岡村靖幸『幸福』発売記念11人連続レビュー企画〜古森57YO優(リットーミュージック社長)編〜

特集・インタビュー

[2016/2/7 19:00]

岡村靖幸『幸福』をベイベな11名が連続レビュー!
岡村靖幸が1月27日にリリースしたオリジナルアルバム『幸福』の発売を記念して、耳マンでは岡村ちゃんを大特集! “11年ぶり”にかけて、岡村ちゃんをリスペクトし、愛してやまない“ベイベ”による新作レビューを11夜連続でお送りします。7人目はリットーミュージック社長の古森57YO優氏です。


古森57YO優(リットーミュージック社長)
『いちばんだいすき!』


ギター誌なので表紙はできなかったが、デビュー当初からギター・マガジン編集部で靖幸天才説は賛成多数で可決されていた。でも、今にして思えば、30年でアルバム7枚。初期4作こそ、苦もなく Young & Gifted な才を苦もなしにバラまいていたかに見えた彼だが、実は人並み以上に骨身を削りながら作品を織り込む夕鶴タイプの表現者だったのかもしれない。

ピチカート・ファイヴの小西さんのところには『ベリッシマ!』から『女性上位時代』の頃まで新作が出るたび話を聞きに行っていた。ある時、僕が『ベリッシマ!』は歴史に残る名盤なのに、なぜあの路線を続けなかったのかと尋ねると、彼は「スティーリー・ダンばかりやっていられない」と答えた。スティーリー・ダンとはそのものズバリではなく、要するに "一分の隙もない重厚濃密なアルバム作り" の比喩と僕は受け止めた。''遊び'' が必要、と。

その伝で言うと、岡村はずっとスティーリー・ダンを作り続けているようにも思える。今度の新作もそう。だって早い話、やってることは昔とそんなに変わんない。サウンドの表層は時代に照らして変わり続けるとしても。

それにしても、なぜこの期に及んで岡村の新作はこんなにも「待たれる」のだろう。彼自身の歌に、ティーンエイジャーのあなたがなんで35の中年に恋してる?なんてのがあったが、まるでそのままだ。イイ若いモンたちが50男の再起動にイロめくこの状況、会社じゃもちきりだよその事で。

言葉や生き方にリアリティがあれば年の差なんて関係ないし、ちゃんと "この時代のポップ" を作れるって、なんか勝手に勇気もらってますよ。彼の場合は、終始アドレッセンスからつかず離れずの足場で、大のオトナのリアルとは一線を画してるから、世界観の全的許容まではできっこないけど、それも昔ながらのこと。
今まででいちばんいいよ、コレ。聴けば聴くほどハマる想いを抑えきれません。


【著者紹介】

古森57YO優(リットーミュージック社長)
1986年〜98年まで『ギター・マガジン編集長』。その他、『Songwriter Magazine』『Sift』『Indies magazine』『LOST and FOUND』といった数々の早過ぎた?雑誌のプロデュースを手がけ、2001年にリットーミュージック社長就任。デビュー時から岡村靖幸に注目し続けるベイベのひとりで、特に好きな楽曲は『Dog Days』。


【本企画に参加してくれた11名のベイベたち】
・榊ピアノ(耳マン研究所)【2/1 UP】
・成田大致(夏の魔物)【2/2 UP】
・天照大桃子(バンドじゃないもん!)【2/3 UP】
・澤部渡(スカート)【2/4 UP】
・本間悠子(HMV 立川)【2/5 UP】
・南Q太(漫画家)【2/6 UP】
・古森57YO優(リットーミュージック社長)【2/7 UP】
・オカモトレイジ(OKAMOTO'S)【2/8 UP】
・川本真琴【2/9 UP】
・福岡晃子(チャットモンチー)【2/10 UP】
・小出祐介(Base Ball Bear)【2/11 UP】

[耳マン編集部]