TAKEMURA(SNAIL RAMP)『43歳のバンドマンチャンプ』【引退試合を振り返って(part.4)〜キックボクシング界について思うこと〜】

連載・コラム

[2016/2/2 16:04]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのメンバーでありながら、キックボクシングの日本チャンピオンに上り詰めたTAKEMURAの自伝的連載!


試合前日なのに睡眠もとれない
キックボクシング界の「負」の部分
前回は減量の話にちょっと逸れてしまったので、今回こそは引退試合にもつながる話を。これを書くのはちと問題もあるが、キックボクシング界の「負」の部分にも触れようと思う。

引退試合前夜はとてもイライラしていた。

理由はふたつ。試合チケットの直前キャンセルがあったり、配席のゴタゴタ。マイナースポーツであるキックボクシングは「選手自身がチケットを販売する」というシステムが主流になっており、それは「所属ジムから選手がチケット購入→それをお客さんに販売」という流れ。ゆえに選手がジムからチケットを購入したあとにお客さんにキャンセルされてしまうと、そのチケットをジムに返品することもできず、その金額は選手の自腹負担になってしまう。

選手は結構ギリギリの懐事情でチケットをやりくりしているために、それが2~3枚発生しただけでも結構な痛手になるのだが、その事態が今回起きてしまった。しかも選手事情を知っている人がそれをしてしまったので、「え……」となっていた。

同時に「誰にどこに座って貰うか」の配席も、それぞれのグループの人間関係も考えつつ配席せねばならず、減量で頭が回らない中に配席するので、ミスも多くなかなか上手くいかない。

そして明日が試合&引退式だというのに、前日深夜になっても引退式の詳細を詰めきれない運営。選手でありながら運営にも片足突っ込んでいた俺は、「明日試合だから寝たいのに……」と思いながら深夜2時過ぎまでLINEで打ち合わせ。

LINEでグループを作りそこで話し合っているから俺がいるのを知ってるだろうに、「◯◯はどうします?」「あー、もう◯◯でいいでしょ」とやっつけ感全開の人まで出現。計量前日という身体的に一番キツく、2〜3口の水すら飲めないイライラしてるときにそんなのが重なったから俺の大人気なさが全開。Twitterに「あんなの試合前日の選手がやる事じゃねーだろ。マネージメント料とってる奴がちゃんとマネージメントをやれよ!」とブチまける始末。繰り返すが減量で怒りっぽくなっていなければ、普段はあんなことくらいでイライラしたりはしない。

その証拠に、計量が終わり食事をとって人心地ついたあとには、そのツイートは削除しておいた。

運営側に回ったときに
悪習をうまく変えていけばいい
ちなみにそういった組織批判的なことをネットにあげたりした場合、その選手は厳しく叱責され干されたりするので、あのツイートを見た他選手からは「竹村さん、あれは削除して正解でしたよ!ホッとしました」と言われた。

ツイートしたときには「モメたきゃモメろ。おかしいのは業界の常識だからな! こうなったら全部ブチまけてやる」的な気持ちだったが、今考えればこれは俺が大人気ない。

業界の悪習に憤り、そのときの感情で毒づいても後世の競技者のためにはならない。明日は現役最後の試合で、引退式まで催してもらえるのだ。そこはきっちりこなして、引退後運営に回ったときに悪習をうまく変えていけばいい。

平常時であれば普通にそう考えられるのだが、減量追い込み時、そして試合前期間はピリピリもしていて、攻撃的な考え、行動をとってしまうこともある。そして深夜4時、すべてを終えてようやく床についた。

明日は8時起き、睡眠時間は4時間だ。(続く)

<次回更新は2016年2月16日(火)予定!>

【著者紹介】

TAKEMURA(竹村哲)
1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なう。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中だ。

[耳マン編集部]