【前編】1970年代東映映画の魅力〜オワリカラ・タカハシヒョウリが語る〜

特集・インタビュー

[2016/5/27 18:00]

【前編】東映映画ってどんなもの? その魅力を教えて!
5月18日にアルバム『ついに秘密はあばかれた』をリリースしメジャーデビューを果たした“サイケデリックロックバンド”、オワリカラ。同バンドの全作詞とギターボーカルを務めるタカハシヒョウリは特撮、漫画、1970年代のフォークソングなどさまざまな分野に関する造詣が深い。今回はそんなタカハシがこよなく愛する“1970年代の東映映画”についてピンポイントに熱く語ってもらうという超マニアックで狂ったインタビューを決行! 東映映画の魅力やそこからタカハシが受けた影響とは? 日本が誇る偉大なる文化の魅力を、タカハシのあふれるパッションとともに存分に堪能してほしい!


タカハシヒョウリ。ポスターや書籍は今回持参いただいた本人の私物!


1970年代の東映映画

『テレビでは流せないような“エロいもの”“グロいもの”“過激なもの”』
———1970年代の東映映画にはどんな特徴があるのか教えてください。
もともと東映って1950年代から時代劇を制作していた会社なんです。東映時代劇っていうのがあって、すごい様式美……いわゆる“時代劇”っていう単語からイメージするような“正義の味方が最後に悪い奴を倒す”みたいなパターンの作風で一世を風靡したんですね。それが段々、時を経るにつれて嘘くさいというか、“勧善懲悪”みたいなものがダサい、みたいな空気になってきて、どんどん人気がなくなっていったんですよね。それで1971年にワンマン社長として有名な岡田茂さんが社長に就任したんですけど、その人が先陣を切って、作風をガラッと変えたように思います。その頃はテレビが人気で、映画が斜陽の時代だったんですね。それで、テレビでは流せないような“エロいもの”や“グロいもの”、それから“過激なもの”をやってお客さんを呼ぼうっていうスタイルに変えたのが岡田さんだと思っていて。それで実録系の激しいヤクザものとか、“芸者もの”っていうちょっとエロい時代劇みたいなのをやるようになって、東映が再ブレイクを果たしたというか。なので、1970年代だけ異色で、過激だし、ハードコアなんですよ。


『“俺たちが新しいことをやってるんだ”という気概』
———東映映画において、1970年代とほかの年代の違いはどんなところがありますか?
もう圧倒的に荒々しくて、エネルギー量がすごくあるんですよね。サラッとしてないんですよ。基本的にすべての場面が濃くて、ベタベタしてる。監督で言うとやっぱり『仁義なき戦い』シリーズ(1973〜1974年)の深作欣二さんが1970年代の東映映画の一番スター監督だったと思うんですけど、深作さんはカメラを覗いてそのシーンが“濃いか薄いか”って言うらしいんです。それで“画面が薄い!”とかってダメ出しするらしいんですね。今って、そこまで場面場面がうるさい映画って少ないじゃないですか。画面がうるさすぎるとみんな疲れちゃうけど、この頃って映画が娯楽の最上級だった時代なんで、みんな“一秒たりとも退屈したくない”っていうのがあったんだと思うんです。だから、“見流す時間を作りたくない”っていう映画人たちの熱意、熱量がすごくあって。それと同じように役者さんたちもみんなギラついているというか、本当におもしろいんですよ。主役の人たちはもちろんスターなんで存在感があるのは当然だと思うんですけど……例えば『仁義なき戦い』は群像劇なんですけど、一瞬しか出てこない出演者までみんなすごく良い演技をしていたり、ものすごいギラついてて。“そんなに前に出てくる必要あんのかな!?”っていう感じなんですよ(笑)、いっぱいいるモブのキャラクターが(笑)。そういうのを観ると、サラッとやってないっていうところにすごく感動するんですよねぇ。1970年代は漫画とか音楽もそうだけど、“俺たちが新しいことをやってるんだ”っていう気持ちで切り開いているというか、“自分たちがパイオニアなんだ”っていう気概があったと思うんです。


初めて観る人におすすめする“入門編”的作品

『深作欣二監督と菅原文太さんのコンビネーションが爆発!』
———1970年代の東映映画を観たことがない人に、入門編としておすすめな作品は何ですか?
難しいっすねぇ……続きものじゃない方がいいのかな。今日ちょうどTシャツ着て来たんですけど(記事冒頭の写真参照)、『県警対組織暴力』(1975年)。これは深作監督で菅原文太さん主演。松方弘樹さん、梅宮辰夫さん、川谷拓三さんも出てくるっていう『仁義なき戦い』の役者さんが勢揃いしている映画で。『仁義なき戦い』では菅原さんってやくざ役なんですけど、この作品だと刑事役なんですよ。県警役が菅原さんで、やくざ役が松方さんで、菅原さんがもう超不良刑事なんですね、やくざより悪いみたいな。その不良刑事と暴力団がグルになってるんだけど、段々それが抗争に発展してくっていう映画で。この映画では『仁義なき戦い』などで高まった深作監督と菅原さんのコンビネーションが爆発してるんですよ! しかも一本で終わるんで、入門編としてはすごい良いかなと思いますね。


『タランティーノの世界観を先取りしてる』
———すごくおもしろそうです! ほかにも何かありますか?
あと、やくざものが苦手な人だったら『資金源強奪』(1975年)っていう深作監督の映画がいいですね。北大路欣也さんが主演で川谷拓三さんと室田日出夫さんも一緒に出てるやつなんですけど、これも超傑作です! これは僕わりと最近観たんですよ。この映画の成り立ちを説明しますと、同じ東映の1975年の映画で『新幹線大爆破』っていう作品があって。その映画は新幹線に爆弾が設置されてて、一定のスピードより落ちると爆発するっていう……アメリカ映画の『スピード』(1994年)の元ネタなんですよ。海外でだいぶヒットして、これを原案に『スピード』が作られたっていうくらいの作品で。岡田さんが社長の頃ですけど、この人はとにかくタイトルが先なんですよね。それで『新幹線大爆破』っていうタイトルをまずバッて決めて、“このタイトルおもしろそうだろ、社を挙げてこのタイトルの映画を撮れ!”ってことになったんですけど、当時の国鉄が“『新幹線大爆破』だと大爆破することになるから、『新幹線危機一髪』にしてくれ 、『新幹線危機一髪』なら撮影に協力する”って言ったらしくて。でも岡田さんが“『新幹線危機一髪』なんてつまんなそうだから“『新幹線大爆破』で絶対行く”って。だから国鉄の協力を得られなかったけど、全部ゲリラで隠し撮りして新幹線のシーンを撮影して、あとはミニチュアで撮影して制作した作品なんです。そんな感じでこの映画に東映は全勢力をつぎ込んだんですけど、結局スベッたんです。そのときに、その“『新幹線大爆破』組”から深作監督はあぶれちゃったんですよね。北大路さんとか川谷さんも余ってて、それで“余った奴で映画撮ろうぜ”ってなって、『資金源強奪』っていう映画を撮ったんです。それがめっちゃおもしろいんですよ。いわゆるクライムサスペンスみたいな内容で、刑務所生活を終えた3人のやくざが銀行強盗をして金を奪い合うっていう話。不良刑事として梅宮さんも出てくるんですけど。クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドックス』(1992年)とか、ああいう感じの映画を先取りしてるっていうか、すごいモダンな感覚で、何が起きるかわかんなくて話が二転三転する、みたいな。宮藤官九郎さんのテイストにも近いかもしれませんね。でも『新幹線大爆破』にほとんど予算を使っちゃったから全然宣伝もされなくて、深作監督はそれがすごい嫌で、抗議としてひらがなで“ふかさくきんじ”っていう名前で監督してるんですよ。唯一、その一本だけ自分の名前をひらがなにして変名で撮ってるんです。この映画も結局ヒットはしなかったんですけど。


1970年代の東映映画から受けた影響

『負け犬の意地』
———1970年代の東映映画から、タカハシさん自身が影響を受けている部分はありますか?
そうですね。“あぁ、ダメだ……”みたいにヘコんでいるときとか、気持ちが暗雲の方に入っているときに、“自分のことをアゲるスイッチ”として観ることがすごくあって。1970年代ってすごくエネルギーがあるけど、基本的には暗い時代なんですよ。1960年代までどんどん社会が上向いていって、高度経済成長があって、1970年になって大阪万博をピークに一回すごく停滞しちゃったと思うんです。それまでは学生運動とかで世の中を良くできるんだと思ってたけど、でも結局国家権力に負けちゃったりだとか、それを実現することができなかった挫折の10年間でもあったと思うんですよ、1970年代って。まぁ僕は生まれてなかったので想像ですけど。だからやっぱり、負け犬の映画なんですよ、全部。それまで1950〜1960年代の主役っていうのは、侍はみんなヒーローで、名家の出で、上手くいってきた人たちが主人公だったけど、1970年代になったら “負け犬なんだけど一発当ててやろう”とか“負け犬なんだけど意地をみせてやろう”っていう想いを持った人間が主役になってくるんですよね。それは、映画を撮ってる人たちに学生運動とかで失敗したのちに映画に携わるようになった人とかがすごく多かったと思うんで、なんかそういうところで……僕もそれほど上手くいかない人生なんで(笑)、すごく感情移入できるっていうか。


『作る側も観る側もどっちも全力』
———負け犬が主役の映画……。一種のパンク精神とも言えるのでしょうか。深いですね。
自分が “負けてるけど、まだ行くんだ!”って気持ちのときに観るとすごいアガりますからね。そういう映画って意外となくて。奮い立たせられるところが非常に好きなんですよね。また、そういったメッセージとともに、“映画は娯楽なんだ”っていう気持ちも強いと思うんですよね。やっぱり、当時の映画ってインテリが観るもんじゃないんで。映画監督たちっていうのは大卒の人ばっかりだけど、映画を観に来る人たちっていうのは決してそうじゃなくて。肉体労働の仕事とかをしてる人も観に来るわけじゃないですか。そういう人たちに、一秒でも楽しんでもらって、次の日をより良く、より楽しく、次の日仕事に行く元気をあげる、みたいな。鈴木則文さんっていう監督さんがそういうことを言ってるんですよね。“映画っていうのは打ち上げ花火で、残らないからいいんだ”みたいな。“それでみんなの次の日の元気になればいい”みたいなことを言っていて。作る側も観る側もどっちも全力っていうところもすごくいいし、影響を受けましたね。


前編では“1970年代の東映映画はどんなものなのか?”という点にスポットを当ててご紹介してもらった。後編では、人気作品『仁義なき戦い』『トラック野郎』『女囚さそり』シリーズのそれぞれのなかから、タカハシヒョウリがおすすめの一作をチョイス! さらに、東映俳優の魅力やそこから学べること、オワリカラの音楽性への影響について詳しく語ってもらう。この記事で東映映画に興味を持った人は『県警対組織暴力』『資金源強奪』の2作品をチェックしつつ、後編を楽しみにしていただきたい!

<後編は6月3日(金)に更新予定!>


【オワリカラ、アルバム『ついに秘密はあばかれた』リリース!】

キーワードは“サイケデリックでカルトでポップ”! 2008年結成の4人組ロックバンド・オワリカラがメジャーファーストアルバム『ついに秘密はあばかれた』を5月18日にリリース。変幻自在なアンサンブルによる質の高い音楽が特徴的だ。

オワリカラ。左からカワノケンタ(ドラム)、カメダタク(キーボード)、タカハシヒョウリ(ボーカル、ギター)、ツダフミヒコ(ベース)
オワリカラ『ついに秘密はあばかれた』生産限定盤 ジャケット
オワリカラ『ついに秘密はあばかれた』通常盤 ジャケット

オワリカラ『ついに秘密はあばかれた』リリースツアー開催!


『オワリカラ Major 1st Album『ついに秘密はあばかれた』リリースツアー』
2016/06/06(月)広島・広島4.14
2016/06/23(木)千葉・千葉LOOK
2016/06/28(火)埼玉・埼玉HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2016/07/03(日)岡山・岡山PEPPER LAND
2016/07/04(月)福岡・福岡LIVE HOUSE Queblick
2016/07/08(金)北海道・札幌 COLONY
2016/07/11(月)宮城・仙台enn


『オワリカラ 「ついに秘密はあばかれた」 インストアイベント』
2016/06/10(金)東京・タワーレコード新宿店7F イベントスペ-ス
2016/07/01(金)大阪・タワーレコード梅田NU茶屋町店 店内イベントスペ-ス


『「ついに秘密はあばかれた」レコ発ワンマン~世界灯(ワールドライト)に照らされて~』
2016/09/16(金)大阪・梅田Shangri-La
2016/09/23(金)愛知・名古屋ell.SIZE
2016/09/25(日)東京・渋谷WWW

榊ピアノ