掟ポルシェの初めてでも楽しめるフジロックガイド!〜スタークローラー初出演完全レポート〜

特集・インタビュー

[2018/8/8 18:00]

ついにこのときが! スタークローラー初出演完全レポート

メシ屋選びの引きの良さに満足し、気分よく腹ごしらえを終え、トイレを済ませ、さぁいよいよホワイトステージのスタークローラーへ! ここで、まだスタークローラーをご存じない方のためにご説明。女性ボーカルのアロウ・デ・ワイルド(以下、アロウちゃん)は身長188センチ! マ、マジでっけえ! タカアシガニと森泉を足した感じの19歳(!)で、白目をむいて泡を吹き、何かが憑いてないとおかしいエクソシスティックな顔芸でとにかくギャーギャー言ってて最高です。音楽はかなりストレートなロック。よく引き合いに出されるのがザ・ストゥージズだったりしますが、個人的にはマッドハニーとかに近いものを感じる割りと正統派ロック。あとは各自動画サイトとかでチェック! 見れば一発で好きになるやつ! ギターのヘンリー・キャッシュ(18歳!)が作るロックのかっこよさの見本みたいな天才的にイカれた曲に、オジー・オズボーンを敬愛するアロウちゃんの悪魔と悪魔祓いをひとりの顔面上でVSさせたようなスッゴイ顔による箔付けが行われて、ロックの魅力が2倍2倍! になるという構造です。そんなもん、なんとしても1番前で観たいに決まってるじゃないの! スタークローラーの来日は2018年3月の初来日ツアーに続き2度め。東京で行われた2回のライブにはもちろん行ったが、そのときも最前から2列め辺りをキープしていたのは、アロウちゃんの顔芸+完全にイッてしまっているパフォーマンスをすべて見たいがため。今回も直前のバンドの最後のほうにスススッと2列めぐらいまで行っておき、首尾よく最前確保。

スタークローラー最前確保(ライブ中の尿意に備えて成人用オムツを装着しながら)!
ヘンリーのテレキャスのボディの裏になんて書いてあんのかと思ったら「Boobies make me smile」。意味は「おっぱいは俺を笑顔にさせる」! やっぱりバカだ! わざわざギターに書くことじゃないが気持ちはわかる! お前最高!
スタークローラー最前管理組合のみなさん。真ん中の人が1番年収低いです

待つこと約1時間。すっかり雨も上がって天気がカンカン照りになり真夏のジリジリとした暑さを感じ始めたところでスタークローラー登場! 誰かに後をつけられていないとおかしい感じのスーパー挙動不審な早足でステージに出てくるアロウちゃん! 「ハァッハァッ、ここまでくればもう追手もついて来れやしないだろう、んっところでお前ら誰だ!?」みたいな感じの落ち窪んだ眼をむき出しにして客全員を睨みつける!! その体型と佇まいはエヴァンゲリオン初号機が最初っから暴走モードで出てきた感じに酷似! 客を頭からバリバリ丸かじりしかねないどうかしている雰囲気を醸し出す! 異常なまでにスタイルの良い12頭身のナマハゲといった様相! 悪い子はいねが~! 良い子もまとめて全員殺す~(実際そんなことは言っていませんがそんな感じに見えるというだけの話ですすみません)! そして底抜けに明るいギターのヘンリー、今日は祭絆纏と麦わら帽子着用で日本の夏を満喫! ヌケの良いバカっぽさはロックの天才の証! 少し大人(といってもまだ21歳&23歳)のリズム隊、ティム・フランコ(ベース)とオースティン・スミス(ドラム)の的確なプレイがフロントのふたりと対称的に、スタークローラー狂乱博覧会の土台を淡々と支える。

フジロックのスタークローラー、ついに来たーッ!!!!! 端っこに写ってるアロウちゃんの歩幅のデカさですでに爆笑!!
アロウ・デ・ワイルド19歳!!!! モーニング娘。で言うと佐藤優樹と同い年! どちらもいい意味でイッちゃってます!!!
あ! この顔の角度! 漫☆画太郎のマンガで見たことある!
ベースのティム(21歳)。この地味で精勤な佇まい、世界中の予備校生の死んだ細胞が集まってできたと言っても過言ではない。こういう奴が話すと多分1番ヤバい
ドラムのオースティン(23歳)。演奏がタイトでなにげに上手いほか、バンドのインタビューでは1番歳上なこともあってよくしゃべる。チャド・マレーン似
アロウちゃんとヘンリーのダブルボーカルがスタークローラーの肝。しかしふたりともまだ10代ってホントどうかしてるし、ロックの未来も明るい

シンバルバシャリまくりのオースティンの派手なドラムに、見た目も演奏もスーパー予備校生風で地味ながら死ぬほどグルーヴィーなティムのベースが乗っかり、ヘンリーのロックンロールマナーに則った決め打ちギターが狂乱をひっかき回し、何かの発作が急に起こっているかのように目を白黒させてそびえ立つアロウちゃんのイカレポンチアイドルな様が加わると、スタークローラーを新しい時代のロックスターへと押し上げる。

アロウちゃんは曲中急に消えたかと思うと、ステージ上でブリッジ! 身長が巨大だからブリッジも巨大! 毎回定番のアクションだが、そのデカさだけで有難味がある。ズボンを履いていても腰骨が浮き上がって見える痩せぎすボディがカリスマにはプラスに働き、歪ささえ神々しい。さて、細長い体躯をギクシャク折り曲げる様子が、何かに似ていることに気づかないだろうか。そう、学習机の傍らにあるアームライトだ。アームライトは折り曲げ方によってなんかすごくカッコよく見えるときがある(すいませんちょっと何言ってるかわからないかと思いますが自分でも何言ってるかよくわかってないので大丈夫です)。意思を持ちオーディエンスに襲いかかる人食い折りたたみアームライト。キャッチコピーとしては圧倒的に不完全だが、スタークローラーを好きな人になら同意を得られるものと確信する。照明器具メーカーはアロウ・デ・ワイルドをCMに起用するべきだ。

フリーキーな美しさを湛えるくっきり浮かび上がったアロウちゃんの腰骨は芸術品
やれッ! やれッ! もっとやれッ! ぶち殺せ~ッ!(正しい応援)
モニターアンプから生まれたバスケットケース・兄みたいになってるアロウちゃん

ハードロックマターの『LET HER BE』や、客へマイクを向けて合唱をうながすポップナンバー『I LOVE L.A』など、硬軟織り交ぜたセットリストにニコニコ顔でヘッドバンギング(俺が)! 終盤には、アルバム『スタークローラー』のトップを飾る『TRAIN』に乗せて、口に血を含みにこやかに吐血! 口角から垂れた血反吐を己の顔面に塗りたくり、額にガッツリ十字を描く。そして客席に向かって血反吐を吐きかける!!! うっわ~~~!!! あの血反吐顔にペッ! とかされてえ~~~!!! と、思ったものの、やはりフジロックの2番めに大きなホワイトステージ(1万5,000人規模)では客まで届かず、客席前の撮影スペースへ落下。あ~、俺がカメラマンだったら血反吐顔面キャッチできたのに! ラストの『CHICKEN WOMAN』では、曲の終盤、ブレイクからのドラム連打に合わせて客席のほうへすっ飛んでいく! 客席フェンスに磔刑されるキリストの如く崩れ落ちたり、目をつけた客の頭部を鷲掴みにしたり、終いにはギャーと叫んだきりどっかへいなくなってしまうアロウちゃん! カワイイ(カワイイの基準がおかしいですがそこは見逃してください)! その後ヘンリーもギターを抱えたまま客の上をサーフ。戻ってくるや客の男女(初来日公演全通して空港入り待ちとかまでしてた猛烈に熱心なスタークローラーファン2名)をステージに上げてギターを渡す! そのままふたりと一緒にラインダンスして煽るだけ煽ってサックリ帰るヘンリー。ギターウルフのステージと違ってギターを客に預けっぱなしのまま、なんの収集もつけずにカオスと化してライブは終了。「突き抜けてバカなものを観た」という感動に打ち震えた。古びて期限切れになったと思われていたロックという魔法が、10代の若者たちの手によって再び輝き始める瞬間を見た。時間にして40分、持ち曲の9割を演奏してスカッと終了。

スタークローラーがあまりにカッコよすぎたのでライブ終了後初対面の男性客とハグ! もう今日なら俺アナル処女を失ってもいい! なんか得体の知れない勢いついとるんじゃい!

コラム:前回の来日公演を観た掟ポルシェがフジロックで気になったこと

前回来日時、ライブが終わったあとひとりでフロアに出てきてファンひとりひとりに撮影やサインに応じていたヘンリーは、底抜けに明るくてすごくいい奴。だがそのとき泊まってる渋谷のホテルのガウンを服代わりにしていたのでどこに泊まってるかバレバレでなんていうかもう最高。

またも前回の来日話で恐縮だが、俺がTwitterでつぶやいたことがきっかけと思われる「ある深刻な変化」があり、俺は全世界のスタークローラーファンに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。初来日公演でも客席前方に陣取り、アロウちゃんの顔芸が事細かに見える位置をキープしていたところ、肉眼でないとわからないあるものの存在を目撃ドキュン。「ち、乳首がビンビンに立っている!!」……そう、アロウちゃんは基本ノーブラだったのである。アメリカ人、乳首透けるのとか気にしないんだな、と。

その模様を俺がTwitterに「最前にいたので乳首透けてるのが見えたが、この場合の乳首はウェンディ・O・ウィリアムスのそれと同様殺気を放ち、故に神々しくすらある。涙が出るほど感動」と素直に書いたところ、次のツアーの動画では「あ、全公演ブラジャーしてる……」。スタッフの誰かが伝えたのだろう。アロウちゃんも実は指摘されたらされたでやはり恥ずかしかったのかも、と……。アロウちゃんにもファンにもなんだか悪いことをしたような気持ちに。あの、すんませんっした!

そして今回のフジロック、アロウちゃん……出てきた瞬間からずっとノーブラじゃねえか!!! いくら19歳とはいえ、ロックスターは自分の乳首透けんのとか気にしないものってことか! じゃあハッキリ言う! アロウ・デ・ワイルドの乳首透けはステージングの要! 異論は認めます!

撮影スタッフに許可された撮影タイムは開始から3曲目までだったのでここには写ってないが、このあとアロウちゃんは血反吐を吐き自分の顔に塗りたくり、たまたま飛んできたトンボを手のひらに乗せようとしてほのぼのしたり、客席とステージの間をギャーギャー言って転げ回ったりしてどっかいっていなくなったり、ヘンリーは客の男女ステージに引っ張り上げてギター弾かせて自分だけ先帰っちゃったり、もうたまんなかったです! 誰かまたすぐ日本呼んで!

掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。