掟ポルシェの初めてでも楽しめるフジロックガイド!〜スタークローラー初出演完全レポート〜
掟ポルシェの初めてでも楽しめるフジロックガイド!
ロックフェス! それはロックの祭典(当たり前のことを声高に)! でも俺、ロックよりゴアグラインドとかポルノグラインドとかムード歌謡とかの方が好きだし、ロックフェスってカーカスもミートシッツも矢吹健も出ないっていうじゃないですか(最後は故人なので霊体としてしか出演無理)。ダメだよ~そんなんマジ行く理由ねーし。第一、真夏のクソ暑い盛りに炎天下で天候に輪をかけて暑苦しいロック聴くのって普通に考えて地獄じゃない? ヤだよ~ロックフェス~。絶対行かないもん、チケ代アホみたいに高いし。興味ないものいっぱい出てくるし、俺には一生無縁! ロックフェスなんか行かず、クーラーキンキンに効かせた部屋でパンイチでパピコ食べながら、今夏も小学生アイドルの曲とか窓ガラスにヒビ入るぐらい大音量で聴き倒すよ! ウホッ、文化レベル高すぎ俺!
……と、思っていました。
ですが……その……あのですね、
「ロック、好きになっちゃったんです!(素早く手のひら返し)」
そう! ロックの未来を過積載するクソファッキン凶悪なワーストクレイジーロックバンド、スタークローラーが!!!! な、なんと日本ロックフェスの最高峰『FUJI ROCK FESTIVAL 2018』(以下、フジロック)に出演するっていうじゃあああないのおおお!!!!!! 文句言ってすみませんでした! 地面に首までめり込む勢いで土下座! ロックフェスだいすっき! 2018年3月の初来日公演に行って、そのあまりに狂ったパフォーマンスに死ぬほど感動したスタークローラーを観られるのなら、50年守り抜いてきたロックフェス童貞を捨てます! 初体験リッジモント・ハイ!
でも、ロックフェスって、自分の観たいバンドの出番以外何をしてればいいかわかんねえしなぁ……と、この期に及んでまだブツクサ・バーゲルトしていたところ、『耳マン』の担当編集ピアノさんから、「フジロックのレポートやりませんか?」という嬉しいお話が! でも、あの、俺スタークローラー以外ほぼステージ観ないかもしれないですけど、それはさすがにマズいですよね? と正直にもほどがあるリアクションを返すと、「フジロックって、バンドを観に行くだけじゃなくても楽しめるんですよ。食事も美味しいお店が色々出てますし、家族連れでも楽しめるアトラクションがそこら中にあって、お目当てのバンドが出ていない間も飽きさせない工夫が凝らされているので、そういうところも含めてレポートしていただければ多分大丈夫です」ですと! そ、その手があったか!
ロックフェスには行かないという人たちの多くが、「自分の観たいバンドの出番以外何してればいいかわからない」という不安を抱いていると思います。かくいう俺がそれだったわけですが、ロックフェスの「フェス」の部分の充実ぶりをレポートすれば、これまでロックフェスに興味が持てなかった人たちにも、その重い腰を上げさせることができるのではないかと。バンドのライブを観なくても楽しめるフジロックガイド! そんなのでも企画を通してくれるフジロックフェスティバル様、太っ腹! よっしゃ、頼まれたわけでもないのに使命感が出てきた! やったるで~!
山の天気を一切考慮していない軽装で現着
そして迎えた7月28日。天気予報はまさかの「台風直撃の恐れ」。な、なんだそれ……。東京から北関東抜けて苗場上空をモロに通過するという、本来ありえないひん曲がり方をした台風12号の予想進路が発表されたとき、マジ呪われてんな俺と思いました。これは終わったなと。しかし台風直撃の予報ぐらいでフジロック行きを断念することはできない! なぜならスタークローラーのフジロック初登場の瞬間を、この目に焼き付けなきゃいけないんで!!! 待ってろ、アロウちゃん(※)!!!!
(※スタークローラーのボーカル、アロウ・デ・ワイルド)
で、最寄り駅である越後湯沢に到着。…………あれ? 台風、来てなくない? それどころかこの酷暑に丁度いい程度の小雨降らせてくれて、暑くもなく寒くもなく気温的にも気候的にも過ごしやすくて絶好のフェス日和なんじゃないこれ!? 台風の進路がどうやらちょっと逸れたようで、逆にフジロックの神様から歓待を受けたようないい感じの気候に。山の天気は変わりやすいとはいえ、まずはひと安心。よかった……。
朝早くから送迎バスの列に並び、越後湯沢駅から揺られること40分、ついにフジロック来てぁああ! サックリ受付を済ませて正規ルートから小学生用サンバイザー+明らかにその日出演していないカーカス『シンフォニーズ・オブ・シックネス』ジャケTシャツ着用のあやしい大人が侵入。変わりやすい山の天気を一切考慮していないスーパー軽装に、たまたま会った知り合いにギョッとされたりしながらフジロック会場内をひととおり散策。せめてビーサンを履いてこなかった俺なりの最低限配慮にみんな逆に感心してほしいものだ。たまに小雨混じりだったが、サンバイザー装着により顔が濡れず、顔が濡れないと人間意外と雨をしのいでる気になるので、野外フェスにはサンバイザー! これオススメ! たまにババァが買い物時かぶってるダフト・パンクみたいなやつでも可!
ガンノリモッシュをするもよし、木陰で寝転がって聴くもよし、自由に楽しめる!
ロックフェスにはさまざまな客層がいる。そのなかでも特に名物なのがエッチな女(誤解を招く表現)。ランジェリーを服だと言い張っているかのようなナニそれファッションの女性もごくたまにではあるが存在を確認(大体は外国人の彼氏と一緒にいる)。ロックフェスを楽しむのに頭のネジなど不要、開放感の過剰謳歌に唸る。登山に来ました的なフェス慣れファッションの者もそれなりにいて小癪だが、バンドTシャツと短パンだけの人も多数で安心。多分みなさんカバンのなかに防寒着と合羽ぐらいは仕込んでるのだと思いますが(俺のカバンの中身は大量のうまい棒のみ)。
フジロックには大小さまざまのステージがあり、ヘッドライナーが出演するグリーンステージではなんと4万人のキャパ。前のほうでガンノリモッシュする若い子たちもいれば、椅子を持ち込んで長時間疲れないように観ているフェス慣れ層もいる。なかには木陰で寝っ転がって漏れてくる音だけ聴いて、眠くなったらそのまま寝るやつもいる。どんな見方をしても許されるのはなかなか良い。当然キャパに見合った音量で鳴っているため、大きなステージほど隣のステージまで距離がある。山道をそれなりの距離歩くことになるが、フェス特有のハレの日感からか高揚しており、移動もそんなに苦痛ではない。酒飲みながらダラダラ移動しても可、疲れたら空いてるところ見つけて寝ても可。ここではすべてが自由だ。
俺にはさらに心配事がある。それは極端にトイレが近いこと。フジロックでもトイレの数が足りなかったらどうしよう、野糞は野糞でロック的な行為だからOK? とか余計なことを考えていたがそこは杞憂。とにかくいたるところにトイレがあり、その数もおびただしい量に上る。トイレで長蛇の列、というシーンはほとんど見かけず、壁の如く何10機も用意されたウォール・オブ・トイレに人々が次々吸い込まれていくのを見て胸を撫で下ろした。頻尿&脱糞番長を自認する俺に立ちション&こっそり野糞の隙を与えないフジロック、さすがと言えるだろう。そして手を洗う水道の水が山間部につき冷たくて気持ちよく、手ですくって飲んでもとにかく美味い。さすがは水どころ新潟県、こんなところの手洗いの水すら美味いなぁ、と感心していたところ、手洗い場の裏側に「※この水は飲めません」との表記を発見……うむ、時すでに遅し。でも、あの、本当にうまかったんだよなぁ……。
その魅力を存分に伝えるため隈なくフジロックをまわろうと1度会場外に出て、1番端のピラミッドガーデンから再入場。朝早くて、まだステージが始まっていないが、フェスの雰囲気を楽しむにはこのぐらい緩やかな空間がもってこいかもしれない。遊具として吊られた複数のハンモックに向かって突撃、小学生に混じって大の大人が実年齢を忘れて布製遊具に飛び乗りキャッキャする。「人は、なんのために生きるのだろう?」……そんなことはここでは微塵も脳をかすめない。うっひょ~!!!! た~のちぃ~い!!!!! やはり人生に迷いそうになったときはハンモックに限るよね! もうこのまま1日終わっていいんじゃないかな? ダメ? 脳内麻薬が出すぎておかしくなってきたのでなんとか人間をダメにする装置ことハンモックから抜け出ると、一難去ってまた一難、目の前に子供たちが群れ遊ぶ巨大滑り台が! うおおおおお!!! 俺は乗るぞ、あれに!!!! と思ったが、こちらはさすがに大人の姿はなく、担当編集ピアノに「掟さん、そこ、子どもしか乗っちゃダメなやつッス!」と言われ、自分が陰部に毛が生えてから幾星霜経た中年男性だということに気づきハッ! となる。フジロックは大人を少年に変えてしまう魔の祭典。これがフジロックマジックというやつか(多分違う)。
オアシスエリアで食べたフード2種はどちらも猛烈に旨い!
テントサイトを抜けて行く間、耳をそばだててセックスするためにロックフェスに来るけしからんOLがいないか個人的にチェック(もしいたら「すいません! 俺も混ぜて!」と懇願予定)。が、さすがに午前中ということもあってかあえぎ声のあの字も聞こえず落胆……。今回のフジロック探訪の裏テーマ(数年前フジロック3日間で5人とテントセックスに持ち込んだ性豪逆ナンOLは実在するのか?)はもろくも崩れ去ったのだった……。
……よし、性欲が満たされないなら食欲に転化じゃい!
ロックフェスといえば美味しいフェス飯が大きな楽しみのひとつ。フジロックに出店する飲食店は年々そのレベルを上げていて、どこの店舗もかなりの高水準うま味成分てんこ盛りだとか。というわけで、今回昼飯に選んだのがふたつ(全体に小ぶりだからふたつぐらい食べて丁度いい)。『Bassic』の辛麻婆飯(700円)と『渡なべ』の海老の油そば(全部のせ:1,000円)。ハッキリ書いてしまうと、早いとこ飯食ってスタークローラー最前確保したいから、その日たまたま行列がなくすぐ買えるものにしただけ。するとこれが、どちらも猛烈に当たり! まずBassicの辛麻婆飯は、辛いもの好きなら全員満足するであろう唐辛子と山椒の辛さシビレ直撃飯。「あとからじんわり感じられる辛さが~」とかいったエセ辛眠たいメシ食うのが何より嫌いなんですが、これはキッチリ辛くて頭の芯から発汗確実保証。それでいて辛さが旨さに直結しており、ばあちゃんが作ったみたいなぼんやりした味のカレーを長蛇の列並んでまで食ってる人たちに申し訳ないほどバカ美味し。渡なべの海老の油そばは、特製海老醤油だれをベースにした油そばですが、濃厚な海老の風味がエッセンスとしてベースの動物系脂を引き立てていて絶妙。そして惜しみなくぶっ込まれた短冊切りチャーシューや半熟煮卵、刻みネギと混ぜてかっこむと地味にいつまでも食べていられそうで満足度が高い。ビール一緒に買ってつまみにちょっとずつ食べるのにも最適なフェス飯としてこちらも最強なやつ。これら2店舗、たまたまとはいえすぐ買えたのが不思議なほどの完成度でした。来年フジロック来る方々、もしこちらの2店見かけたら迷わずオススメです!