B'zの根本的なアイデンティティがもっとも発揮された曲~平井“ファラオ”光のB’zコラム『がんじがらめといえばそう』第6回~
バラエティ番組『アメトーーク!』の『B’z芸人2023』にも出演し、音楽好き&B’zファンとして知られる平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)がB’zの魅力についてひたすら綴る連載! 毎月第2・第4金曜日の正午に更新!!
ファラオが今1番好きなB’zの楽曲
どうも、オモシロヒゲメガネです。
さて前回はB'zの個人的に好きなアルバムについて書かせていただいたので、今回は好きな楽曲について書いていこうと思う。
しかし実際これは好きなアルバムを選ぶことよりも難しい。なにしろ30年を超える歴史のなかで、彼らはまともに休みも取らず(短期的な休みは当然あるだろうが)数え切れないほどの名曲を生み出してきた。つくづくがんばり屋さんなナイスミドルである。
なので結局アルバムと同じく、1番となるとそのときの自分の気分などによるのだが、やはりこれもアルバムと同じく、常に自分のなかで上位にいる曲というのは確かにある。
今ぱっと浮かぶのは『RING』という楽曲である。
2000年にリリースされたシングル曲で、アルバムでいうと同年の『ELEVEN』に収録されている。
しかしこの『RING』、シングル曲ではあるがB'zの楽曲のなかではなかなかに影が薄い印象がある。
そもそも2000年はB'zが珍しく1年の間にシングル曲を4曲もリリースした年で、うち3曲はバラード風というか、わりと近いタイプの楽曲なうえ、そのなかでも『RING』はもっとも暗い雰囲気を持つ曲なので、埋もれてしまっているのかもしれない。
しかしこの『RING』、まだ知らぬ人も知ってはいるが通り過ぎてきた人もぜひもう一度じっくり向き合って聴いてみていただきたい。
そもそも僕が曲を好きになる際、特に重要視する条件として、“音がいい”“メロディがいい”“空気が見える”などがある。よく音楽において重要視される“歌詞”に関しては実は自分のなかではそれほど優先条件には挙げられない。歌詞を見るとしたらメッセージ性よりも、作詞家独自の節回しや言葉選びの妙技などにむしろ感銘を受けることが多い(いうまでもなくその点において作詞を担当する稲葉浩志さんは余裕でクリアしている)。
そして『RING』は上で挙げた条件のなかでも“空気が見える”、この点において最強の曲といえる。
全体的な雰囲気としては、B'zのシングル曲のなかでも(むしろすべての曲のなかでも?)もっとも日本的な情緒を強く打ち出した曲で、実際このあたりの時期はギターの松本(孝弘)さんが日本人プレイヤーとしてのプライドを強く持ち始めた時期でもあったと思うので、それが明確に表れた曲ということだろう。
シンプルで幻想的なギターリフから始まり、緩急をつけながらだんだんと盛り上がっていく構成。バッキングのギターはどこか鐘の音のようにも聴こえ、一層日本的な空気を醸し出している。
間奏ではギターソロは登場しないが、突然妖しげな音階を持つリフが登場し、以降は最後までそのリフが曲を引っ張っていくことになる。こんな後半にメインリフが登場するパターンは意外と珍しいかもしれない。
そして個人的にこの曲のハイライトだと思っている部分が、間奏におけるおそらくチェロであろう4小節程度の短いソロ。悲哀を帯びた尋常ならざる美しいメロディ。『RING』におけるもっとも濃厚に空気が描き出されている部分だと思う。
総じてドラマチックな構成や全体のクオリティ的にも、個人的にはもっと売れてもよかったのではないかといまだに思っているが(それでもオリコン1位は取っているが)、やはりこの日本的暗さが広く受け入れられない要因だったのだろうか。
しかし当然のことながら、日本人以上に日本の空気を描くのが上手い民族はいない。その点である意味『RING』はB'zの根本的なアイデンティティがもっとも発揮された曲ともいえるのだ。しかも日本の伝統的な楽器や音階を用いずにその空気を出しているからなおすごい。
なのでまだこの曲を知らない人も、知ってはいるが通り過ぎてきた人も、今一度ぜひ聴いてみてもらいたい。
ただしアルバム『ELEVEN』の流れのなかで聴くと明らかに異質な空気を放っているため、違和感が半端じゃない。できればシングル盤など独立した形で聴くほうがお勧めである。ちなみに『RING』以外にトップ候補に挙げられる曲があるとすれば、音が最高にかっこよく歌詞も愉快でヤッテランナイベイベな『ザ・ルーズ』(1995年/同年発売のアルバム『LOOSE』に収録)などがある。思い入れもあるが。
やはりこうして思い出そうとすると、各時代で聴き返したくなる曲がいろいろと出てくる。
今異様に聴きたいのは……
TRFだ。
なんでだ。