【お悔やみ】安らかに……2018年、名優たちの訃報
さようなら、名優たち
2018年は偉大な俳優の訃報が相次いだ1年だった。哀悼を込めて、永い眠りについた名優たちの足跡を振り返る。
大杉漣さん
強面のヤクザから気弱な中年男性まであらゆる役柄をこなし、「300の顔を持つ男」と称された大杉漣さんが、2月21日に急性心不全のため亡くなった。66歳だった。
ドラマ『バイプレイヤーズ 〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』の撮影後、体調を崩した大杉さん。仲の良い共演者たちに付き添われて救急病院に運ばれたが、急激に容態が悪化して還らぬ人となった。
明るくひょうきんな人柄で知られており、共演者にも視聴者にも愛された大杉さん。大のサッカー好きで、とりわけ出身地の徳島ヴォルティスの熱狂的なファンだった。また、北野武監督の『ソナチネ』で一躍脚光を浴びたことから、その後は同監督の映画の常連として重要な役どころで出演を重ねた。大杉さんの死に激しく動揺したビートたけしは、MCを務めるニュース番組で涙を流しながら早すぎる死を悼んだ。
朝丘雪路さん
お嬢様育ちの天然なキャラクターで、俳優・歌手・舞踏家・タレントとしてマルチに活躍した朝丘雪路さんが、4月27日に亡くなった。82歳だった。
日本画家の伊東深水を父に持ち、日本舞踏の英才教育を施された朝丘さんは、宝塚歌劇団での活動を経て、60年代以降は芸能界で大人気を博した。人気テレビ番組『11PM』のアシスタントのほか、映画や舞台に幅広く出演。歌手としては「雨がやんだら」をはじめヒット曲を多数持ち、マルチタレントの先駆けとして活躍した。
津川雅彦さん
浅丘さんの夫で俳優の津川雅彦さんも、朝丘さんが亡くなった3ヶ月後の8月4日に心不全でこの世を去った。78歳だった。
「日本映画の父」と呼ばれた映画監督・プロデューサーの牧野省三を祖父に、戦前の大スターである四代目・澤村國太郎を父に、そして2011年に死去した俳優の長門裕之を兄に持つという、日本でも有数の芸能一家に育った津川さん。映画では伊丹十三監督作品の常連俳優であり、時代劇・現代劇を問わず圧倒的な存在感を発揮。NHK大河ドラマの出演は実に8本を数えた。
叔父で映画監督のマキノ雅弘を尊敬し、自身もマキノ雅彦名義で映画『寝ずの番』などのメガホンをとった。11月21日には、最愛の妻である浅丘さんと合同の「お別れの会」が青山葬儀場で執り行われた。
菅井きんさん
1950年代のデビューから2010年の大河ドラマ『龍馬伝』まで、実に半世紀以上も俳優として活躍した菅井きんさんが、8月10日に心不全で亡くなった。92歳だった。
黒澤明や今村昌平といった巨匠の映画の常連俳優だった菅井さん。ドラマ『必殺シリーズ』では主役の中村主水をいびる姑・中村せん役を好演した。また『太陽にほえろ!』や『家なき子』といった名作ドラマでも視聴者の印象に残る芝居を披露し、まさに日本の映画・ドラマに欠かせない名脇役だった。
樹木希林さん
数々の映画やドラマ、CMで唯一無二の存在感を発揮してきた樹木希林さんが、9月15日に亡くなった。75歳だった。
5年前に全身ががんに冒されていることを公表していた樹木さん。しかしその後も映画への出演を続け、是枝裕和監督の『万引き家族』は今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲得。9月30日に行われた告別式で是枝監督が読み上げた「私と出会ってくれてありがとうございました」という長大な弔辞は、大きな感動を呼んだ。
破天荒な生活を送るロックミュージシャンの内田裕也を夫に持ち、樹木さん自身も常識にとらわれない数々の名言を残してきた。樹木さんが遺した含蓄あふれる言葉たちは様々なメディアで共有され、今なお多くの人々が影響を受け続けている。
江波杏子さん
初主演映画『女賭博師』シリーズで演じた「昇り竜のお銀」で好評を博し、晩年も精力的な俳優活動を続けていた江波杏子さんが、10月27日に肺気腫の急性憎悪のために亡くなった。76歳だった。
『女賭博師』シリーズで大映の看板スターとなり、大映倒産後もテレビに映画にと引く手あまただった江波さん。昭和期の美貌は凄まじく、抜群のプロポーションを活かしたグラビア撮影も数多くこなした。亡くなる直前まで撮影・収録に出向いており、遺作となったドラマ『小吉の女房』は1月から放送予定。女優という職業にとって恋愛は“栄養”だと語り、生涯独身を貫いた。
赤木春恵さん
『3年B組金八先生』の君塚校長役や、『渡る世間は鬼ばかり』の姑・小島キミ役で知られた赤木春恵さんが、11月29日に心不全で亡くなった。94歳だった。
戦時中は慰問劇団で満州各地を巡業し、日本の敗戦後は現地でさまざまな困難を体験したという赤城さん。帰国後は脇役として数多く作品に出演し、70年代以降は主にテレビドラマで活躍した。2013年には、88歳にして『ペコロスの母に会いに行く』で映画初主演。菅井きんさんの記録を更新して“世界最高齢での映画初主演女優”としてギネス世界記録に認定された。
故人のご冥福を心よりお祈りいたします。