尾崎豊への愛を叫ぶ! あの大物芸人との感動秘話も……『あつまれ、バンドマン芸人!』井上マー編

連載・コラム

[2016/1/17 17:00]

お笑いのステージに立ちながら、バンドマンとしてライブ会場を沸かせる芸人たちがいる。今回紹介するのは尾崎豊ネタでお馴染みの井上マー。尾崎豊を完コピした実力派バンド“井上マーBAND”のボーカルとしても活躍するバンドマン芸人なのである。

井上マー!

芸歴20周年!
サンボマスター山口隆とまったく同じ生年月日
尾崎豊ネタで知られる井上は2016年、芸歴20周年を迎える。1997年にお笑いコンビ“ストロベリージャム”でデビューして1999年に同コンビを解散し、その後ピン芸人として活躍する。同期はカラテカ、あべこうじ、カリカなど。栃木県出身の1976年2月8日生まれ(39歳)で、サンボマスターのボーカル&ギター山口隆とはまったく同じ生年月日だという(アンガールズ・田中卓志も!)。

2月7日には新宿シアターサンモールにて20周年単独公演を開催! 詳しくは後述!

芸人人生を変えた、島田紳助氏からの言葉
ピン芸人としての活動初期は、イベントの司会やラジオ、お笑いの舞台などで活躍。そこから徐々にテレビ番組の前説を担当するようになる。そして、ある日の前説の仕事後、番組MCだった島田紳助氏に食事に誘われて人生が一転する。「“鍋せぇへん?”って言っていただいたので家におじゃましたら自分しかいなくて……。ふたりきりの状況で紳助さんがお酒をついでくれて“最近はどうなん?”って聞いてくるんです。僕が“前説とか漫談でがんばってます”って答えると“あの感じだったらウケるだろうな、わかるわ。ただな……売れへんで。お前の個性だと、まぁ無理やなぁ”って言うんですよ」
島田氏の突然の言葉に驚いたという井上。「その言葉に凹んだんですけど、紳助さんは“でもな、俺も才能ないねんで”って言うんです。それで、どうやって漫才ブームのなかを生き残ってきたのかを全部話してくれて。“作戦としてヤンキー漫才をやったのが一発目でたまたまハマっただけや。お前はひとつめの掛けをしてへんやろ”って言われたんです」
“ひとつめの掛け”――非常に深い響きだ。「スベってもいいから勝負できる何かに挑戦しなくちゃダメだっていうことですよね。それで“500人のお客さんが笑ってたって、そんなん意味ない。俺らは1億人の人間を笑わしてやっとメシ食えんねん。お前の今のフィールドは練習場所でしかないねん。そこを守ってるようでは、何年やっても一緒やで”ってアドバイスをくれたんですよ。そんなこと言ってもらえてホント感動しちゃって……。それで“おぉ、テンションあがったか? ほな!またな! テンション下がったらまた来いや!”って見送ってくれたんです」

尾崎豊ネタの誕生
そのあとすぐに帰宅し、井上は島田氏の話をノートにすべて書き写した。そして“自分が好きなことは何か”“やりたいことは何か”を熟考して至ったのが、お馴染みの尾崎豊ネタだった。「高校のころ洋楽ではボン・ジョヴィ、MR.BIG、スキッド・ロウとかロックにハマっていたんですけど、邦楽では尾崎と長渕剛さんが好きで。歌詞が聞こえてくる人が好きなんですよ。特に尾崎は自分の気持ちを代弁してきてくれたっていうか。モテない田舎者で、不良にもなれない小心者だけど、不良に憧れちゃう……そういうところを引き受けてくれる人物だったんですよね。そんな愛する尾崎のネタをやろうって」

魂の叫びを聴いてくれ!

都内の古着屋を回って購入した衣装。「尾崎ってこんなに破れてる衣装まったく着てないですからね(笑)。完全にイメージで」

魂の叫びでブレイク! ファンの反応は……?
その後は尾崎のものまねネタで一気にブレイク。“酢豚のなかのパイナップルの気持ち”を尾崎っぽく叫ぶなど、唯一無二の存在感で人気を博する。そんな彼のネタは尾崎をバカにしているようにも捉えられそうだが……熱心なファンも好意的だった。「中途半端なことはしないっていうルールがあって。作家さんがネタのアドバイスをくれても“これは尾崎っぽくないです”ってお断りしたものもあったりして。自分も本気で尾崎が好きっていうのがファンの方にも伝わってたみたいで嬉しいです」

魂の叫びを……

魂が技術を超えている――尾崎の魅力
そんな井上に尾崎の好きなところを改めて聞いてみた。「尾崎って一聴すると歌ヘタだなぁって思う曲もあるじゃないですか。でも、魂が技術を超えちゃってるんですよね。それに気づくとどんどん引きこまれちゃう」「それと、先のことを考えない発声ですよね。ライブも最後の方は声が出なくなっちゃう。ああいう絞り出す感じ……大好きですよね。僕も本気で真似したいから、ネタをやったらもう声がガラガラ(笑)。テレビ収録のとき、ひな壇で一回ネタをやってから喋るみたいなケースもあるんですけど、全力でネタをやっちゃって声出なくて……。それでスベるみたいなこともあったりします(笑)」

そんな井上が最も好きだという尾崎の言葉がこちら。ライブアルバム『LAST TEENAGE APPEARANCE』(1987年)収録のMCで、「いつ聴いてもアツくなる」と目を輝かせながら語ってくれた。

「時には過ちを犯してしまうこともきっとあるだろう。だけど、過ちにさえ、自分のこの体でぶつかって、ひとつひとつの物事を、自分で解き明かして行かなければ、新しい第一歩は踏み出せないような気がするんだ。そのために傷つくことも多いかもしれない。そのために命を落としてしまうかもしれない。ただ、俺は新しい第一歩のためにこの命を賭ける。それが俺の生き方だ、笑いたいやつは笑え……俺を信じるやつはついて来い」

『LAST TEENAGE APPEARANCE』

ネットでのネタパクリ騒動の真相
尾崎ネタで一斉を風靡した井上が数年前、ネットで“ネタパクリ騒動”に巻き込まれる事件があった。それは、人気番組『人志松本のすべらない話』のウェブ限定動画で井上が披露した“おじいちゃんのクリームパン”というネタが、2ちゃんねるの有名コピペのパクリだとされた事件だ。もともとは井上が舞台などで披露してきた“鉄板ネタ”が2ちゃんねるで広がりコピペになったのにも関わらず、井上がコピペをパクって披露したとして一部ユーザーが騒ぎ、井上のブログが炎上した。「あのときはさすがに我慢できなくて、思わずブログでも反論しましたもん(ブログの引っ越しにより現在、該当記事の閲覧は不可)。今って黙ってると犯人にされちゃう時代なんですよね。怖いです……。ぶっちゃけあれ以来、クリームパンの話はしてないですからね! すげぇいいネタなのに! あのときあまりおもしろく対応できなかったのが反省点です……。マジメさが出ちゃって……(笑)」
なお、この騒動後、2ちゃんねるが本件に関するスレッドをまとめて無断転載しているまとめブログに対して、著作物の利用を禁止する異例の警告文を掲載。ネット上でも大きな注目を集めた騒動となった。

魂の……

井上マーBANDでの活動
サマソニにも出演!
さて、本題であるバンド活動についてだが、井上は2009年に尾崎豊の完コピバンドである“井上マーBAND”を結成。新宿LOFTなどを中心に活動し、SUMMMER SONIC 2009にも出演した。バックを務めるのは腕も確かなサポートミュージシャンで、「曲はちゃかさずにしっかりやる。MCで尾崎っぽくボケる」をテーマに本格的な演奏と笑いを交えたステージを展開。井上の歌声も尾崎の楽曲に非常にマッチしており、芸人が行っているとは思えないクオリティである。「僕はバックの完璧な演奏に合わせて歌っているだけなので、ほぼカラオケみたいなもんですね(笑)。でも最近はエレキギターも弾いてみようと思って練習中です。バンドのアンサンブルって気持ちいいですね」。近年は積極的なバンド活動は行っていないが、尾崎の命日である4月25日にライブイベントを思案中ということで、バンドでの演奏を聴くことができるかもしれない。

ライブ時の様子

マーとギター
井上の愛器を紹介しよう。これは弾き語り漫談(尾崎を含むミュージシャンをネタにしたもの)の際に使用しているアコーステッィクギターで、モーリスのW-30。1975年製のもので、2003年頃に御茶ノ水にて3万円程度で購入したという。「これは営業でいつも持ち歩いているもので、アコースティックギターとしては2本目ですね。ギターはピン芸人である僕にとってはめちゃくちゃ頼りになるんです。お客さんに話しかけてばっかりもいられないから、そういうときにちょっと弾いたりして意識をギターにもっていけるので。まさに相棒っていう感じですね」
ギター(エレキ)は高校生のときにボン・ジョヴィに憧れて少し練習したようだが、そのときはすぐに辞めてしまい、芸人になってから教則本を買って猛特訓したという。取材時もスムーズにコードチェンジして演奏する姿が印象的だった。

愛用のモーリス W-30

アンプの上の尾崎

5年ぶりの単独公演開催!
20周年を迎える井上は、先述のとおり新宿シアターサンモールで5年ぶりとなる単独公演『自作自演ショー』を開催! この公演への意気込みを語ってくれた。「いろんな人に出てもらって、“井上マーがこういうことをもう一回やるんで助けてください!”って言いに行くきっかけにしたいんです。みなさんに感謝しながら、真心をもって全力でやりたいと思います。井上マーの集大成! ぜひ遊びに来てください!」

お腹のお肉をアピール。単独公演までに痩せてください……

やっぱりスゴい尾崎愛! そしてトークがおもしれぇ
今回じっくりマーさんとお話をさせてもらったが、とにかく気さくで話がうまい。前説で活躍していたときはめちゃくちゃ現場を盛り上げたといい、その言葉にもうなずける軽快なトークに笑いっぱなしの取材となった。もちろん尾崎への愛はハンパではなく、当時の尾崎作品の制作陣も彼の存在には一目置いているという。「尾崎の魅力をもっと世代を超えて広めていきたいですよね。今後、追悼イベントも積極的に開催していきたいと思っているので、ぜひ会場に来てくださいね」
これからも井上マーBANDとともに尾崎の素晴らしさを叫び続けてほしい。

取材を終え、街の風に引き裂かれたマーさん。あざっした!

[耳マン編集部]