岡村靖幸『幸福』発売記念11人連続レビュー企画〜澤部渡(スカート)編〜

特集・インタビュー

[2016/2/4 19:00]

岡村靖幸『幸福』をベイベな11名が連続レビュー!
岡村靖幸が1月27日にリリースしたオリジナルアルバム『幸福』の発売を記念して、耳マンでは岡村ちゃんを大特集! “11年ぶり”にかけて、岡村ちゃんをリスペクトし、愛してやまない“ベイベ”による新作レビューを11夜連続でお送りします。4人目は不健康ポップバンド・スカートを主宰する、シンガーソングライターの澤部渡氏です。


澤部渡(スカート)
『アルバムというフォーマットの幸福』


岡村さんのアルバムは1曲目で派手にガツン!とやられることが多かったので『できるだけ純情でいたい』で落ち着いたビートが聴こえてきたときは少し驚きました。しかしこの抑制の利いた音の向こうから沸き立つエロさ、そしてその抑制を踏み外してしまうようなエンディングは岡村靖幸以外の何者でもなく、とてもスリリング。もうこれだけで感激です。

新曲に挟まれて既発曲だった『ラブメッセージ』の素晴らしさも際立っています。ポップスは通常A→B→サビみたいなフォーマットがあるのですが、この曲はサビのリフレイン以外はほぼ違うメロディで構成されていると今更気づきました。キャリアでも屈指のポップさでありながら常に挑戦を続ける姿勢にもうシビれまくっております。

『揺れるお年頃』はリズムボックスとシンセベース(それも『レゲ・ウーマン』級の最高の音色!!)、アコースティックギターを中心に聴かせるシンプルな楽曲ながらラフには聴こえず、ちょっとした音の抜き差しで陰影をつけています。このサウンドは新境地と言っていいのではないでしょうか。

過去作で聴けたクレイジーな音作り(例を挙げるなら『ヘアー』のシンセソロ)もときどき顔を出してくれてうれしい気持ちになります。アルバム全体でみたときに既発曲が新曲たちと並列になることによってより輝いて聴こえたり、流れで聴くとまた違った表情がみえてきて、アルバムというフォーマットのおもしろさを再確認しました。


【著者紹介】

澤部渡(スカート)
1987年生まれ。東京都板橋区出身のシンガーソングライター。どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド"スカート"を主宰。音楽と漫画をこよなく愛する好男子。スカートでの活動のほかにもパーティバンドのトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴率いるゴロニャンずでもドラムを担当。金剛地武志率いるyes, mama ok?ではサポートベーシスト/ドラマーとして参加。ツボをつくソングライティングに定評があり、さまざまなアーティストに楽曲提供も行っている。スカートの最新作は『シリウス』(カクバリズム/2014年)。


【本企画に参加してくれた11名のベイベたち】
・榊ピアノ(耳マン研究所)【2/1 UP】
・成田大致(夏の魔物)【2/2 UP】
・天照大桃子(バンドじゃないもん!)【2/3 UP】
・澤部渡(スカート)【2/4 UP】
・本間悠子(HMV 立川)【2/5 UP】
・南Q太(漫画家)【2/6 UP】
・古森57YO優(リットーミュージック社長)【2/7 UP】
・オカモトレイジ(OKAMOTO'S)【2/8 UP】
・川本真琴【2/9 UP】
・福岡晃子(チャットモンチー)【2/10 UP】
・小出祐介(Base Ball Bear)【2/11 UP】

[耳マン編集部]