TAKEMURA(SNAIL RAMP)『43歳のバンドマンチャンプ』【引退試合を振り返って(part.10)~ベイビーレイズJAPAN~】
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのメンバーでありながら、キックボクシングの日本チャンピオンに上り詰めたTAKEMURAの自伝的連載!
『ゲンのいいパープラチャットに祈りを込める』
試合まであと約2時間。ゆかりある方々が控え室に顔を出してくれる合間で、試合への準備を始めた。
試合用のキックトランクスを履き、パープラチャットを上腕に着ける。これはミサンガをもっと派手にしたようなもので、ひと言でいえば「お守り」だ。試合での無事、そして勝利を祈って着けるもの。
この日着けたそれは勝利したデビュー戦、チャンピオンになったタイトルマッチなどで着けていた「ゲンのいい」パープラチャット。数種持っている中でも、着けた回数は一番多いかもしれない。今日もコレが俺を守ってくれるはず。そう信じながらセコンド陣に腕に巻いてもらう。
ゆっくりとアップを始め、身体をほぐしてゆく。12月の気温は低いが、後楽園ホール内はトランクス1枚で闘う選手たちのために暖房が入っている。少しシャドーをしているだけでじんわりと汗がにじんでくる。
「もうそろそろアップも充分かな」と思い始めたとき、控え室のドアが開き、女の子たちがみえた。ベイビーレイズJAPANのメンバーたちだった。
「おー、間に合ったね。遠い所からホントありがとう」。俺は彼女たちを中に招き入れる。彼女たちはその日、茨城でのライブイベントをこなし、その足で文字どおり駆けつけてくれたのだった。
俺の試合は一番最後だが、それまでにある数々の試合でKOが連発して進行が早ければ、彼女たちの到着を待たずに俺の試合は始まる。そうすると予定していた「試合入場時、メンバーの誰かにチャンピオンベルトを掲げてもらって一緒にリングイン」や「試合後にベイビーレイズJAPANと俺でのフォトセッション」などはお流れとなるところだった。
しかし間に合ったとは言え、時間にそれほど猶予があるわけではない。彼女たちと談笑しつつも身体は動かし続け、この後始まる試合に備えた。
『かつてないリラックスムード』
これまでは試合30分前の控え室の雰囲気といったらすでにピリピリしたムードに包まれ、ジムメイトやセコンド陣も一様に押し黙るような時間が訪れていたものだったが、この日は和やかだったしそれが心地よかった。
これもベイビーレイズJAPAN、彼女たちの人柄であり、最初に知り合ったのは仕事だったもののすぐにそこを超えて応援したくなったほどの「いい奴ら」具合、それがあの控え室で自然に醸し出されたんだと思う。その証拠に控えで一緒に撮った写真の俺は、試合直前にもかかわらず何ともリラックスしている。
そろそろ自分のひとつ前の試合が始まる。
「じゃあ、行こうか」とジム会長に促され、セコンド、ジムメイトたち、そしてベイビーレイズJAPANのメンバーたちとともに入場口に向かった。
<次回更新は5月17日(火)予定!>