「うどんは置いてないから、じゃあ、クエッションマーク付けて『うどん?』で」と決めてしまいます。開店前からカオスの予感満載です。そうこなくっちゃあいけません。
 ほかにもややこしいポイントはいろいろあります。『うどん?』にハマる常連さんのほとんどは“季節の夜かれー”という、数ヶ月に一度、季節によって具材が変わって1年を通じいろいろな味が楽しめるメニューを注文するのですが、“夜かれー”と言いながら、えー、「昼でも頼むことができます」! 何故・その2! それを知らず、俺も通い始めた当初は自分の行ける時間がいつも昼間だったため、「季節の夜かれーっていうの食べてみたいけど今昼だから無理だな」なんて思ってたんですが、あるとき隣りに座ったお客さんが昼なのに「冬の夜かれーくださーい」と注文。えっ!? 今昼だけど!? と思ったのも束の間、「はーい」と店主の元気な返事が! 昼でも夜かれー頼めるんじゃん!? このトラップのおかげで通って半年ぐらいは“ばじるぽーく”ばかり食べてました。早く知りたかった……(でもばじるぽーくも旨いんだなこれが!)。

 『うどん?』にはほかのカレー屋とは違うオリジナリティありすぎの戒律というか掟のようなものが存在します。その最たるものが、「カレースープとご飯は別々に食べる」というもの。何故・その3! 理由が『うどん?』ホームページ(赤地に白抜き文字の目チカチカ仕様なため魔力がありすぎて来店前にホームページを見るとくじけてしまう人がいるらしい)に書いてありまして、「うどんのカレーは、簡単に言えば味噌汁とご飯の関係です。出汁のきいた美味しい味噌汁は、ご飯にかけて食べたらもったいないでしょ。ご飯をスプーンにのせ、味噌汁にご飯を浸して食べる人っている?」だそうで。いや、あの、これ、味噌汁じゃなくてカレーなんですが……という素直な疑問が首をもたげてきますが、マスターの言う通りご飯とカレーを別々に食べると……美味しい! 確かに別々に食べたほうが美味しいんだからその通りにしたほうがいい! 「ご飯と一緒だと、カレーの味がボケちゃう気がするので、そうすすめています」とのこと(初回はその食べ方でやってみて、合わなかったら2回目以降普通にかけちゃってもいいということらしい)。なるほど!
 そのほかにも山ほどおもしろポイントがあるんですが、それ全部書くと文字数2万字くらい軽くいっちゃうんで、ほどほどにして肝心のカレーの味の説明に行きます。もう泣く泣くエピソード割愛! いろいろいい話があるんだけどな、10周年記念企画でマスターがホノルルマラソン挑戦とか。客の想定の範囲を余裕でぴょ~んと越えてきます。ああ~んもう大好き!(次ページへ)